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写真→スカルプト→3Dプリント

写真を参照元にZBrushとBlenderを使ってWW2ドイツ兵をスカルプト。それをPhrozen sonic mini 4Kを使って3Dプリントした結果をちょっと前にTwitterでアップしました。

思いのほか反応をいろいろと頂いたので、このフィギュアを造形した経緯について少し詳しく書いてみたいと思います。

元ネタ画像について

このフィギュアの元ネタとなっている画像は、去年(2020年)イタリアのイタレリ社がリリースした1/9スケールプラモのドイツ兵キットのボックス画像です。

画像1

画像をひと目見たときから「これ、良い!」と気に入りました。WW2当時の実際の兵士画像に着色したものではなく、このキットの製品化に伴いモデルに装備を着せてポーズを取らせたものでしょう。ネットで探すといくつか違うショットがあるので間違いないと思います。いわゆる「リエナクトメント」ですが、シワのよれ具合や着こなし、ポーズ、モデルの背格好など、WW2のドイツ兵の雰囲気をいい感じに出していると思います。

私は単純にこの雰囲気が気に入り、
「これを造形のリファレンスとして欲しい」
「なにより、手にして眺めてみたい」

と思いました。

がしかし。それは残念ながら叶わぬ願いでした。この製品のリリースが発表された時、私はてっきりこの画像のような3Dスキャンベースのフィギュアがイタレリから新規金型でリリースされるものと思っていました。

ところがリリースの内容を調べると、中身は1970年代にリリースされたESCIの1/9ドイツ兵の金型を使ったキットであることが分かりました。懐古趣味的には往年のESCIのキットが現代に蘇るのは嬉しい事ですが・・・新規金型を期待した私的にはちょっと(というか、かなり)残念でした。

それでも、この兵士の造形を手にとってみたい・リファレンスとして欲しい妄想が消えません。そこで、

「イタレリが出してくれないのなら、自分で作ればいい。」

と思い、自分でフルスクラッチで造形しました。

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造形し始めてからは楽しくて飯を食うのも忘れ没頭し、勢いに乗って完全にフロー状態で造形したので、かかった時間はよく分かりません。気がついたら完成していました。

参考にしたのは、箱絵の画像一枚のみです。完成した後になって、後ろからのショットがあることを知りました・・・orz。

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さて、3Dプリント

というわけで、これを3Dプリントするわけですが・・・

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このように、一発出力してみることにしました。理由は単純で、はやくこの造形を手にとってみたい、ということと、分割作業は時間がかかり面倒だからです。あと、Phrozen Sonic mini 4kの造形力を見たかった、というのもあります。これを一発で出せるのか?という実験も兼ねてるわけです。

出力結果は、このようになりました。↓

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一発出力成功。積層ピッチ0.05mmでこれくらい出せるのは素晴らしいです。Phrozen Sonic mini 4k。これまで光造形機はHunterを使ってきましたが、完全にPhrozenにメイン機移行決定です。

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上は、拡大画像です。近づくとさすがに積層痕が見えます。がしかし、これは0.05mmであり、一発出力です。分割してレイヤーや角度の設定を詰めていけばもっと精度は出せると思います。顔や胸のバッジなどの出力精度をみると、まだまだ行ける事が見て取れると思います。ちなみに使用レジンはPhrozen標準レジンの「Phrozen Aqua Gray 4k」です。

キット化はありませんが、今後のインスピレーション

今回の造形に関して、「キット化を!」というメッセージも頂いたりしました。大変光栄なご意見ですが、さすがに元ネタがイタレリキットのボックスアートなので著作権的にアウトでしょう。
そういう理由で、そもそも最初からキット化は考えていません。
シンプルに、自分の中から自然に湧き出てきた
「これ、めちゃくちゃ造形したい!」
という造形欲を形にして吐き出すのが目的でした。

キット化云々はまた別のものを別の機会に、という感じですが・・・今回、造形していく中でいろいろと発見がありました。また、将来的な作品のインスピレーションもちょっと湧きました。やはり、やってみてよかったと思います。

まとめ

というわけで、
・自分がリファレンスとして欲しい造形を自分で造形した
・新しく導入したPhrozen sonic mini 4kは素晴らしい

・「欲しい造形を自分で作る=私のやりたいこと」という事を再確認した
という話でした。

            *  *  *  *

追記と本音

1970年代に発売されていたESCIの1/9キットの金型は現在イタレリが所有していて、近年、次々に復刻版がリリースされています。↓


私はこのシリーズのファンで、BMW、Zundapp、ケッテンクラートはそれぞれ2つ購入して持っているくらいです。完成には至っていませんが、BMW、Zunadapp、ハーレーの3つは実際に組んでみました。

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この3つはスポークを真鍮線に置き換えたり形状が実車と異なっていたり省略されている部分をスクラッチしたりしてけっこうハードにディテールアップをしています。まぁ要するに、そのくらい好きになったシリーズ、ということです。

このESCIの1/9シリーズは「ビッグスケールの魅力」「ミリタリー模型のスケールは1/35だけじゃない」という選択肢を広げた素晴らしいコンセプトだと思っています。特にバイクなど小型車両は大きめのスケールのほうがその魅力を引き出せると思っています。他のメーカーに波及しなかったのが残念ですが、今でも世界中に根強いコアなファンがいるシリーズです。

私は、模型趣味にはある意味一種のタイムマシンのような側面もあると思っています。私がこういう古いキットを手に入れるのはノスタルジックな気持ちも含んだ昔のキットを愛でる気持ちが強いです。古いアルバムをめくるような感じです。箱を開けると、昔のキットが、昔の姿で入っているのです。そしてそこにはその時に得た自分の感覚も一緒にパッケージされています。私は模型以外にも趣味を沢山持ってきましたが、昔の体験をまったく同じように追体験出来るというのは他の趣味ではなかなか得られない感覚です。

ただ、そのいっぽうで、また別の感覚も湧いてくることもあります。

「あれ?昔手にしたように、ワクワクしない・・・」

という感覚です。

出戻った趣味を、なんとなく再びやめてしまう一番の理由はこれだと思います。それはなぜか。

「キットはあの頃のままの君なのに、自分が成長しているから」

です。あの頃キットを見た時のワクワク感は、「それが新しいものだったから」なはず。そう、

「ノスタルジックな気持ち」と「新しいものへのワクワク感」は違う

のです。そこは分けて捉えないと、「あの頃のワクワク感よもう一度と思ったのに・・」と、勘違いをしてしまうのです。

今回、このイタレリのキットに執拗に食いついて長々と書いているのは、

その「ノスタルジックな気持ち」と「ワクワク感」を一緒にかき混ぜられた気分になったから

です。最初から昔のパッケージ絵で「復刻版」として出たなら、最初からノスタルジックな気持ちで捉えるので、そういう感情は沸かなかったと思います。

そのモヤモヤした気持ちを吐き出して昇華させたい。ノスタルジックな気持ちとこのボックスアートでついワクワクしてしまった気持ちを、課題の分離ならぬ「気持ちの分離」したい気持ち。

その気持ちを、この造形にぶつけました。

というのが、この造形をした経緯の本音の部分の話でした。

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