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「五輪2季前の世界選手権」が、好き。

十分に予想されたことだったし、そうなった方がいいことはわかっていたけれど、ニュースに直面してからざわついた気持ちをまだ抑えきれないでいます。

世界選手権が中止されることになりました。

でも……と思ってしまう気持ちがなくはないともいえなくもないような感じ。久しぶりに世界選手権出場を手にした人、初出場の予定だった人、いまのプログラムを披露する最後の場として今季のすべてを投入してきた人、もしかしたらこれを最後と思っていた人もいるかもしれない。

それにしてもこんなに気持ちがざわついているのはなぜだろうと考えたとき、最も大きな理由は、「五輪2季前の世界選手権」というものが好きだからかもしれない、ということに気づきました。

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五輪2季前の世界選手権って、次の五輪雰囲気が少々くっきりめに見える大会だったような気がするし、ここでブレイクすることでその先の2季を変えた選手が少なくなかったように感じています。多分、すごく興味深いことになる予定の大会だったのです。

平昌2季前の2015-16ボストンワールドを振り返ってみると、シニアデビューだったメドベージェワがワールドも優勝、その後平昌まで走り続けた(五輪2位)し、サフチェンコ&マッソも初出場しています。しかも2位。そして五輪で優勝しました。シブタニズもこの大会で5季ぶりの表彰台に乗って評価を確かにして、その後五輪銅メダリストになっています。

ソチ2季前の2011-12ニースワールドでは、羽生くんが初出場で3位。翌季から一気にトップで活躍をするようになります。

バンクーバー2季前の2007-08イエテボリワールドでは、真央さんが初優勝。その後のさらなる活躍は皆さんご存知の通り。そしてまたまたサフチェンコさんですが、こちらはゾルコヴィーとのペアで、このとき世界選手権初優勝です。まだ若いテッサとスコットもワールド2回目で2位に。わかりやすくするためにものすごーく悪い言い方をしますが、このころより前はアイスダンスでは年功序列的な部分も否定できなかったのですが、新採点方式が、導入後数季経って浸透してきて、若い世代が急にトップに躍り出ることができるようになったなという印象を残しています。そしてバンクーバーで優勝し、その後団体も含めると計5つの五輪メダルを手にするものすごいカップルになっていきます。

その4年前、トリノの2季前の2003-04ドルトムントワールドでは、荒川さんが優勝。その後のさまざまを経たのちトリノ五輪で優勝したのは、ドルトムントの優勝も一つ大きかったのだろうな、と。ペアでは、トットミアニーナ&マリニンが初優勝しそのままトリノまで突き進みます(とはいっても、大きな壁だったシェン&ツァオのツァオ(っていうか、ホンボー)が、翌季後半からアキレス腱をいため、五輪シーズンの夏にアキレス腱を断裂してしまうという大変なこともありました。がしかしその後トリノには出て3位となり、プロポーズや休養などを経たバンクーバーで優勝。そして中国スケート連盟の重要なというか重大なコーチになっている、という現在)。アイスダンスでもナフカ&コストマロフが初優勝(この前のシーズンにそれまでの大人なカップルたちが引退したこともあり)。ここからナフカたちもトリノへ猛進します。

ちなみに、2016ボストンワールドは、真央さんとボロソジャール&トランコフの、2008イエテボリワールドはジェフの、それぞれのラスト世界選手権となった大会でもあり、1つの時代の幕引きが感じられたりもしました。

余談ですが、2012ニースワールドは、ケヴィン・ヴァン=デル=ペレンのラストワールドでもありました。ケヴィンVDP、本当にいい演技をしたんです。フリー8番滑走と早めだったけど、結構なスタオベを受けていました。私も会場で落涙。

同じニースワールドでのことをもう1つ。会場のユーロな応援に包まれるなか、とうとう、9度目の出場でとうとう、コストナーが優勝を果たしました。「カロリーナに、金メダルをあげたい」という静かな熱望のようなものが会場を覆っていたのを、とても温かく感じました。

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話が逸れましたが、五輪2季前の世界選手権って、前の時代が終わって次の時代に本格的に入るスイッチのような大会だと思ってきました。もちろんすべてそう言い切れるわけではないけれど、「ここで見せたいいものは、近い将来、思った以上に大きく関わってくる」とはいえると思います。どの試合もそうだといえばそうではある。けれど、五輪というものを中心に見つめてみると、五輪2季前の世界選手権は、結構な大きさを感じさせます。

今季だったら、ネイサンと羽生くんがどうなったか。戻ってきた宇野くんがどんなものを見せたか。ロシアのシニアデビュー3人にほかの女子たちがどう絡んだのか。ペアの勢力図はどう変わったのか。アイスダンスはモントリオール勢が地元でのワールドでどんなものを見せたのか。もう、想像しかできないけれど、今後数日、想像して過ごそうと思います。

そしてまた、この中止(もしかしたら代替試合があるのかもしれないけれど)によって、世界選手権を開催していた場合と比べると、来季の様子も少し変わるかもしれない。

みんな1つ年をとります。それは、選手にとってはとても大きいこと。跳べなかったジャンプが跳べるようになるかもしれないし、跳べていたジャンプが跳べなくなるかもしれない。ジュニアからは、すぐにシニアで戦える選手たちが複数上がってきます。世界選手権がなくなったシニアの選手たちと、世界ジュニアまで出場してシーズンを終えている若い選手たちとの気持ちの差も、小さくないかもしれない。

でも、それもすべてフィギュアスケート、と言うしかない。スケーターたちが、心身ともに元気に演技を見せてくれる日がすこしでも早く訪れることを、切に祈ります。

気持ちを取り戻すべく、去年の、楽しかった世界選手権のことを思い出そうと思います。以下のnoteから、ぜひ。

<朝日カルチャーセンター新宿教室>
 ●4月4日(土)「ザヤックルール、リカバリーを極める」
 ●4月18日(土)「2019-20シーズンを振り返る」
 ●5月16日(土)「4回転ジャンプを、もっと知る」
 ●6月6日(土)「男子シングルの潮流を知る(1)」(旧採点時代から2009-10シーズンまで)





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