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キングコング史(1)

「シン・ゴジラ」が話題です。それに対抗するかのように(?)アメリカでは「GOdozilla2」の製作が進んでいますが(2018年公開予定) 次いで、なんと「Godzilla vs. Kong」の製作が決まったそうです。2020年の公開とか。これは待てないぞ。待つしかないけど。

日本が誇る怪獣スターのゴジラと、アメリカのみならず世界映画史上最大の怪獣キングコングの顔合わせは、ご存じ東宝の名作「キングコング対ゴジラ」(通称「キンゴジ」/1962年)以来だから、じつに58年ぶりの対決。あれ、今回は名前の順番が逆になるのか。

さてこの「キンゴジ」、けっこう色々な裏話がある映画なのはご存じだろう。

そもそもは1933年、世界映画史上最初の大成功した怪獣映画「キング・コング」にさかのぼる。画期的なこの映画で、コングの特撮パートを担当したのがウィリス・オブライエン。これより8年前に、コナン・ドイルの『失われた世界』を原作にした「ロスト・ワールド」(1925年)で、いわゆるストップモーション・アニメの手法を確立した偉人である。ちなみにこの手法の伝説的存在となっているレイ・ハリーハウゼンはオブライエンの弟子。

で、「キング・コング」の世界的大ヒットで名声を確立したオブライエン先生、すぐに続編を作る。これが同じ年のうちに製作された「コングの復讐」というやつで、原題の「Son of Kong」が示すように、コングのサイズが小さくなり、前作とは比べるべくもない粗製品となってしまった。

これがケチのつき始めだったのだろう。

その後のオブライエン先生はあまり作品に恵まれず、「猿人ジョー・ヤング」(1949年)でアカデミー賞を受賞したものの、パッとせず。そのまま時は1950年代を迎える。

そこで起死回生の企画として先生が映画会社に売りこんだのが、キングコング・シリーズ第3作になる「キングコング対フランケンシュタイン」

いやいやバチモン臭漂うようなタイトルだが、そもそも東宝で巨大怪獣格闘映画が出現するよりも前のことなんだから、着想は悪くなかったのかも。実際オブライエン先生の手になる絵コンテも現存しており、少なくとも先生、周囲を説得するのには成功したようだ。

フランケンシュタイン博士が作り出した巨大なクリーチャーがコングと対決するというこのプロット、その後「キングコング対プロメテウス」と改題されたようだが、けっきょくはボツ。

この「キングコング対プロメテウス」のプロットが日本の東宝に売り飛ばされて「キンコジ」になった、というのが定説。これを聞いたオブライエン先生、すっかり落胆したと伝えられている。

しかし、コングはともかく「フランケンシュタイン博士が作り出した巨大なクリーチャー」と我がゴジラの間には天文学的な距離があるような気がする。

察するに、東宝が手にしたのは「キングコング」そのものの名称使用権とかのパテントと、「デカい怪獣が組み打ちする」というアイデアだけだったのではないか。

それはともかく、そもそもオブライエン先生はキングコングのパテントを持っていたわけではないし、権利元の映画会社がその権利をどこに売ろうが関係ないのだから、心情的にはともかく、先生がいくら落胆しようとも、こればかりは仕方がない。

とはいえ、ストップモーションアニメの開祖としての誇りがあったであろうオブライエン先生が、東宝製の着ぐるみコングをみたら涙したことは想像に難くない。オブライエンは「キンゴジ」がアメリカで公開される前の年に死去しているので、見たかどうかは不明だが。

とかなんとか言っても、そのおかげで傑作怪獣映画である「キングコング対ゴジラ」が誕生したのだから、「キングコング対プロメテウス」がボツになったのは幸いであったといえるのだろう。

余談だが、「フランケンシュタイン博士が作り出した巨大なクリーチャー」の部分も、のちに東宝が製作した「フランケンシュタイン対地底怪獣」(1965年)「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」(1966年)でなんとなく実現しているので、それはそれでオブライエン先生も彼岸の彼方で喜んでくれていることだろう(でも着ぐるみだけど)

で、思いついたついでに、その後の「コング史」も調べてみたので、続きはまた明日にでも。

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