できそこないのエピタフ

「はい、皆さんお早うございまゴふゥ――ッ!?」

力自慢の山田が金属バットで担任の頭を叩き潰し、2年4組の朝はいつも通り始まった。

日直の前田が無言で席を立ち、感情の死んだ目で教室を見渡す。あちこちに目立つ空席、その一つに視線が止まる。

「……木下がいません」

教室内の反応は薄かった。最近の木下は明らかに様子が変だった。次に脱落するのはあいつだとみんな薄々思っていた。

「今日何するゥ?」

お調子者の高野が喚いた。担任が撲殺されたので今は自習時間だ。2限終わりの時間までこの惨状は外の誰にも気付かれない。それまで今日1日の予定を話し合うのが、いつの間にか定まっていた僕らのルーチンだった。

「殺人はもう飽きたよ」
「しりとりやらない?1周回って」
「1周どころか1万周してるだろ。てか1万回やった」
「言いすぎ。1000回くらいでしょ」

5110回目の9月1日の朝。
相変わらずみんなの会話に入れなくて、僕はあくびをした。

(つづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?