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インドからの来訪者③


前回、インドの民族伝承テキスタイル研究家のマニート博士の初来日について書いた。8月下旬から9月上旬に、私のところへ南部菱刺しを見たり、ワークショップを受けたりしたいということで八戸に来たのだった。
 初日は五戸町立公民館に保管されてある100年ほど前に作られた菱刺し前掛け2点を見るためにお連れした。

その後1週間、平日は毎日9時半から菱刺しについて話したり、実技をした。マニート博士が持参したインドのトゥルーシー茶をいただきながら。
お昼はその時期あった茹でたとうもろこしや芋、炒め野菜にスパイス、おにぎりなどカンタンではあるがなるべく自然なものを食べた。

インドでは美味しい料理を作れる人は良い刺繍家!といことわざもあるとお礼を言われた。嬉しかった。

そういう堅苦しくない日常の延長のように過ごした日々はとても楽しく今思うと愛おしい。

そしてある日マニート博士は私の菱刺し作品を見て、「カラフルで優しい色合い」というので、私は身近な草木で糸を染めている事、これは茜で、これはマリーゴールドからという説明をした。
すると、それは本当に簡単に採取できるのか?私、そうだよ、その辺にたくさんあるよ!
マニート博士、じゃあ採りに行こう!
レッツゴー!内心ドキドキした。
見つからなかったらどうしよう…
しかし、5分程歩くと茜のつるが見えた!
「マダー」茜
ホッとした。
インドでも代表的な染料で葉やツルは緑だが、根が赤いのでアカネという説もある。茜には止血などの薬効があるとか。
その他にもよく見るとドクダミを発見、十薬と言われハーブティーとして飲んだり天ぷらも美味しいインドも同じと話していたら、同席していた中国ルーツのアメリカンガールは両親は体調悪い時にそのまま食べていた!と教えてくれた。
We are asian!
私達はアジアという仲間だね〜
大事なものは一緒、同じだねとすごく感動した。

カラフルな色合いや虹色をダイバーシティ(多様性を意味する。集団において年齢、性別、人種、宗教、趣味嗜好などさまざまな属性の人が集まった状態のこと)と表現するが、今まさにそれだと思った瞬間だった。

この時はもう一人千葉大学院生が論文のために一緒だった。ある日はその子を八戸市外から送迎してくれる80代の農家のお爺ちゃんも引き入れて一緒にお茶を飲みながら、戦前のお米が食べられなかった時代の話しを聞いたりした。


八戸最後の夜はゲストハウスケンクミオーナーがお別れパーティーを開いてくれた。リモートでマニート博士の両親と叔母様も参加。大きいテレビ画面に映り、ゲストハウスの方々のハイテクさにもビックリした。
これからは田舎にいても世代や国籍や宗教を超えて楽しんでいける。そして青森、八戸をアピールしていけるのだ。
人との出会い、知らなかった事を知る事はこんなにも楽しく心踊ることを教えてくれたマニート博士に感謝したい。

やまだ・ともこ=南部菱刺し作家、青森県伝統工芸士

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