新型コロナウイルスとひとり親家庭への影響~私たちの実施したアンケート結果より…その①

調査概要:ひとり親の新型コロナウイルスによる暮らしの影響調査
  期間:2020年5月4日(月)~2020年5月9日(土)
 回答者:全国のシングルマザー及びシングルファザー、ひとり親に限る
回答方式:無記名・選択方式・一部自由記述方式
   回答数:241(31都道府県の各地域より)


たった6日間で、メンバーそれぞれのSNSなどで呼びかけて実施しました。多方面の方に拡散への協力などをいただきましたことを感謝申し上げます。

以下、アンケート結果のまとめです。その①とその②に分けて報告したいと思います。

■回答者について

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回答者はほぼ女性であったことがわかります。男性の方からも数名ご回答をいただけました。ひとり親で奮闘されている男性の方もおられますので、その方々のニーズも拾い集めていきたいと考えています。回答者の方のなかには「現在、別居中」というかたも含まれていますが、離婚協議の調停あるいは裁判を抱えておられる方もいらっしゃいます。新型コロナウイルスの影響により、裁判所の活動にも制限がかかっているため、進むはずだった協議が進まないことへの不安を述べられている方もおられました。

回答者の方の年齢については下記のとおりです。

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約5割が40代。次に約3割が30代という結果です。まさに、子育て真っ最中のみなさまにご回答をいただくことができ、特に、学校休校の影響が暮らしに直撃していることなど切実な声が結果としても現れることとなりました。

また、回答者の皆さんの「ひとり親(別居期間も含む)歴」ですが、最も多かったのが「0-3年未満」27.0%、「5-10年未満」26.1%、「3-5年未満」23.2%、「10-15年」18.3%、「15年以上」5.4%という結果でした。

■回答者の就労状況・収入の変化

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 子育て中のひとり親が安定的に就労する先を見つけることはなかなか難しいと言われています。回答者の現在の就労状況を見てみると、やはり「派遣社員・契約社員・パートタイム・アルバイト」など非正規の立場で働いておられる方が39.9%で最も多い結果でした。正社員(公務員以外)で就労されている方は33.2%、また、自営業と回答した方が14.5%おられました。求職中、あるいは仕事はしていないという回答もありました。

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以上を踏まえ、新型コロナウイルスの影響による収入変化について回答を求めたところ、

「収入が減少した」42.3%、「収入がなくなった」9.1%という結果であり、約5割の方の暮らしを直撃していることがわかります。「収入は変わらない」27.4%と回答された方もおられる一方、「まだわからないので不安」16.2%と回答されている方もいることから、アンケートの時点では収入が今後どうなるか見通しが持てていない方の存在が明らかになりました。

■子どもの「自粛」が収入にも影響している可能性

新型コロナウイルスの影響により、勤務先での仕事そのものが減ってしまった、仕事がなくなってしまったと回答する方もおられる一方、保育園の登園自粛、学校の休校、学童クラブの利用自粛などが保護者の就労と収入の変化にも関わっていることもわかりました。「利用自粛要請・臨時休校により仕事を休んだ」「在宅ワークになり子供の面倒を見ている」と何とか仕事をやりくりしている方もおられますが、「仕事を辞めざるを得なくなった」と回答した方もありました。

保育園や学童クラブは個々の状況に応じて利用することは可能とはいえ、「決して気軽に利用することはしないし、できない」と判断する方が多いのではないかと思います。

■収入減少。しかし、「国の休業補償は受けられない」との回答が約5割。

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国は新型コロナウイルスの影響による「休業補償」を打ち出していますが、この時点で「休業補償を受けられた」と回答した方は12.6%、「これから休業補償を受けられるかもしれない」と希望的観測で回答された方が7%です。「休業補償は受けられない」という回答が46.9%、また、「休業補償が受けられるかわからない」が30.1%です。回答者の就労状況が「非正規雇用者」であるということとも密接にかかわる結果だと受け止めていますが、収入の減少で暮らしが成り立たなくなる不安と向き合うひとり親世帯の状況が見えてきます。

■明日、明後日の支払いが困難に。とにかく「現金」が必要。

 以上のような結果を踏まえ、今、一番望んでいることを尋ねたところ、やはり「収入が減ったので、現金給付がほしい」とする回答が多くをしめましたが、同時に「こどもが安心して過ごせる場所を増やしてほしい」と続きました。子どもの安全、安心な居場所が確保されることで、保護者は仕事をすることができます。休業補償を受けられない状態にあり、「休業補償をしてほしい」と求める声もありましたが、「収入を得るための仕事を紹介してほしい」という声もあり、減ってしまった収入を挽回したいという切実な状況が浮き彫りにされました。

また、新型コロナウイルスの影響により相方の収入が減少したり、相方の勤務先が倒産した方もおられ、「養育費が減らされてしまった」ことによる収入減を回答した方もおられました。

収入には変化がなく、仕事を継続される方であっても「有給休暇の取得をしやすくしてほしい。」あるいは「有給休暇を増やしてほしい。」とする回答もありました。

■困った状況を誰にも相談していない。

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 こうした状況について、ひとり親のみなさんはどこかに相談をされているのでしょうか。

「相談していない」53.1%
「相談先がわからない」21.6%
「相談している」25.3%

私たちの調査では、7割を超える方が「相談していない」あるいは「相談先がわからない(から相談していない)」という結果となり、市役所や社会福祉協議会など、各地域にはいくつかの相談窓口があるものの、利用されていないという実態が明らかになりました。

そもそも、「相談をしていない」ということになれば、ひとり親のみなさんの実態を把握し、ニーズに寄り添った支援策を講じることができていない可能性があるとも言えます。「相談そして、支援へ」…行政機関が担うその役割をしっかり機能させていく必要を感じています。

また、お住まいの自治体で「新型コロナウイルスに伴うひとり親家庭への支援」の有無についてたずねてみたところ、約4割の方が「あるかもしれないけれどわからない」という回答でした。行政の取組みがあっても「わからない」という結果については、今後の情報伝達についてあり方を検討していく必要を物語っています。

■やはり、オンライン学習へのハードルが高く、不安を抱えている実態。

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ほとんどの人が携帯電話あるいはスマートフォンなどを持参する時代になっているとはいえ、しかし、各家庭にオンライン学習をするための環境が整備されていないのが実態です。ひとり親家庭の場合も、「オンライン学習環境がない」と回答された方が56.7%にのぼりました。これについても、今後、各家庭への支援が行われていく方向が示されているものの、まずは実態把握を進め、子どもたちの学びに格差が生じないように支援策を講じていく必要を受け止めています。

■その①のまとめ

すでに他団体においても「新型コロナウイルスとひとり親家庭への影響」について調査が行われ、国などへの提言活動が行われていますが、私たちもの調査結果でも、就労状況と収入状況など、実情を把握することができたと考えています。この結果を活かし、今後の活動に役立てていきたいと思います。その②では、寄せられた意見の中からいくつか紹介したいと思います。

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