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令和4年・九州場所雑記

場所前に横綱・照ノ富士の休場が発表され、場所に入ってもカド番の大関・正代が不調、大関復帰を賭ける関脇・御嶽海も不振で、またもや混戦となった、今年納めの九州場所。

優勝争いも二転、三転しましたが、最後は28年ぶりの巴戦による優勝決定戦となって、元・大関の高安、大関で孤軍奮闘した貴景勝を連破した平幕の阿炎が初優勝を手にしました。おめでとう。

一昨年に出場停止で一時は幕下まで番付を降下させてそこからの復活、先場所は以前から悪かった肘や足首の手術に踏み切り全休、そして師匠の錣山親方は病気療養で入院中と、ドラマ要素満杯の劇的優勝。

阿炎自身はもちろん初優勝、錣山部屋からも創立18年目で初の優勝力士、さらに史上初の3場所連続の平幕優勝年間3度の平幕優勝も史上初、優勝決定戦の巴戦を平幕力士が勝ち抜いたのも史上初と、なかなかに派手な優勝となりました。

惜しくも優勝決定戦で涙を呑んだ貴景勝、またも最後の最後で悲願の初優勝を逃した高安の両力士も称賛に値します。2人とも来年以降にまだまだチャンスはあると思うので、落胆せずに進みましょう。貴景勝は次の初場所に非常に高いレベルの優勝をすれば一気に新横綱の目もありそうですし。

それに対して、大関からの陥落が決まってしまった正代と、1場所での大関復帰どころか負け越しておよそ2年ぶりの平幕陥落が決定的な御嶽海の両「大関」にはがっくりです。どちらも故障でもあるのかもしれませんが、それよりもメンタルの問題なのか、まったく覇気が感じられない相撲ぶり。周囲の状況から見て、復活への道は相当険しそうです。まだ老け込む年齢でもないだろうし、なんとか頑張ってほしいですね。

大関昇進についていえば、最短距離にあった若隆景が、これといった見せ場もなく8勝7敗と失速。昨年の初優勝以来有力候補と目されていた大栄翔も負け越しとなって出直し。

正代が陥落し、御嶽海が復帰に失敗したので、来たる初場所の番付で大関は貴景勝一人の異常事態(番付上は照ノ富士が「横綱大関」となる)に陥るので、早急な新大関の誕生が望まれます。チャンスなんですよ。

となると有力なのは、一時は優勝争いの単独トップに立ち場所を牽引した豊昇龍ということになるでしょうか。今年春場所の新三役から5場所連続の勝ち越し、今場所は2ケタの11勝を挙げたことで大関盗りレースのトップに躍り出た感もあります。まだ23歳なので若すぎるという声もありそうですが、豊昇龍の叔父の朝青龍は、21歳10か月で大関に昇進し、22歳で新横綱。早過ぎることは全然ないですよね。

同じように期待されるのが、豊昇龍とともに優勝争いを盛り上げた同い年の王鵬。初めて幕内で10勝を挙げましたし、何よりも相撲内容にぐんと良化の兆しが見えてきました。祖父と父親が合計で33回優勝してるんですから素質が充分なのは誰も異論のないところ。こちらも祖父・大鵬はこの年齢のときにはすでに大横綱への道を歩んでいましたから、遅いくらい(まぁ大鵬は入門年齢が全然若かったですけど)

そしてもう一人、こちらも良血サラブレットの琴ノ若。年齢は上記2人よりも2歳ほど上ですが、祖父に横綱・琴桜、父に関脇・琴ノ若を持ち、なによりも父親が現在の師匠という恵まれた環境。番付運が悪く、ここのところ平幕上位で勝ち越しを続けながらも足止めを食わされていましたが、どうやら来場所は待望の新三役を射止めそうです。一気にブレイクの時が来たのかもしれません。

私はこの3人が、次代を担う逸材だと思っています。できれば来年中にも大関、いやいや一気に横綱昇進まで果していただきたい。そのくらいの気合いで、精進してくださいね。

もちろん、若隆景と、こちらも急上昇中の若元春の兄弟、小結で2場所連続勝ち越した霧馬山、新入幕以来の快進撃を見せる錦富士、そして今場所新入幕で負け越し(4勝11敗)で撥ね返されはしたが将来性充分の熱海富士らも虎視眈々でしょうから、そう簡単にはいかないでしょうがね。

しかしこうしてみると、けっこう将来有望な20歳代半ばまでの若手が育ってきていますね。来年はいよいよ、白鵬時代の後を襲う時代の覇者が現われそうな予感がします。

さてさて、今場所はとても嬉しいことがありました。

私はヒマ人なので、いつもテレビ中継では幕下以下の取組も見ていますし、相撲雑誌を愛読していますので、関取以前の若手にも何人か注目し応援している力士がいます。

その四股名ゆえ、いやでも応援しているのが鳴門部屋の川村であり、錣山部屋の(あまね)であり、追手風部屋の日翔志であります。

このうち日翔志が、今場所三段目で優勝してくれました。同名(?)のものとして嬉しい限りです。大学の後輩だし。昨年9月場所に番付デビュー2場所目で序二段優勝したもののその後に首のケガで3場所休場し、復帰して再び序二段優勝、そして今場所の好成績で来場所は幕下昇進。出場した6場所で3回優勝しているという逸材。期待してますよ。

そしてもう一人、いろいろあってずっと応援していた玉正鳳が、ついについに幕下優勝を手にしました。入門して11年目での初の各段優勝。それも6番相撲で当たった元大関の朝乃山に勝っての栄冠。なにしろ朝乃山は現役大関級の実力者(来場所は関取に復帰。おめでとう)を倒しての優勝なのだから価値も高いです。

玉正鳳については、春日山部屋について書いた過去記事をご覧いただきたいです。入門以来いろいろあって、春日山部屋→追手風部屋→中川部屋→片男波部屋と本人の意思とは関係なく移籍させられ、四股名も高春日→種子島→ 旭蒼天→ 玉正鳳と転々としましたが、ようやく報われました。おめでとう。来場所は関取昇進へチャレンジのチャンスを迎えます。ぜひとも悲願を果たしてほしい!(昔は関取昇進したら、ぜひとも川崎フロンターレから化粧回しをとか思ってましたが、それはもう無理かな)

それはともかく……

相撲雑誌の記事はまだ読んでいませんが、マスコミの論調はやはりこの戦国乱世には否定的です。まぁそれもうなずける面があるんですが、一方で相撲内容は非常に面白い。

今場所も、物言いのつくもつれた相撲も多かったし、合掌捻りとか河津掛けとかいっためずらしい決まり手も見られました。なによりも、力の入った攻防のある相撲が多かった気がします。

番付の意味合いを考えれば、これだけ平幕優勝が乱舞するのはやはり異常事態ですが、面白いことは面白いし、取組の結果と星取りだけが相撲ではありません。

来年もわれわれファンを楽しませてくれることを期待していますよ。

では、令和5年の初場所でまたお会いしましょう。

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