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新譜インタビュー記事公開etc.

先日公開になったインタビュー記事です。

西山瞳トリオ『Calling』久しぶりのトリオ作で追い求めた、音楽の〈普遍的な強度〉 | インタビュー - Mikiki 


インタビューと執筆をして下さったのは、音楽ライターの大石始さん。楽しくお話しさせてもらうと同時に、プロのライターさんのインタビューって見事なものだなと学ばせてもらいました。

先日、新譜『Calling』の発売日当日にYouTubeでトークライブをして、その時に「最近CDにライナーノートを入れていない」とお話ししました。

以前は、CDを買って封を開けて、評論家の書いたライナーノートを読みながら聴くのが最初の儀式としてとても好きだったのですが、近年は〈文字情報全く抜きで聴いてもらった方がいいのではないか〉と思っており、2016年『LIVE』以降はライナーノートは付けていません。
(『LIVE』と『Faces』は、ライブ購入特典としてライナーノートをオプションで付けていましたが、ライターに頼まず自分で2000字ほど書き、市販品には付けておりません)

たまに、評論家さんやライターさんのインタビューで「この曲タイトルの意味はどういうこと?」と聞かれると「適当です」とかはぐらかして答えていることが多いのですが、
「曲のタイトルの意味」
「アルバムのメッセージ」
「どういう風に聴いてもらいたいか」
「自分の音楽を一言で言うと」
のような質問は、インストゥルメンタルで、ミュージシャンの発出した表現そのものや技量を問われる音楽に対して、あまり意味のない質問だと思います。

音を出すために生涯かけてきてるのだから、その音楽を言葉で解説してくれと本人に言ったり、簡単な言葉で省略させて言わせようとするのは、それは評論家やライターの仕事じゃないの、と。

これは、自分も音楽記事を書く仕事を頂くようになって、アーティストでありライターでもあると、やはり書き手としてはアーティスト目線の方が強い自分がいるんですね。
自分が今まで受けて楽しかったインタビュー、思いもよらない記事になったインタビュー(良い意味でも悪い意味でも)、とても息苦しかったインタビュー、インタビューを元に素晴らしい論考を書いて下さった記事、ライターによって気付かされた自分の考えがあったことなど、アーティストとしてデビューしてから、評論家・ライターという立場の方からお話を聞いて頂く機会に、たびたび驚きがありました。

以前は上記のような質問を受けても無理に答えを出していましたが、今は「メッセージは特にないです、受け取る人が自由に考えてくれたらいい」以上のことは言えなくなりました。
でもライターとしては記事の結論的なことも書かないといけないのも非常にわかるので、とにかくアーティストに沢山喋ってもらって考える材料を揃え、ライターが考えを深め、文字にするしかないですよね。

良い経験は生かしたいし、苦い経験は同じことをしないようにしたいと常々思っています。

特にジャズの世界では、ジャズを聴いてきた長さにおいてはミュージシャンより圧倒的にベテラン評論家さんたちの方が長いことが多い。もちろん聴いてきた量と歴史とその知識はとても尊敬していますが、それはジャズと客観的に向き合っている物量であり、主観的にジャズの中で生きてきたミュージシャンとは経験の質が全く違います。
そのために、インタビューの力関係がミュージシャンが過剰に下になっちゃうというか、対等にお話しできない=対話できないことも結構ありまして、なんとなく記事は完成して立派に見られているけれど、実は全く認識が共有できていないこともあります。他のアーティストの記事を見ていても、通じてないな、噛み合ってないなと思う時があります。

デビューからそういうインタビューの積み重ねがありましたが、2015年始動のNHORHMをきっかけにジャズ以外のライターさんともお話しする機会が多くなりました。

大石さんのインタビューで印象深かったのが、
「メタルとジャズ、連載を続ける中で新しく見えてきた共通項はありますか?」という質問があり、私が「共通項より、違いの方が見えてきたかも」と、問いのひっくり返しの一言を発してから、グッとそちらに舵を切って進められたことです。
実はその話題の時、出ている記事よりもっと色々な話をしているのですが、うまく抽出して記事にして下さいました。予定になかった返答からのお話が、非常に楽しかった。これって完全に対話力でもあるし、広げて受け止める力と好奇心がなければそんな違う方向に舵を切れないし、こういうところ大事だよなあ、自分だったらできるかなあ、などと考えてしまいました。

ロック・ポップス系のライターさん、皆さん本当によく話を聞いて下さる。ジャズの知識がそこまでないから聞くしかないのかもしれませんが、ジャズ媒体のジャズ評論家さんとは全く違うインタビューの進め方で、ちょっと驚きますよね。こんなに話聞いてくれるの、と。

しかし、ライターはアーティストや事務所のスポークスマンではないし、インタビューなのに自分の評論の補強のためにアーティストの言質を取るばかりの評論家も順序が逆だと思いますし、いずれにせよ対話しながら自分自身で論考を深め、適切なバランスでアウトプットすることは心がけていかないといけないと思いました。

また、デビューした時と違って、今はネットで調べればわかる情報は記事として必要ないですし、英文の記事にアクセスし原文で読める人が増えているということもあり、情報系の記事、ライナーノートはもう必要ないですね。


最近読んだインタビューで、これは凄いと思ったのはこちら。

パット・メセニーに「創造性」を学ぶ 次世代とも共鳴する伝説的ギタリストの思想 

これは本当、見事ですね。最初に読んだ時、家で「見事だわ」と思わず声に出てしまいました。


私の記憶に残るインタビューとしては、上田力さんのKAWAI機関紙のインタビュー。上田さんご自身が音楽家で評論家ですので、応援しながらも厳しく勇気の出る時間というか、かなり印象的に残っています。2007年ぐらいです。

追記:2008年「D and D Vol.114」でした。

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工藤由美さんのCDジャーナルでのインタビューも顔面パンチのようでした。こんな聡明で素敵な方が自分の音楽を聴いて下さって、思ったことをぶつけて「こうじゃない?」と聞いて下さるのは、なんというか音楽評論家の強靭な知性に触れた喜びがありました。完成した原稿もエモーショナルだったように記憶しており、そのインパクトから『Music In You』のライナーノートを書いて頂けないかお願いした経緯があります。

今ぱっと思いつくのがこの2例だけで申し訳ないのですが、他にも沢山良い思い出があって、いずれも〈聞かれているうちに、こちらが目を開かされた〉というものです。インタビューされたのに、学んじゃった!みたいな。

自分も書くことが増えて、そんな目の覚めるような仕事はできないかもしれませんが、あの良い経験を活かすことができたらいいな、と思います。

大石さんのインタビューで、また一つ印象的なインタビューの思い出が増えました。


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