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「名言との対話」12月31日。渥美和彦「創意、創作に燃えている人は、長生きする」

渥美 和彦(あつみ かずひこ、1928年9月25日 - 2019年12月31日)は、日本の医学者。

北野中学、三高、東大で、天才、秀才に出会う。中学からの友人の手塚治虫の『鉄腕アトム』のお茶の水博士のモデルは渥美だった。『手塚治虫漫画全集』400巻を残して手塚は60歳でガンで死去した。渥美の見立てでは、原因はストレスだった。ラグビー、ボートなどのスポーツでも活躍して、三高時代の石井威望、小松左京らとも親交が深いなど優れた友人に恵まれている。

渥美は医者となり心臓外科を専門にし、人工心臓、医学のコンピュータ化、レーザー光による手術を手がけた。医学と工学の境界の仕事が多かった。日本未来学会に参加し、東大の林雄二郎と京大の梅棹忠夫の議論を聴いている。大物経済人にも可愛がられ、本田宗一郎、松下幸之助、井深大などの仕事やライフワークを手伝っている。中村天風にも指導を受けている。

渥美はこういった広い人間関係で、民間療法、合氣道、呼吸法なども視野に置くようになっていく。そして統合医療の流れを先導していき、日本統合医療学会理事長をつとめた。

渥美和彦『統合医療がよくわかる老い方上手』(PHP研究所)で、医学の流れを説明してくれている。西洋医学は、部品構造学と呼ぶべきもので、部分のトラブル解消を主眼にしている。病気は悪との考えで原因の除去のため科学的手段を用いて治療を行う。東洋医学は体全体で健康を考えていく。本来持っている自然治癒力でバランスのよい状態へ戻すことが主眼だ。心身一如の考えで心身のバランスを整えることを大事にする。また代替医療という分野がでてきた。中国・インドの伝統的東洋医学、ハーブ、針きゅう、瞑想、音楽、マッサージ、カイロプラクティク、気功、信仰、、などで西洋医学を補佐しようという考えだ。

渥美和彦が主導した「統合医療」とは何か。西洋医学と代替医療の融合と統合を目指している。予防医学とそれを実現するための包括医療だ。患者中心の医療、身体・精神だけでなく人間を総括的にとらえる全人的医療、治療だけでなく予防と健康増進に寄与する医療、一生をケアする包括医療。渥美の視野には、クォーク医学、量子医学も入っている。「気」、「エーテル」からでた「ホメオパシー」も。そして、理性、感性、悟性、霊性という道筋も見えていたようだ。この流れへの障害は西洋医学中心の国民健康保険制度の維持を至上とする日本政府だという。医療現場の崩壊を防ぐために、長期的にはこの統合医療が日本を救うという主張だ。この本を書いた2009年から10年以上たった。どこまで進んだだろうか。

渥美先生には何度か野田一夫の関係で接している。野田先生の米寿の会だったか、挨拶で「野田さんは健康診断ですべてAであった。その秘訣を友人たちで聞きにいったことがある。100歳は間違いない」とユーモアを込めて語っていたことを覚えている。

「創意、創作に燃えている人は、長生きする」、そして「ガンと戦う人が長生きする」と語る。私なりに「意欲と気力」と言い換えてみようか。渥美和彦自身は、昨年の大みそかに91歳の生涯を閉じている。天寿だろう。

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