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Driver's license War_3

センセイ_

ある日の講義。座学にて。かなりのベテランと思われる先生が教鞭を執る。強面な印象なので教室には少しの緊張感が漂っていた。するとその先生は受講生が注目する中、ホワイトボードに大きく一文字の漢字を書いて車の運転について熱く語りだした。

「愛」

ホワイトボードにはそう書かれていた。受講生は全員ポカンとしている。意表を突かれて先生の熱い語りの内容は何一つ頭に入ってこない。唯一覚えていることといえば、「俺は自分の担当の教習車は舌で舐めることだって出来るよ!毎日愛をこめて磨いているからね!」自信たっぷりに言い放っていた。少し、いや中々に怖い。なんともパンチのある先生であったが、ミヤオイを含めた4人が合宿の全日程を終え、最後の挨拶に伺った際には「今時珍しい礼儀正しい若者だ!」と言って嬉しそうにしていたので、彼らとしては悪いようには思っていない。

ボサボサ_

もう一人印象的な先生がいた。こちらは若い男で、少し明るい髪をツンツンに立たせている。身長もそこそこあって筋肉質な印象。ワイシャツにスラックス姿も決まっている。本日はごっちがこの先生との教習。

「あの女子大生かわいいじゃん!声かけてきなよ!」

「出会いを求めて合宿に来たんじゃないの??」

イケイケなことを次から次に言い放ってくる。チャラいらしい。ごっちは「イヤァ...」「ハハハ...」などとタジタジ。適当にお茶を濁してやり過ごしていた。

後日。つちやが「お前あのチャラい先生に心配されてたぞ」とごっちに伝える。何がだ。彼は全く心当たりが無い模様。あのボサボサの髪をした男の子はちゃんとメシ食ったり出来てるのか?という心配をされているらしかった。余程貧乏臭く見えたのだろう。確かにごっちは安いシャンプーしか使わないし、服装にも無頓着だった。そんな小汚く見える男子を女子にナンパするよう促してくるなんて。イジメだ!と彼は思ったが、どっちにしろナンパなんかできないのだからどうでもよいことだ。だが合宿が終わったら髪は切りに行こう、と彼は固く決めたのであった。

続く

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