渓谷のタカハギ_完成イラスト

1、目覚まし時計としての協力隊

この記事では、地域おこし協力隊の1つの役割と、実際に試行錯誤した方の事例をご紹介していきます。

地域おこし協力隊は、構造的な課題をいくつか抱えています。そのうちの1つが、地域や行政との関係でしょう。

あえて極端に単純化すれば、関係者は次の3者です。

◆協力隊員
◆地域住民
◆行政担当

このうち、3者とも「地域再生」に熱量が高く、何でも協力し合ってお互いの立場を尊重するのであれば、もちろんすぐに成果は出なくても、前向きに進んでいけるでしょう。これが理想です。

しかし、そのようなケースは、残念ながらレアケースです。2×2×2なので、〇と×の2つに分けると、次の8通りが考えられます。

◆協力隊員 〇 × 〇 〇 × 〇 × ×
◆地域住民 〇 〇 × 〇 × × 〇 ×
◆行政担当 〇 〇 〇 × 〇 × × ×

※3者とも〇…理想
※どれか1者が×…うまくいかない
※どれか1者だけ〇…空回り
※3者とも×…うまくいくはずがない

特に悲しいのが、地域おこし協力隊員は〇なのに、地域住民や行政担当は×で、隊員が孤軍奮闘するケース。以下の事例は、以前の記事でも紹介しました↓。

もちろん、地域住民や行政担当は〇なのに、隊員が×というケースもありえます。地域や行政が望んでいたことを、隊員が果たしてくれない。意欲や実力の問題もありますが、隊員であれば何でもできると、周囲が期待しすぎるケースもあります。

3者とも×であれば、これは悲惨を通り越して滑稽です。誰も望んでいないのに、ただ国の制度を利用しただけ。地域住民は保守的、行政は隊員登用の実績のアリバイ作り、隊員はとりあえずの応募で、何か面白いことがあればそれでいい。これでは意味がありません。

もちろんこれは、極端に〇か×かの仮定であり、実際には◎もあれば△もあるでしょう。しかも、時間がたつにつれて変化していく場合もあります。つまり、最初はやる気十分で◎だったのに、×になっていくケース。その逆で、だんだんやる気が出て×から◎になるケース。テーマによっても違うでしょう。最初は受け入れられなくて×だったのが、あるテーマを取り上げて活動したら、みんな◎になっていった、など。

ただ、いずれにせよ、3者がどこかの点で合致しないと、地域おこし協力隊がうまく活用できたとは言えない、ということです。行政を無視して隊員と地域住民だけで盛り上がっても、半公務員という構造的にNGの場合がある。逆に、行政と隊員だけ盛り上がり、地域住民には響かない場合がある。地域住民だけが盛り上がっていたら? この場合は、あえて地域おこし協力隊という制度を使わなくても、民間だけで良いのでは?となります。

「地域再生」「地域おこし」が真の目的であれば、民間だけで最初から試行錯誤したほうが良いのではないか?そうかもしれません。

しかし逆説的になりますが、そう思われるのも、地域おこし協力隊という半公務員の制度が始まり、さまざまな活動をして、その成功も失敗も表に出てきたから、そのような反応が生まれやすくなるだと思います。

つまり、色々な意味で「寝ていた」地域にカンフル剤を与えて「起こす」、目覚まし時計のような役割を担っているのではないか。ただ目覚まし時計は、目覚めた後は「うるさいなあ」と思われて止められます。そうなったら、目覚まし時計としての役割は終わりです。その後は、自分自身が「目覚めて」活動するのです。

2、事例とコメントが錯綜する

具体的な事例を挙げます。

2017年3月23日に投稿されたブログ記事です。

「熊野野菜」というブログ内の記事で、投稿された管理者さんは、和歌山県内の地域おこし協力隊として2016年10月に着任され、2017年3月に退任されています。

これは、もうぜひ実際に読んで頂ければと思います。特に、地域おこし協力隊を志望される方、地域おこし協力隊を募集される行政担当の方は、必読の記事であるように思います。

記事だけでなく、コメント欄にも100件を超えるコメントが書かれています。隊員側だけではなく、行政側、地域住民側の方のコメントもあります。賛否両論あります。

物事は、1つの視点だけで理解できるものではありません。たくさんの視点があります。裁判所で被告・原告・裁判官の3者の視点からそれぞれ意見を述べさせるのも、物事の真実に迫るためです。

ただし、地域再生は裁判ではありません。極論すると、3者がより良い方向に向かうのであれば、他の地域の視点から見れば「あれ?」と思うことを実施する場合もあります。「稼ぐ」を目的にするのか、「ブランド」を作るのか、「ただ単に無事平穏に暮らす」のを目的にするのか、それによっても異なります。そもそも地域の事情は千差万別です。

また、当然の事でありますが、地域住民や行政担当は、一枚岩ではありません。おじいちゃんおばあちゃんたちはフォローしてくれるのに、ある民間業者は妨害しようとするとか、行政の実際の担当者は親身なのに、上司や首長は保守的で頑固だ、などの事例はたくさんあります。もちろん、協力隊員が場当たり的な活動や独りよがりの独断的な活動をしてしまい、混乱を生じさせる場合もあります。

こういうことを考えるにあたり、この記事はさまざまな思考材料を読者に与えてくれます。このように文字化してネット上で公開してくれることにより、私たちは光だけでなく闇をも直視することができます。

3、地域と人生はその後も続く

なお、管理者さんは、2017年9月1日に、続編として以下の記事を投稿されています↓。

2019年夏現在も、積極的に活動されています↓。

ぜひ、ブログもご覧ください! 野菜やカフェメニュー、美味しそうです。

地域おこし協力隊の退任後も、地域は続いていきますし、隊員の方の人生も続いていきます。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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