レポート;『オペラ座の怪人』

さて、今日は牡牛座の作家として『オペラ座の怪人』の作者であるガストン・ルルーについて考察したい。
なお今回、作者名より作品の方が遥かに有名なのでタイトルは作品名にした。深い意味はない。

さて、本当はバルザックを書くつもりだった。
ホロスコープも調べてある。
資料も集めた。
だが、無理だった。
筆者はフランス文学が好きだが、バルザックだけは良さがわからないのである。
原因は、あのやたらと長い描写である。
あれを5ページ読むだけで筆者は胸焼けを起こすのである。
登場人物もとても多いので誰が誰やら覚えられない。

また、シェイクスピアも良さがわからない。
言葉の言い回しやら伏線やらが上手いのはわかる。
だが、蠍座が強い筆者からすれば、心理描写が浅薄に見えて仕方がないのである。
よく「シェイクスピアの劇に描かれていない人物はいない」と言われるが、それも要点を押さえて表面だけをなぞったような広く浅い人物描写に見えてしまうのである。
これがドストエフスキーくらいのレベルになると、今度は色々と濃すぎて頭痛がしてくる。

まあ、蛇足はここまでとして…

ガストン・ルルーはともかく、『オペラ座の怪人』は広く世に知られている。
実際にオペラ化し、映画化もした。
推理小説ファンならば、この作品以外にも『黄色い部屋の謎』という古典ミステリの作者としてもお馴染みだろう。
生年月日は以下の通り

ガストン・ルルー   1868/5/6     9:00

ちなみに、この頃日本はちょうど明治維新が起こったあたりで、夏目漱石と一歳違い。

並べて、『オペラ座の怪人』のあらすじを書くと

醜い容姿のために人前から身を隠し、オペラ座の地下に住まう怪人ファントム。彼は新人オペラ歌手のクリスティーヌに恋心を抱き、彼女の夢の実現を手助けしたいと願い、オペラ座で様々な奇怪な事件を起こす。ある時、クリスティーヌに恋人が出来たことを知り、怪人の恋心は暴走していく…

というところである。
見所はオペラ座の影の支配者である正体不明の怪人の正体を暴くというサスペンスだが、エッセンス的に純愛ラブストーリーやミステリーの要素も加わっていて、ドキドキハラハラで面白く読める作品である。(トリックに腹話術やら出てくるのは「えー…」と思ったが)

さて、この作品のどの辺りが牡牛座っぽいのか。
作者のルルーは太陽牡牛座で、月が対岸の蠍座にある。ゆるいがオポジションである。
主人公のファントムは一言で言えば

かなりのヤンデレ

である。絶賛片思い中のクリスティーヌ(北欧系の純粋な美少女)の夢を叶えるためならば舞台もぶち壊すし人も殺す。もう彼女しか見えない、恋は盲目を体現しているような人物である。
それも、自分の醜い見た目を恥じていることの裏返しなのだろうが…
牡牛座は所有の星座であるが、この所有とは単にお金や物に限らない。家や居場所、そしてもちろん人もこの所有の範疇に入る。
そして、牡牛座はこの所有物を絶対に守ろうとする。時に、どんな手段を使ってでも。

現実の恋愛関係の中でも、恋人を物扱いする人というのはいるらしい。そういう人は恋人が傷ついたり、傷つけられたりするととても怒る。
だがそれは、恋人の気持ちを思いやっているのではなく、自分の所有物を侵害されたことに対する怒りなのだという。
ファントムもわりとこういうタイプに近いのだと思う。クリスティーヌがどう思うかは別問題で、自分がやりたいようにやる。好きな人の夢を叶えてあげようという思いが子供のように純粋である分、たちが悪い。しかも発想が即物的というか、なんというか。
牡牛座にそういう人が多いとは限らないが、牡牛座の大切な人との付き合い方を見ているとなんとなくそんな感じがしてしまう。他人への共感より自分の感覚なのである。

加えて、蠍座の月はかなり独占欲が強い。他の蠍座月の作家を見ていると、なんとなくみんな苦労していたり病んでいる部分がある。人の心に対して鋭い分、傷つくやすくて、その裏返しで独占欲や執着心が強くなってしまうのだろうか。牡牛座とはオポジションの位置にあるが、牡牛座が形のあるもの(家や物、誰かと一緒にいることなども含む)を求めるのに対し、蠍座は形のないもの(心とか気持ちとか関係性とか)を求める。そして、どちらもなるべく長く、出来れば永続することを望む。
これを太陽星座蠍座の場合は上手に御せる(織田作之助の『夫婦善哉』とかわかりやすい)が、月の場合はかなり幼い出方をすることもあるらしい。身近に月蠍座がいたことがないので、よくはわからないが。

さらに、この太陽と月に牡牛座の冥王星が絡んでくる。ヤンデレの上のヤンデレ、ヤンデレ二乗である。正直言ってここのラインはかなり怖い。実際に太陽か月に冥王星がコンジャンクションしていて精神を病んでいる者は多い。大抵の人はうまく表面から隠しているのだが。

冥王星が恋愛に関わってくると、しばしば支配と被支配の関係性が生じてくる。ちょうど以前に考察したプレヴォーの『マノン・レスコー』と似ているが、マノンが恋人に自分のことをまるっと肯定して欲しかったのに対して、ファントムは恋人のことがまるっと欲しいのである。

ルルーの場合は蠍座の月や蟹座の金星など、献身的で母性的な女性に惹かれる傾向があるようである。そういえばファントムもクリスティーヌに母性的な無償の愛を求めているし、『黄色い部屋の謎』は後書きでオイディプス・コンプレックスに言及されるように、もっと端的に母乞いの物語だった。

ひょっとしたら、それはルルー自身の人生経験に基づいているのかもしれない。早くに両親を亡くし、遺産は残されたものの、弟や妹たちを養っていかなければならないという責任や重責があったのかもしれない。
また、ルルー自身牡羊座の火星と海王星がコンジャンクションということもあり、かなりエキセントリックな人物だったようであるし、理解者が少なかったのかもしれない。
誰かに頼りたいが誰にも頼れない。誰も自分のことをわかってくれない。その孤独感がファントムに投影されているのかもしれない。

作品はこちら

筆者は光文社の古典新訳文庫を贔屓としているのだが、なにせ高い。が、脚注も入っていてわかりやすく、最後に作者についての解説と年表が入っているのがありがたい。

また、『黄色い部屋の謎』も紹介しておく。筆者としては『オペラ座の怪人』以上の傑作だと思っている。

この密室トリックは超有名で、一読しておく価値はある。推理作家は双子座や天秤座が多いが、牡牛座もすごい。マーシェリー・アランガムとか、有栖川有栖とか。

2020/04/23


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