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「名言との対話」 8月2日。出口保夫「英国流シンプル生活術」

出口 保夫(でぐち やすお、1929年8月26日 - 2019年8月2日)は、英文学者、英国文化研究家。

三重県松阪市生まれ。1953年早稲田大学教育学部英語英文科卒業、同副手。1955年早稲田大学大学院修了。1963年早大教育学部講師、1966年助教授、1971年教授、2000年に退職後、名誉教授。2009年春、瑞宝中綬章受勲。

1963年、大英博物館研究員として渡英し、その後も、オックスフォード大学キャンピオン・ホール上級客員教授などとして、たびたびイギリスに滞在する。

ジョン・キーツをはじめとするイギリス・ロマン派についての研究業績や、『キーツ全詩集』などの訳業も多い。1970年代以降、イギリス文化に関する啓蒙書の翻訳や執筆に取り組み、特に紅茶を中心とした生活文化に関するエッセイ等を多数刊行した。日本紅茶同好会会長、ロンドン漱石記念館名誉館長、イギリス・ロマン派学会会長などを歴任した。

『キーツ全詩集』の訳業で、1974年度第11回日本翻訳文化賞を受賞し、『キーツとその時代』などで、1999年度の大隈記念学術褒賞を受ける。2002年には第51回神奈川文化賞(学術)を受賞するなど、受賞歴多数。

1975年の『現代イギリスの小説家たち』評論社から本格的な執筆が始まる。『イギリス文学の基礎知識』評論社、1977年。『新英国読本』ジャパン・パブリッシャーズ、1977年。『クオリティ社会の風景―続新英国読本』ジャパン・パブリッシャーズ、1978年。『私のロンドン案内』主婦の友社〈Tomo選書〉、1978年。、、、、。

75歳以降も精力的に執筆を続けている。『物語 大英博物館-二五〇年の軌跡』中央公論新社〈中公新書〉、2005年。『英国流シンプル生活術』ランダムハウス講談社、2006年。『漱石とともにロンドンを歩く』ランダムハウス講談社、2007年。『英国ミステリー紀行』ランダムハウス講談社、2007年。『英国流、質素で豊かな暮らし方―“一杯の紅茶”を毎日淹れる幸福論』柏書房、2007年。新編『新-私のロンドン案内』ランダムハウス講談社、2008年。『知っておきたい 英国紅茶の話』ランダムハウス講談社、2009年。『美しき英国へようこそ』ランダムハウス講談社、2009年。『イギリスの豊かな生活の知恵』ランダムハウス講談社、2009年。最後の『評伝 ワーズワス』研究社は2014年の84歳のときの作品だ。

『人生はまだ開かない薔薇の希望』(出口保夫編訳・出口雄大版画)は、副題が「イギリス・言葉の花束」。その詩集を読んだ。「自分が 幸せであるか どうかを 自らたずねると、人は幸せでなくなるものだ」(J.S.ミル)。「言葉はどんどん出てくるが 思想はなかなか出てこない。思想のない言葉は 天にはとどかない」(シェイクスピア)。「成長こそ 唯一の 生きる証である」(ヘンリー・ニューマン)。「美において最高のものが 力において最高のものとなるのは 永遠の法則なのです」(ジョン・キーツ)、、、。

共編著は1997年の出口保夫・林望『イギリスは賢い』PHP研究所など7冊を数える。翻訳書は、1974年のジョン・キーツ『キーツ全詩集〈第1巻-第3巻、別巻〉』白凰社など11冊。私なりに計算すると、単行本55冊を軸に、出口保夫の生涯の著作は、73冊になる。一つの分野を徹底的に深掘りしたということだろう。

私は20代の後半にロンドンに駐在することになった。その前に出口の『新英国読本』を読んだ。イギリスの国旗を表紙にした本を、山高帽を被った人が読んでいるというデザインの本である。私の1年余のイギリス生活はこの本から始まった。懐かしいデザインでよく覚えている。帰国後、この表紙をもじって年賀状をつくったのだが、取材に訪れたイラストレータの河原淳さんから、デザインを褒められたことがあることを思い出した。

最近ではイギリスの食文化・イギリス人の食生活に関する随筆『イギリスはおいしい』(平凡社・文春文庫)でデビューしたリンボウ先生こと、林望の との共著『イギリスは賢い』も楽しく読んだ記憶がある。

英国流シンプルライフとは、古い家と家具にこだわるイギリス人の生活のことだ。これは実感としてわかる。門下生の一人に英文学者・作家の遠藤徹がいる。出口保夫のイギリス探検の旅は、まだ、続いているとういうことだろう。

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