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Driver's license War_4

オートマ_

ところで彼らはATとMT、どちらの免許を選択していたのかというと、せんむ、つちや、ミヤオイがMT、ごっちがATだった。

つちやはマニュアル車の運転に大苦戦し、途中からATに変更をした。MTの方が免許取得にかかる費用が少し高く、ATの方が安い。しかし途中でMTからATに変更した場合には差額が返ってくるわけではなく、高いお金を払ってATのみの取得ということになる。つちやはその点について悔しく感じていたが、MTの難しさと、マニュアル車を運転する機会が今後あるのか?ということに懐疑的になり、苦虫をかんだような表情で手続きをしていた。

実はせんむもマニュアル車の運転にはかなり苦戦をしていたが、「金がもったいねえ」そう言って彼は根性でMTのまま合宿を終えた。こういう時なぜか妙な力を発揮するところがある。

ミヤオイは優秀だった。順調に教習を進め、三人に座学の勉強を教えてくれるくらい。とても助けられた。

ごっちはMTの方が難しく費用が高いから、という理由で最初からATにしていた。めんどくさそうなことは極力避けるのが彼の信条だ。浮いたお金で安いベース一本買おうかな、なんてことを企んでいた。クソ野郎だ。

カリメン_

仮免許取得の筆記試験の時のお話。

彼らは仮免許の筆記試験に合格するため、協力して試験勉強に臨んでいた。というか、ミヤオイに勉強を見てもらっていた、という方が正しいかもしれない。ひっかけになっている問題や、必ず出題される問題を教えてもらい、試験に向かう。しかしこの仮免許の試験は何度でも受験できる上に、数パターンの出題内容が違う問題用紙がランダムに配布される。解答後、すぐに採点をし、不合格ならまたすぐに試験を受けることもできる。ようするにあまり勉強していなくても何度か受けてれば合格できるのだ。せんむ、つちや、ミヤオイの三人は一発合格だった。実際そんなに難しい試験でもない。しかしごっちがダメだった。せっかくミヤオイにご教授いただいたにもかかわらず、繰り返し受けてパターン慣れして合格する作戦らしい。何度目の試験だったろうか。問題用紙を渡してくれるお兄さんが小声で「さっきと同じやつだよ」と他の職員に気づかれないように問題用紙を渡してくれた。ごっちは(「なんて仕事ができるお兄さんだ・・・!」)と心の中で感銘しながら、こちらも小さく感謝の意を示す。

結果は当然合格。予想外のラッキーにより作戦成功だ。しかしごっちは去り際に聞こえてしまった。「これさっきと同じやつじゃないの!」と気を利かせてくれたお兄さんの上司と思われる女性の職員さんが言っている。バレてしまった。「え、あ、すみません・・・」お兄さんはヘコヘコして謝っている。(「すまない素敵なお兄さん・・・!」)心の中で尊い犠牲に感謝しつつ、何も聞こえていないような素振りで彼は意気揚々と仲間の元へ帰っていくのだった。

続く

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