詩の鑑賞;ヴェルレーヌ

このレポートは基本的にその時太陽が入っているサインをテーマにして書いている。
その太陽が、うっかりと昨日の夜に牡牛座に入ってしまった。が、牡羊座の詩人に関してまだ書き足りないので、今回は牡羊座について書かせてもらう。

そもそも、ホロスコープに牡羊座が関連する詩人は何故か多い。太陽星座牡羊座のみで挙げてみても世界規模で超有名なボードレール、小説家としても活躍している島崎藤村や佐藤春夫、恐らく日本では知名度が一番高い童謡詩人の金子みすゞなど。

その中で、今回はフランスの詩人、ポール・ヴェルレーヌを紹介したい。
牡羊座と牡牛座の両方から影響が強い(詳しくは本文参照)ので、季節の変わり目にはちょうどいいだろう。
何より、海外の詩人の中で、私が一番好きな詩人であるために書くことなら幾らでもある。
フランス作家になると急にマイナーになることはご容赦いただきたい。

出生時間は以下の通り
ポール・ヴェルレーヌ
1844/3/30  21:00    49n08  6e10   LMT

なお、引用は全て新潮文庫『ヴェルレーヌ詩集』の堀口大學翻訳を用いる。この堀口氏も偉大なる人物だが、ここでは紹介を省略させてもらう。

巷に雨の降るごとく
わが心にも涙ふる
かくも心ににじみ入る
この悲しみは何やらん?
        ヴェルレーヌ『無言の恋歌   その三』

ヴェルレーヌは元は市役所に勤めていた普通のサラリーマンだったが、『土星の子の歌』でデビューした。
まず、この詩集のタイトルからしてセンスがある。占星術で極めて重要な土星であり、19世紀頃の古典占星術では制限や不幸を意味するとされていた。
それをもとにして題を付けたのだろうが、実際にヴェルレーヌの蠍サインのアセンダントと水瓶座の土星がけっこうきっちりスクエアしている。これを知っていたわけではないだろうが、何か運命めいたものを感じてしまう。
蛇足だが、ヴェルレーヌは見栄えのしない自分の容姿を大層気にしていた(「控えめに言ってオランウータンに似ている」らしい)。こういう人はアセンダントに何らかの星がスクエアしている人に多い気がしている。ほかに例を挙げるとアンデルセン(アセンダントと金星がきっちりスクエア)とか。

さて、このヴェルレーヌの代表的な詩は、叙情詩である。読むだけで詩人の訳のない憂愁や悲しみがこちらに伝わってくる。
ヴェルレーヌは太陽、水星、天王星が牡羊座でコンジャンクションしており、少し離れた場所にいる冥王星を合わせれば4星牡羊座でかなり強い。
「自らの感情や思いの丈を述べる」ことについて、牡羊座ほど適している星座はいない。実際、日本の有名な叙情詩人が牡羊座や獅子座周辺に偏在しているのはそういう理由であろう。

また、ヴェルレーヌの詩でよく言われるのが音楽性である。詩を読んでみればわかるが、ノリが良くて声に出して朗読しても美しいと思う。もちろん、訳者である堀口大學氏の卓越した翻訳もあってのことだが、翻訳でもすごいのだから原文で読んだらもっとすごいのだと思う。他の詩で言うと、「沈む日」や「ストリーツ」辺りも素晴らしい。

島崎藤村もそうだったが、牡羊座の詩人は言葉のリズムの良さにおいて追随を許さない。ヴェルレーヌの場合、牡牛座金星火星と水瓶座海王星のスクエア(獅子座の月を入れるとTスクエアになる)、それに魚座の木星という、これでもかというほどの音楽の才能が過積搭載されていることもあるのだと思う。音楽の才能は詩の才能でもある。普通のサラリーマンをしていても何らか問題を起こしてそのまま終わるわけがない人だったと思う。

次に、長いので全文引用はしないが、「心静かに」という詩である。

心しずかに話しかけると 心しずかに答えて下さる!
それが僕には無性に嬉しい。

声をあらげて、小言を言ったりすると不思議にあなたも
声をあらげて小言をおっしゃる。
(一部抜粋)
   ヴェルレーヌ『彼女を讃える頒歌』
「心しずかに」より

ヴェルレーヌはかなり純情だったらしい。見た目の悪さのせいで女性から相手にされないのを気にしていた。そんな彼のことも愛してくれる女性がいて、彼女に結婚指輪代わりに詩を捧げたという。この辺りはかなり牡牛座金星火星のコンジャンクションらしい。案外ロマンチストで純情で形に残るものを、というような。
だが、その結婚生活は長くは持たなかった。天才詩人、ランボーが現れたのである。ヴェルレーヌは十歳年下のランボーの才能その他に惚れ込んで共に手を取り外国にランナウェイした。

このランボー(1854/10/20 6:00)は生粋の天秤座で、牡羊座の強いヴェルレーヌとは全くの正反対の性質である。正反対だからこそ憧れたのだろうが、風属性らしく人間関係に対して距離を取りたい若いランボーにとって、牡牛座も相当に強いヴェルレーヌは重すぎたのだと思う。結末を先に言うと、かなり最悪の形で破局となるのだが、かつて愛の詩を送った妻は、そんな夫にさすがに愛想をつかして去っていった後だった。
それを後悔したヴェルレーヌが妻を思って書いたのが、この「彼女を讃える頒歌」である。
ランボーは日本にたくさんのファン(小林秀雄とか中原中也とか、やはり牡羊座からの人気が高い)がいる詩人だが、筆者はあまり好きではない。頭良さそうな風に見せている感じが鼻に付く。

ところで、筆者はこの詩を見て、金子みすゞの「こだま」を思い出した。
金子みすゞ(1903/4/11 出生時間不明)もホロスコープを見れば太陽水星コンジャンクション、牡牛座金星、火星天王星海王星のTスクエアと、ヴェルレーヌと同じく、かなりえげつないホロスコープをしているとわかる。
ちなみに、ヴェルレーヌは後半生をほとんど病院で孤独に過ごし(原因は飲酒など)、金子みすゞは26歳で服毒自殺した。天才と称される人ほど、何らか精神を病まざるを得ないのが痛ましい。

なお、この『心しずかに』はオチが秀逸で大変切ない気持ちになるで、機会があればぜひ読んでいただきたい。

最後に筆者の一押しの詩の一部を引用する。

さらばお仲間、老盗諸氏、
心優しい浮浪者よ、
血気な掏摸、
新しい友よ、うい奴よ、
心しずかな
どうどうめぐり
三べんまわって煙草にしよう
無為も楽しい
    ヴェルレーヌ『同じく  又』

ちなみに、この表紙のグラスは当時流行したアブサン(ニガヨモギの成分ををアルコールで抽出したもので、幻覚作用がある。現在は法律で禁止されている)である。ヴェルレーヌもこれで身を持ち崩したのだという。サマセット・モームの『月と六ペンス』でも主役となる画家がこの酒を大層愛していた。まさしく詩人や芸術家のための酒であり、ヴェルレーヌを象徴するような表紙である。

2020/04/20


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