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メンバーインタビュー:米田光晴さん ただ生きるんじゃない。美しく生きるということ

NPO法人ハイテンション
NPO法人ハイテンション設立時からのメンバー、米田光晴さんにお話を伺いました。

10年前 何もないところからスタートだった。

雨野:米田さんはハイテンションにはいつごろ来られたのですか?

米田:今から10年前の4月に来たんだけどね。

雨野:設立当初からということですね!

米田:そうそう。できたばっかりだったから、みんな慣れていないし、何にもなくて大変だったよ。前にいたグループホームの理事長さんがここのことを知っていて、その紹介できました。グループホームには52歳から住むようになって、始めはそこから通っていました。グループホームの前には、16歳から33年間、(入所)施設で暮らしていました。


70歳、はじめての一人暮らし きっかけは「ワンダフル世界」

▲2018年開催 Imagine2020 at サンダースネイク厚木 Photo by Hitoshi Obata

雨野:米田さんは昨年(2020年)から一人暮らしを始めたんですよね。

米田:そう!2月19日は一人暮らし記念なの。独立一周年。

雨野:おお!!おめでとうございます!!いつごろから一人暮らしをしたいなと思っていたのですか?

米田:そう、それが大事なんだよ。一人暮らしをしたいと思ったきっかけは、「ワンダフル世界」。


▲ワンダフル世界 〜サルサガムテープと全国の仲間~
相模原障害者施設殺傷事件やその後の報道を受け、北海道から九州までのバンドやダンスチームなど15団体が参加して一人ひとりがビデオで堂々と「生きる喜び」を表そうと撮影した、サルサガムテープオリジナル曲「ワンダフル世界」のミュージックビデオ。


米田:ワンダフル世界の中で「幸せになるため 生まれてきたんだ 生きていることが大好きなのさ」という歌詞がある。それで思ったのは、「どんな人でも生きられる」っていうのは、ほんとは僕は、腹も立つわけ。もうちょっとやれってね。

雨野:それは誰に対して?

米田:自分自身についても、みんなに対してもね。もっとできるんじゃないかと思う時がある、という意味でね。「どんな人でも生きられる世界」というけれど、ただ生きるんじゃなくて、お金の面や暮らし方はどうなんだという思いがある。それで、もっと自分らしい暮らしをしたいと考えた時、一人暮らしをしたいと思ったんだよね。


▲ハイテンション近くの桜並木にて MV撮影の様子

雨野:ワンダフル世界が、ただ生きるだけじゃなく、どう生きたいかを考えるきっかけになったのですね。一人暮らしを実現するまでは、いろいろ大変だったと聞いています。

米田:まぁ、いろいろ辛いこともあったけどね。字が読めない、計算ができないという面では本当に辛い思いもしたけれど、周りの人たちが応援してくれたから。でも、お金の計算もできるようにならないと言われたけど、今は自分で買い物に行くようになって、できるようになったんだよ。子どもに自分でやらせない親が多いけれど、なんでも自分でやらせてみることが大事だよ。

雨野:私もそうですが、子どもに対してついついこちらでやってしまうことってあります。子どもが経験する機会を大事にしないとなぁ、と思いました。


できないことがあっても、堂々と生きればいい

▲ガムテープだいこを力強く打ち鳴らす米田さん

米田:一人暮らしをしていて、この間みたいに地震が起きたり、財布を落としてしまったり、いろんな経験の中で、「どんな人でも生きられるんだ」っていう甘い考えじゃダメだって、反省させられた部分もある。だからと言ってマイナスに考えるんじゃなく、堂々と生きればいいんだ。

うちのスタッフでも、「病気を持っているけどそれは隠さずにやるんだ」って言っている人がいるよね。この人がこういう病気を持っているからとか、こういうことができないからだめだって決めつけるんじゃなくて、「それでも俺は生きていくよ」って言えた方が美しいと思うんだ。

雨野:「美しい」って、すごく素敵な表現。ほんと米田さんいいこと言いますよね。

米田:まあね。


米田:僕らは医者じゃないから、障害は直せないけれど、その中で何が一番楽しめるかという部分を見出して行きたいと思った。特にここ2,3年、俺はここのやり方が楽しくなってきたよ。言ったことが理解されるようになってきたと感じている。僕が「こうしたい」と言ったことをやらせてもらえるから。

雨野:帰りの会の司会も、米田さんが進んで担当されてると聞きました。

米田:そうだね、そのこともそうだし、他にもかなりいろいろやっちゃってるんだけど、他のところ(事業所や施設)だったら「何勝手なことやってるの」って言われるかもしれない。そのくらい、かなり好きなことをやらせてもらってる。例えば、この看板作ったりね。ここでの自分の活動に、生きがいを感じてるよ。人生今が最高だって思ってる。

▲コロナが明けたらライブ活動で使いたい、と米田さんが発案し、製作をすすめている看板

雨野:今が最高って、本当に理想です。そういう71歳になりたいなぁ。

米田:でも、こうなるまでにはかなり、かしわさんとも、スタッフともやりあったね。意見がぶつかったこともあった。俺は言いたいことをバッというでしょ?でもそれがうけたんだよね。カチンとくることもいうけど、それが面白いって言われるんだよ。とにかく、俺は常に「これで終わりじゃない」と思っているからさ。プライドが高いんだよ、俺は。


「これで終わりたくない」心の強さはどこから?


雨野:今の世の中、やりたいことを諦めてしまう人もいると思うんですが、米田さんの、その折れない心というか。心の強さはどこから来てるんだろう?

米田:「これで終わりたくない」というのは、常に自分でいろんなことをやっていると、それが成功することがやりがいになるから。マイナスな部分が自分にあっても、周りが助けてくれることが多いのも、一番力になっているね。

雨野:自分がやりたいと思った時に、周りの人が助けてくれることが米田さんにとって力になっている?

米田:そうだね。「これで終わりじゃない」と自分に言い聞かせてきたし、いろんなことを周りの人が助けてくれることが力になっている。

▲代表かしわと一緒にハイテンションニュースの内容を読み上げながら共有


米田:それと、ロックのおがけというのもあるかな。音を一発どん、と鳴らすでしょ。そうするとこの一音がインクをこぼしたときのようにサーッと広がっていく。その広がりに、スタッフとか利用者とか、性別とか年齢とか関係ない。だから、たいこを叩くごとに、それが人生を豊かにしてくれる気がするんだよね。

▲MERRY SMILE. SHIBUYA 2020 ステージ出演の様子


大切なのは、理解することじゃない。

雨野:今、自分がダメだと思っている人、死にたいと思うくらい悩んでいる人もいると思います。そういう人は、どうしたら米田さんみたいに思えるのかな。

米田:そういう雰囲気にもっていくようにする。「この子はこういう子だ」と決めつけて、そのような対応をしちゃいかん。「この人は大変だー」って周りの人が言って、それに何のメリットがある?そうじゃなくて、その人が生きていて楽しかったと思えるような支援をしていかなきゃいけないんだよ。

雨野:そういう支援をしていくために大事なことってどんなことでしょう。

米田:大事なのは偏見で見ないこと。「私はスタッフで来ている」っていう頭を持たないこと。この人たちと暮らすのが楽しいんだっていう気持ち。周りの人がその人がいることが楽しいと感じることが大事。

雨野:助けてあげようとか、手伝ってあげようとかより、楽しいという気持ちが大事?

米田:そうだね。それを一番大事にしてほしい。そして、「どんな人でも生きれる」だけじゃなく、その人自身が生きていて楽しかったと思えること。一緒にみんなが笑って過ごせるようにしていくこと。生まれた限り、みんなが笑って過ごせるようになることが大事。そのためには、役割や肩書じゃなく、ひとりの人間として同じようにその人を見るってこと。でなきゃ、何のためにいる?


雨野:人と人とが関わる場所だから。

米田:そう。人と人とのふれあいで何が大事かはその人のことを理解することじゃないんだよ。

雨野:そうなんですか。

米田:そう。一緒になって笑って一緒になってお手てがつなげる人かどうか。 

雨野:なんで米田さん、そんないい話どんどん出てくるんですか。感動しちゃいました。ホントだね。それって福祉だけじゃなくて、子育てにも教育にも通じることだなって思いました。

米田:そう、私=「パパ」「ママ」じゃないんだよね。


一人暮らしの責任の重さ それでも続ける理由は?

▲NHK製作 アイタイ!MVより
https://www.youtube.com/watch?v=3C1U8-eal7I

雨野:一人暮らしを始めて1年、今一番感じているのはどんなことですか?

米田:一人暮らしとグループホーム違うのは、責任だということ。自分でも良く持ったなと思う。ハイテンションがあるからできたんだっていうのももちろんある。だけど、それだけじゃないっていうことを、僕はこの一年間学ばせてもらった。いろんなことに対して、自分で解決できるように工夫することができた。 

雨野:どんなことがありましたか?

米田:ひとつは、人が笑うかもしれないけれど、財布をなくしたときに今度はなくさないように鎖を付けるとか。自分も考えるし、周りの人も一緒に考えてくれた。そういう手近なこと。そういうのが大事だと思ってる。そういう、そそうもしてしまうけど、どうやって改善していったらいいかを考えること。それをこの一年間教えてもらいました。

雨野:米田さんは、責任が重くなっても、一人暮らしの方がいい?

米田:そう、そこなんだけどね。僕が感じてるのは、サポートしてもらいながらでも、自分の生活は自分で少しずつ切り開いて来られたということ。それが喜びですね。やりがいがある。

雨野:大変さがあるからこそ、やりがいもあるということなんですね。

米田;そう。だからいろんなことができると、つい有頂天になる。だけどそこをおさえながら、これからもやっていくことで学びたいと思います。僕は地域で暮らして、地域で死んでいきたい。

雨野:最後にまた、名言をいただきました。これまでの人生の重みのようなものを感じます。

米田さん、今日は本当にありがとうございました!


語り手 米田光晴(よねだ みつはる)プロフィール
 1949年 東京都出身、神奈川県厚木市在住。
 文字の読み書きや計算に困難さがあり、養護学校中東部卒業後、16歳から35年間入所施設で過ごす。その後52歳でグループホームに入所。
 2002年より福祉事業所などから依頼を受け、障害者の生きる権利についての講演活動を開始。2011年よりNPO法人ハイテンションのバンド「サルサガムテープ」のメンバーとなる。
 2020年2月、新たな挑戦として70歳で初めての一人暮らしを開始。現在はハイテンションへ通いながら、音楽・アート・講演と、精力的に活動を続けている。

インタビュアー 雨野千晴


🎵サルサガムテープ DISC購入は
ハイテンションまでお問い合わせください

https://salsagumtape.tumblr.com/disc

 
🎵アルバム「ワンダフル世界」は
音楽配信サイトからご購入いただけます

https://music.dmkt-sp.jp/album/A2001700719

🎵米田さんへのご講演依頼などは
NPO法人ハイテンションまで

http://hitension.org/

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