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陰陽術鬼!③



なんだ……?あれは。

目で確認してから脳で結論付けるまでの連携回路の通過にやけに長い時間を要する。


化け物だ!!

人の子供くらいのサイズだが、胴体から首が長く2メートル近くはある。

腹は膨れて、手のひらには3つしか指がなく、鉤のような長い爪が剥いている。

化け物は跳び跳ねるようにこちらに向かってくる。


俺は翻って来た道を逃げようとした。

化け物は跳ねながら浮かぶような速さですぐ目先まで来ていた。


ギャッ!


背中に乗られてしまい後頭部を引っかかれる。


いってぇ!!このっ!!



流石にカッと血の気が頭に上り、俺は化け物を捕まえてみようと試みる。

グワッ!!

掴みかかろうとした瞬間返り討ちにされ肩を思い切り引っかかれた。


熱い激痛が走る。


駄目だ……これ。逃げよう!


全力を解放して逃げるも逃げられない。

足を捉えられて転ばされてしまった。

大きな石に頭をしこたまぶつける。


転倒しながら痛みに身悶える。

「いってぇぇぇぇぇ~!!」

もうどこが痛いんだかわからないほど、ごく短時間で痛め付けるプロにボロボロにされた気分だ。





その時だった。



「釈迦秘術!#金棺飛遊__きんかんひゆう__#!」



力のこもった高らかな一声が公園を響き渡った。

地面が爆発するような音を次々に立て、地を割っていくつもの小型の棺のような形をした物体が筍のように現れてきた。



それらは地面から浮いて魔物を狙って八方からぶつかっていく。

「ウギャギャギャーーーッ」

この世の者とは思えない断末魔を挙げ、魔物はどろどろに溶けて消滅した。

「大丈夫か!?」


そこにいたのは渉流だった。

「わ、わたる……」

辺りは一気にシーンと静まりかえった。
助けてくれた幼馴染みは俺に駆け寄ると両腕で抱き起こしてくれる。

「夢を見たんだ。じいさんの夢だ。胸騒ぎがして外に出るとお前の悲鳴のような念が心に入ってきた」


なんと……。それじゃあ、あの夢はやっぱり、意味があるのか……。


そのまま俺は気絶をした。















気がついたら朝の光が眩しかった。
そして家じゃ無かった。
ベッドではなく質の良さそうな布団に寝かされていた。


目覚めた場所は、高い高い和式の天井、お堂のようなだだ広い吹き抜けた室内。真横には広い日本庭、窓はなく襖が開け放され空間が全解放されていて、外の風がそのまま俺の体の上を通り抜ける。そしてかすかに漂うこの香の匂い……。お寺だ、ここ。


「起きましたか」

一人のお坊さんが立っていた。
かなりの落ち着いた年齢で、俺の父とそんな変わらなそうだ。頭髪は勿論無い。

「ここは最清寺です。私はここの住職、#金龍__こんりゅう__#です」


最清寺!


「あなたは昨日、渉流君に担がれてここにやって来たんですよ」


「渉流が……」

名前に呼ばれたかのようにして本人が現れた。

「起きたか」


渉流が襖を開けて入ってきた。

「定児の親には俺から連絡した。ここに連れて来たのにはワケがある」

一呼吸置いて、渉流は俺に向かい放った。

「お前は、狙われている。昨夜の者にだ」



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