外出自粛映画野郎「暗殺・サンディエゴの熱い日」
1972年の傑作TVムービーである「暗殺・サンディエゴの熱い日」については、ずいぶん以前に「未発売映画劇場」で紹介したことがあります。
その後も国内版発売などの動きはなさそうなので、手持ちのアメリカ製DVDでひさしぶりに観てみました(リージョン1)
以前に観たときには、観られること自体が貴重だったので感動しましたが、今回見直してみたら、画質が悪いソフトですね。
1972年のテレビ用ですから、とうぜんブラウン管サイズ。ワイドサイズのテレビで再生すると、不自然に横長に引き延ばされるか、左右カットになります。いまの感覚では、なんか見づらいな。まあ観られればいいんだけど。
それよりも画質の荒さが気になります。この時代だから、たぶんフィルムはは16ミリ。デジタルリマスターなどされていないので、ややシャープネスに欠けていてモヤモヤします。
アメリカではブルーレイも出たようですが、さあ画質はどうなっているんでしょうか。
とはいえ、面白さがそうした欠点を追い隠します。
これが監督デビュー作のマイクル・クライトンの演出は、とてもデビュー作とは思えません。それどころか、彼はこれまでに助監督などの修行を積んだわけではないのに、この出来栄え。天賦の才能というやつでしょうか。
だとしたら、彼が監督デビューに先立って、『アンドロメダ病原体』や『緊急の場合は』などのベストセラー作家となっていたことは、映画界にとっては不幸だったのかもしれません。小説を書くのに割いたエネルギーを映画に注ぎこんでいたら、ひょっとしたら途方もない傑作を作ったかも。
ま、彼は素晴らしい小説(この映画の原作を含む)をたくさん書いてくれたので、私たちにとっての収支はプラスだったんでしょうね。
この映画の原作『サン・ディエゴの十二時間』はこちら。
前回はキャストにあまり触れなかったので、紹介しておきましょう。
主役の捜査官(国務省所属らしい)を演じるのは、ベン・ギャザラ。
若い映画ファンはご存知ないだろうが、映画とテレビの双方でけっこう主演クラスの出演が多い人。ただし、いかにも地味なのでこれといった代表作を挙げにくいですね。「ビッグ・ボス」とか「シシリアン・コネクション」とか「華麗なる相続人」とか、いかにもB級っぽい。「レマゲン鉄橋」(1969年)の軍曹役が比較的有名かな。こんな顔です。
ね、地味でしょ。じつはこの「暗殺・サンディエゴの熱い日」こそが彼の代表作じゃないかと思うんですが。2012年に亡くなってます。
で、このギャザラ捜査官と丁々発止の頭脳戦をくりひろげる極右の大富豪を演じるのがE・G・マーシャル。「レマゲン鉄橋」でもギャザラ氏と共演してますね。
こちらは知名度もあり顔も売れています。
名作「12人の怒れる男」(1954年)で陪審員4番(冷静な分析で有罪を主張するが眼鏡の一件で論破される)を演じたのが有名ですかね。なんといっても1960年代には大ヒットしたテレビの「弁護士プレストン」で主役のプレストンを演じてエミー賞を獲得したのが代表作。日本でもNHKで放送していたので、あの年代の人々には知名度があったようです。ただし私の年代では「スーパーマン2/冒険篇」(1981年)の大統領役とか、その翌年の「クリープショー」でゴキブリに負ける老人役のほうがポピュラーかも。
毒ガスの権威としてやってくる博士役のジョゼフ・ワイズマンは、いうまでもなくジェイムズ・ボンドの最初の敵役を演じた「007/ドクター・ノオ」(1962年)に尽きますね。ここでは彼の存在までもが暗殺計画に組み込まれているというサプライズが印象的です。
もうひとり、マーティン・シーンも登場します。いまでは、エミリオ・エステヴェス、チャーリー・シーンらの父ちゃんといったほうが有名なのかな。「地獄の黙示録」(1979年)の主演で一気に人気が出た人ですけど、この時代はまだ無名に近く、実際この映画でも大した役ではないです(けど微妙にカギになる人物)
この超・似てないイラスト(左下がシーンさん)を使ったジャケットは完全に誇大広告ですね。ここまで大きな役では全然ないです。ちなみにこれはアメリカで出ていたベータマックス版(!)ソフトのジャケットだそうです。
「暗殺・サンディエゴの熱い日」PURSUIT/1972年/監督・原作マイクル・クライトン/脚本ロバート・ドジアー/出演ベン・ギャザラ、E・G・マーシャル、ジョゼフ・ワイズマン、マーティン・シーンほか/73分
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