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未発売映画劇場「サント対極悪マフィア」

誰も注目していない「サント映画完全チェック」第27弾は「Santo contra la mafia del vicio」1971年の作品です。タイトルどおり犯罪組織との対決なので、ここのところ続いていたスーパーナチュラル系のものから久々に犯罪サスペンスに回帰ですね。

ウェスタン設定だった「サント対恐怖強盗団」や、国際スパイものの「サント対贋札偽造団」「サント対国際犯罪団」、番外編ともいえる「サント対暴走野郎カプリナ」はあったものの、まっこう犯罪者との対決となると第17弾の「サント対カルト集団」あたり以来になりますか。いや10作ぶりとはいっても3年ほどしか間はあいていませんが。

タイトルに「マフィア」とあるので、そうかあの「ゴッドファーザー」の大ヒットを受けてのものなのかと思ったけど、こちらは1971年7月のメキシコ公開。「ゴッドファーザー」は1972年3月にアメリカ公開、メキシコでは同年10月の公開だから、「ゴッドファーザー」より前ということになりますね。さすがはサントだ。

と、感心したいところですが、どうもこのあたりの製作や公開の順番はビミョーな感じ。

本欄ではいちおうインターネット・ムービー・データベース(IMDB)に掲載されているメキシコでの公開順にしたがっているのですが、これが正しいかどうかは保証の限りではないのです。この作品も資料によっては1970年の作品としているものがあります(この後の作品では、この傾向がさらに強まります)

まあ順番にさほどの意味があるものではないので、いままで通りに進めちゃいますけど。

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メインタイトル前に、いきなりミュージックビデオのようなノリで明るいポップス曲をリゾート地の海岸で熱唱する歌手が登場。

世界的にミュージックビデオが流行るのはまだずっと後の時代のはずなので、先駆的といえば先駆的なのかな。

この歌手はジミー・サンティ(Jimmy Santy)という本職の歌手で、ペルー出身。1960年代から70年代にかけて中南米で数多くのヒット曲を出している大物なんです。知らんけど。

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これが大物歌手ジミー・サンティ

ストーリーにはほとんど絡みませんが、冒頭のミュージックビデオの後にも登場して数曲のナンバーをご披露くださいます。ゲスト出演なんですかね。なんとなく日本の布施明に似ている気がしました。

ちなみにミュージックビデオのシーンに友情出演(?)しているサントの雄姿がこちら。

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3人の水着美女の横で、手持ち無沙汰にしているばかりです(笑)

このシーンの撮影場所は、カリフォルニアのマリブ海岸らしく、この高級リゾート地が映画の冒頭とラストの舞台。豪華海外ロケだったのか。

メキシコで麻薬取引に絡む犯罪組織の暗躍がつづき、警察首脳はマリブ海岸で休暇を楽しむサントに緊急指令を飛ばします。サントは、人気レスラーと腕利きの秘密捜査官を兼業しているのですが、どういうわけか彼が秘密捜査官だということは有名らしく、すぐにマフィア側もサント対策を練っています。ちっとも秘密じゃないじゃん。ま、それもいつものサント映画っぽい。

で、先手を打ったマフィア側は、いつものように任務の前のひと試合を終えたサントをプロレス会場のドレッシングルームに襲撃して拉致します。会場警備、どうなってるんだよ。

マフィアの狙いは、サントになりすました部下を警察に潜入させて情報を探ろうというもの。でもご丁寧に、失神している(と思わせている)サントの前でその計略を部下に説明。その場で部下の一人(体格がサントと同じくらい)に偽サントへの変身を命じます。部下がサントのものと同じ白覆面を着用すると「いいか、おまえはこれからサントになり切るんだ、常にその覆面をつけていろ」みたいなことを言い渡します。

で、その計略を知ったサント(本物)は、隙を衝いて偽サントをKOし、自らが偽サントになりすますのです。

つまり警察に潜入する偽サントに化けた真サントが、逆にマフィアへの潜入するという図式。ややこしい。

そのうえ、マフィアが誘拐してきた他の人質を傷つけぬようアジト内で暗躍するサントは、その白覆面の上から黒い頭巾をかぶって正体を隠すのです。いやいや覆面だけ細工しても、服はいつも同じなんだからバレそうなものだけど。このへんのチープさも、いつものサント映画っぽい。

かくして、あまりにも正体があからさまな潜入捜査官としてのサントの活躍がメインストーリー。

そこに、大金持ちの伯父から身代金を奪うためマフィアに誘拐される女性、その友人だというだけでマフィアに狙われるダンサー、そのダンサーと恋に落ちるインターポールの捜査官、サントと同様にマフィアに潜入したセクシー美女などなどがテキトーに絡んで、明るく楽しい犯罪ドラマが展開します。けっこう盛りだくさん。

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さらっと「マフィア」なんて書きましたが、べつにイタリア系の犯罪組織だとかいう描写はありません。いちおうアメリカの犯罪組織の援助を受けるっぽい話はありますが、いままでサントが戦ったメキシコのギャングとさほど変わりませんね。

前記したように、サントの試合シーンもあるのですが、正体不明の黒覆面レスラーとの試合なのでプロレス的興味はあまり湧きません。あれ、正体は誰だったんだろうか?

というのも、こういう時にいつもサントの相手をする、プロレスラーで俳優で脚本も書くサントの盟友フェルナンド・オセスは、今回はマフィア側の重鎮として出演。サントとはリング上でなく派手なバトルを展開しているからです。うんけっこう悪党面だから、ギャング役は似合ってるぞ。

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そもそもサントを映画界に誘いこんだ、このオセス氏、サント映画にはほぼレギュラー出演しているのですが、この作品だけでなく32作もの脚本もあり、また監督作品まであります。プロデューサー作品もけっこうあり、じつはメキシコ・エンタメ界の大物

映画ではサントより先輩だけど、サントより5歳年下の1922年生まれ。サント映画だけではなくブルー・デモンの映画などにも多く登場し、サントの没後も映画界で活躍しました。1999年に没。

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じつはこのオセス氏こそがメキシコのルチャ映画史のキーパーソンの一人なんですが、いっぽうでプロレスラーとしての活動はよくわからない。

そもそも初代のルチャドール=スーパーヒーローだったラ・ソンブラとか、かの暴風仮面ウラカン・ラミレスに扮したこともあるらしいのだが、レスラーとしてどの程度の実績があったんだろうか?

映画人としての側面もふくめて、もっと調べてみようかな。ヒマがあったらね(笑)

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ということで、70年代の作品に突入してもペースが変わらぬサント映画、首を長くして次回作を待て

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