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暑さ寒さも彼岸まで!とよく言われます。

この「彼岸」とはもともとは
「波羅蜜」という言葉だったそうです。
はらみつ。パーラミー。パーラミター。

「ぼたもちやおはぎは甘いから、蜜?」

いえ、違います。

「…般若心経の最初にある、
『観自在菩薩行深般若波羅蜜多時…』
の一つでしょうか?
そう言えば、京都にも『六波羅蜜寺』
というお寺がありますよね!」

ありますねえ。
「波羅蜜」とはサンスクリット語でパーラム。
これが中国で漢訳されて「波羅蜜」。
『仏様になるために菩薩が行う修行』です。

有名な般若心経は、
「自由自在の菩薩様(観音様)が
深い知恵のための修行を行っていた時に…」
という語句から始まります。
六波羅蜜寺、とは『六つの波羅蜜』
六種類の修行のお寺、という意味。

仏教においては、
「此岸」(しがん)と「彼岸」(ひがん)
という世界観があります。
此岸とは、私たちが住んでいる現世。この世。
彼岸は、大きな川を隔てた向こう側。あの世。
彼岸は煩悩や悩みがなく無事に暮らせる世界。

すなわちこの世の「悩み」多き世界、
此岸から彼岸への「修行」をすることで
あの世につながる「悟り」を開くことが
仏教の教えの一つ、でもある。

波羅蜜とはそのための修行、到彼岸の意味!

「はあ、そうですか。
じゃあ、なぜその『彼岸』が
季節の『春分』や『秋分』なんですか?」

夜と昼とが同じ時間、並行になる日に、
彼岸(極楽浄土)に想いを
馳せたことから来ている
と言われます。
この日、太陽は「真西」に沈む。
極楽浄土は「西方」にあるとされていた。
ゆえに、真西に沈む太陽を拝みながら
「西方浄土」に行けるように願った…。

ただこれは、日本独特の風習のようです。
太陽信仰の「日の願い」が「日願」となり、
仏教語の「彼岸」と結びついて
季節の名として定着した…という説もある。

本記事ではこの「彼岸」をはじめ、
日本の各季節や旧暦について書いてみます。

昔の人は一年を分けて認識するために、
「節気」というものを考え出しました。
いわゆる、四季や気候。
地球上の一年を「仕分け」する方法です。

(ただしこれは、東アジアでのお話。
四季がない地方では節気も何もない)

中国では戦国時代の頃に成立したそうです。

◆「春分」:昼と夜が同じ日
◆「夏至」:一番昼が長い日
◆「秋分」:昼と夜が同じ日
◆「冬至」:一番夜が長い日

この「二至」と「二分」を基準に、その間に
「立春」「立夏」「立秋」「立冬」という
「四立」(しりゅう)をつくる。
四と四で八、いわゆる『八節』です。

さらにこの間に、二つずつ節気をつくる。
例えば「冬至」の後に
「小寒」と「大寒」を経て「立春」になる。
十六増えるから『二十四節気』となります。

「…まあ、わかりやすいですよね。
春夏秋冬、熱いや寒いの季節を四つに分け、
太陽の昼と夜の長さでそれを分ける、と。
あれ? でも、東アジアのほうって
月が基準の『太陰暦』ではなかったですか?」

そうなんです。
昼と夜の長さは『太陽』基準。
でも暦は『月』を基準としている…。

現在、私たちが使っている暦は
西洋由来の「太陽暦」「西暦」です。
ほぼ四年に一回「うるう年」を作り、
ずれを調整している。一年は原則365日。

しかし昔の「旧暦」は太陰暦でした。

月の満ち欠けは約29.5日で一周しますから、
29.5日×12か月=約354日。
太陰暦「だけ」だと、11日ずつずれます。
ゆえに太陰暦では「うるう月」と言って
1年が13か月の年をつくって調整していた。

…それでも、ずれるんですね。

ちょっとずつずれる。
暦と季節がずれていく…。
これは季節や暑さ寒さが重要な
農作業にとって非常に不便
なことでした。

だから昔の人は、
太陽が示す季節の分割法、「二十四節気」を
「月の暦」と組み合わせて、
うまく調整しながら生活をしていたんです。
これは『太陰太陽暦』と言われる。
日本で言う、いわゆる「旧暦」ですね!

つい忘れがちですが、昔は厳密な
「デジタル時計」や「電子カレンダー」はない。
アナログ世界です。だいたいのニュアンス。

「これって、覚えにくくないですか?
例えば、月の名前や、時間にしても…」

その通り。なので思い出しやすいように、
「十二」でイメージしやすいものを
割り振っていったんです。
「擬人化」ならぬ「擬動物化」で…。

「ど、動物? 十二の動物…。
と言えば、あっ、あれ?!」

あれです。そう、十二支です。

子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥。
最近では生まれ年や
年賀状くらいにしか出現しませんが、
昔は生活に密着していた。
月の名前、時間、方角などに当てはめている。

月に当てていくなら
子月、丑月、寅月…。これなら覚えやすい。
(注:旧暦の月の異称はいっぱいあります。
詳しくはコメント欄のリンクからぜひ)

時間にも当てました。
「日の出」と「日の入り」を基準にした。
昼と夜とをそれぞれ6等分、全部で12。
ですから、夏と冬とで時間は一定ではない。
「不定時法」と言います。

…もし厳密に現在風に十二支を当てはめるなら
0時の前後1時間が「子」、
午前1時から3時は「丑」(丑三つ時)、
午前3時から5時なら「寅」とあらわせます。

「昼の12時」の前後1時間は「午」。

ですから現在でも12時を『正午』として、
1日の時間を『午前』『午後』に分けて、
使っているんですね!

「色々と工夫してきたんですねえ。
でも、こういう『旧暦』を
明治時代に『新暦』にしたんですよね!
不具合は出なかったんですか?

…それが、けっこう出た。

例えば「七夕」。七月七日。
これは「旧暦」の七月七日です。
でも旧暦と新暦はずれていく。11日ほど。
まだ梅雨が明けない時期に
我々は星を見上げて
「今年の七夕は曇っているな…」と言う。

旧暦における七夕はほぼ「八月」です。
梅雨明けして天気が良い頃だった。
天の川がよく見えた。

「桃の節句」もそうです。三月三日。
旧暦における三月三日は、
現在で言えば三月下旬~四月頃。
桃の花はだいたい
三月下旬から四月に咲く花ですから、
新暦の三月三日には咲いていない…。

冒頭に書いた「彼岸」もそうです。
彼岸は春分・秋分を中日として
前後各3日を合わせた各七日間を指します。
「ぼたもち」や「おはぎ」を作る。
…彼岸の頃に「牡丹(ぼたん)」や
「萩(はぎ)」が咲いていたからです。


牡丹が咲くのは四月下旬~五月頃。
萩が咲くのは七月頃。ちょっとずれている。

「近代化」の中で行った「改暦」は、
長く「旧暦」で暮らしていた日本人に
違和感を与えました。
しかし、それでもうまくアレンジしながら
残すところはさりげなく残して
現在に至っている…
というところです。

最後にまとめます。

本記事では「彼岸」をきっかけに、
「二十四節気」や旧暦をまとめてみました。

暑さ寒さも彼岸まで(たぶん)。

読者の皆様も、お疲れの際には
「ぼたもち」や「おはぎ」を食べて、
悩みを発散しながら、頑張って下さい!

※『ずれと戦う改暦 ~ユリウス、グレゴリオ、伊藤~』

※『ふわとろだった太陰暦 ~ずれを包み込む~』

※旧暦における月の異称はいっぱいあります。
こちらの記事をご参考まで↓

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