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[DX事例54]AI自動カットでまいたけ製造を大幅省人化_株式会社雪国まいたけ

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回は農業からです。マイタケを始めとして、国内トップシェアのきのこ栽培および加工食品の製造販売を行っている、株式会社雪国まいたけのDXです。


経験者でもカットしづらいまいたけ株をAIで自動カット!雪国まいたけのDX事例

雪国まいたけは1980年代当時「幻のきのこ」と呼ばれていたまいたけを、日本で初めて人工栽培に成功した会社となります。昨今では「雪国まいたけ極」という商品名でスーパーで見かけるようになりましたね。
そんな雪国まいたけのDX事例をご紹介します。

①AIがまいたけ株を最適なサイズに自動カット「AI自動カットロボット」
雪国まいたけは独自栽培法により、天然同様900gという大きなまいたけ株を生産しています。ですが、それをカット・梱包する工程が非常に難しく、従来から熟練の技術者が行っていました。カット工程の作業員は述べ600人に上るそうで、雪国まいたけの全従業員の3〜4割も占めるそうです。
茎の付き方や形状がひとつひとつ異なり、かつ衝撃に弱いまいたけを見栄え良くカットする手間もあり、経験の浅いスタッフだと熟練者と比べて2〜3倍作業効率が変わってくるそうです。

そんな雪国まいたけは2021年1月に、株式会社ロビットと共同でまいたけを自動カットする「AI自動カットロボット」を開発し、まいたけカット工程の自動化に成功しました。

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雪国まいたけ「次世代型パッケージングライン開発合意のお知らせ」より抜粋

AI自動カットロボットは、まいたけの形状撮影・分析を行い、均質な重量かつ最適なカットをすることが可能であり、熟練作業員と同等の作業効率を実現できたとのことです。
現在はカット工程のみが自動化された形ですが、カットの前後の工程(カットから包装までの工程)についても自動化の開発を進めており、将来的にはカット工程周りの要員をゼロにすることを目標にしているとのことです。


②カット以外も自動化を目指す「自動植菌機」と「エリンギ自動収穫機」
こちらはまだ具体的な成果が見つからなかったので簡単なご紹介のみとします。
雪国まいたけは前述のまいたけカット以外の工程においても、アグリテックによる自動化を進めています。

まずは自動植菌機からの紹介です。まいたけは菌類ですので生産時は雑菌を混入させない為、クリーンな装置の中で殺菌した培地の上にまいたけ菌を植えます。従来は人の手でこの植菌作業をしていましたが、自動食菌機を導入することで省力化を行います。
また、エリンギの生産においても自動収穫機を導入しており、ロボット技術やAI技術を積極的に活用していくことで、各生産工程の効率化・省人化を推し進めていきたいとのことです。

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雪国まいたけ「2021年3月期決算説明資料」より抜粋


DXと経営戦略との関連性

雪国まいたけは「中期経営計画(2020年3月期から2023年3月期)」において、アグリテックの追求による生産性の向上を掲げています。その中でも今回の事例で紹介した「生産・包装の技術革新の追求」を基本戦略としています。

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雪国まいたけ「2021年3月期決算説明資料」より抜粋

コロナ禍の巣ごもり需要や健康志向へのトレンドによりまいたけの販売が増加傾向にあるとのことで、消費者ニーズに応えきのこの生産量を拡大するためにも、人が行っている作業や工程をAI・ロボットに代替して省人化していきたい狙いがあります。設備投資費としても、2021年3月期は前期と比べ1.5倍も増やしています。
雪国まいたけはきのこの生産工程を自動化し、生産量・生産効率の向上を図り、健康かつ高品質な食品の提供をしていくことで「プレミアムきのこ総合メーカー」としての基盤づくりに推進しています。


まとめ

いかがでしたでしょうか? 今回のAI自動カットロボットが対象にしていたのが「雪国まいたけ極」ですが、タナショーのお家の冷蔵庫にも雪国まいたけ極が入っていてそれを見たとき嬉しくなりました(笑)
やはり身近に目にしたり、口にする商品にDXの技術が使われていると嬉しくなりますね。まだ市場に出ているまいたけ商品にこのAIカットロボットは使われていないようですが、近いうちに登場してくるのでしょう。

消費者ニーズはあるので生産量を上げたいが人手が足りない、という経営課題に頭を悩ます経営者は多いのではないでしょうか? そもそも、工場の敷地面積の問題や、作業工程のボトルネックにより人を増やしても生産性が上がらない、という状況もあります。そんなときこそIT技術の出番だとタナショーは思います。

もちろん付け焼き刃的にIT技術を導入しても効果が出ないことが多いです。自社の生産工程のどこにボトルネックがあるのか把握し、それを解消するための施策としてIT技術を使うことが大事です。DXもITもあくまで経営課題を解決するための一つの手段、という意識を持っていただければと思います♪
タナショー


参考にさせていただいた情報
株式会社雪国まいたけHP
https://www.maitake.co.jp/index.php
株式会社雪国まいたけ「2021年3月期決算説明資料」
https://ssl4.eir-parts.net/doc/1375/tdnet/1965167/00.pdf
株式会社雪国まいたけ「次世代型パッケージングライン開発合意のお知らせ」
https://www.maitake.co.jp/press/pdf/20210127.pdf
TC「ロビットが「雪国まいたけ」のまいたけカット工程自動化開発に成功、次世代パッケージングライン開発に合意」
https://jp.techcrunch.com/2021/01/27/robit-yukiguni-maitake/
日本経済新聞「雪国まいたけの足利社長「工場増強で販路をさらに拡大」」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63844130V10C20A9000000/

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