令和3年・春場所雑記
ここ数年、この欄では「予想もしなかった」と書きだすことが多かったような気がしていましたが、今場所は結果的に「場所前の予想が的中した」形になったようです。
相撲マスコミの優勝予想でも本命に押されることが多かった関脇・照ノ富士が、その予想通りに優勝したからです。
とはいえ、場所途中では、また今場所も「予想もしなかった」になるかと思いました。
12日目まで2敗でトップに立っていた小結・高安が、相撲内容から見ても元大関の実力をいかんなく発揮していて、ついに悲願を達成すると思われたからです。
ところが、そこからまさかの3連敗。まさに「予想もしなかった」大崩れで、けっきょく準優勝にも届かず。かつての兄弟子・稀勢の里の轍を踏んでしまいました。
つくづく優勝運のない人なんだなぁ。でも諦めずに初優勝と大関復帰を目指してください。
優勝と大関昇進(復帰)の両手に花となった照ノ富士に関しては、すでに報道がドカドカ出ています。負傷と病気で序二段まで下がった元大関が涙の復活って、いかにも日本人の好きそうなストーリーですからね。
ということで復活云々の話題はそっちで見ていただいて、本欄としてはもっとニッチな大記録に注目しましょう。
照ノ富士の優勝は、これが3度目。
初優勝は平成27年(2015年)の夏場所、2度めは昨年の7月場所ですね。最初は関脇、2度めは平幕での優勝、そして今回はまた関脇。
つまり、関脇以下の地位で3度目の優勝なんですが、じつはこれが大相撲の優勝制度が出来て以降、誰も成し遂げなかった大記録なんです。
そもそも関脇以下での優勝は非常にレアなものなんですが、それを複数達成しているのは、男女ノ川(別席と関脇)、朝潮(関脇で2度)、佐田の山(平幕と関脇)、魁傑(小結と平幕)、貴花田〔2代目・貴乃花〕(平幕と小結)、琴錦(平幕で2度)、そして現役の御嶽海(関脇で2度)だけ。
昨年平幕優勝した時点でこのラインナップに加わっていた照ノ富士ですが、これで史上初の快挙を達成したわけです。なにげに凄いぞ。
ただし、これで照ノ富士は大関になるわけで、たぶん4度目はないでしょう。となると、今後この大記録を打ち破る最短距離に立っているのは、現役で2度の関脇優勝を達成している御嶽海なんですね。
その御嶽海ですが……
今場所は5人いた三役力士が全員勝ち越すという、これまたけっこうレアな場所だったんですが、そんななかで小結の御嶽海は、千秋楽に辛うじて勝ち越しを決めて8勝7敗という成績。勝ち越したからヨシってわけにはいきません。
正直言って期待外れ。
御嶽海が幕下付け出しでデビューし、スピード出世で幕内まで駆け上がってきたときには、もうすぐにも大関になるかと思いました。
ところが、はっと気づけば、それももう6年も前の話。あれよあれよという間に大関盗りレースでは、貴景勝、朝乃山、正代、そして今度は復活・照ノ富士にまで先を越されてしまいました。
もはや堂々の「万年大関候補」 それもこのままいくと「史上最強の万年大関候補」になりかねません。
さっき書いた「関脇以下での優勝回数記録」なんかどうでもいいので、さっさと大関に昇進してくださいよ、まったく。期待してるんですからね。
今場所の三賞は、殊勲賞が照ノ富士、技能賞が若隆景、敢闘賞が明生と碧山。4人の受賞は文句ないところですが、不満もあります。
優勝争いのトップにいた高安を引きずり下ろした翔猿と、幕内で初めて勝ち越した英乃海が、ともに10勝を挙げたのに三賞の選から漏れているのです。これはちょっと納得いきません。
ご存知のように、翔猿と英乃海は兄弟。兄弟力士が同時に三賞受賞となれば大きな話題にもなったでしょうに、もったいない。
相撲協会も、三賞選考に当たる相撲記者クラブも、もうちょっと気前よく出したらいいと思いますよ。
さて最後になりましたが、横綱の鶴竜が引退しました。
調整は順調と伝えられていたのが、場所前に負傷したとかで初日から休場。これは夏場所に進退をかけるのかと思っていたら、場所も終盤に入った11日目に突如として引退の報。ちょっと意表をつかれましたね。
昨年から休場が続き、なにかと批判されていましたが、その声に押されてしまったんでしょうか。まぁ進退は本人が決めること。とやかく言うべきことじゃないですね。
だいたい、横綱というのはなるだけでも大変なことなんですから、あんまり外野が口を出すべきではないと思うんですが(ヨコシンも含めてね)
今後は鶴竜親方として後進の指導にあたるので、いい弟子を育ててくださいね。
さて夏場所ですが、膝の手術をした横綱・白鵬はどうやら休場するようです。そうなると、土俵の中心は4大関になります。考えてみると、今回の4大関は全員が20代。活きのいい大関陣で土俵を盛り上げていただきましょう。
いやそれよりも、夏場所も無事に開催されることを、何よりも期待します。
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