9月14日。小島直記「自伝信ずべからず、他伝信ずべからず」

小島 直記(こじま なおき、1919年5月1日 - 2008年9月14日)は、福岡県八女郡福島町(現・八女市福島)の生まれの小説家。経済人などの伝記小説で知られる。

経済調査官をへて1954年ブリヂストンにはいる。一方,、火野葦平の後をうけ「九州文学」を主宰。1965年から文筆に専念し、政財界の人物評伝に新分野をひらいた。

「伝記」と「評伝」を仕事としている小島は、34歳の時、勤めをやめてペン一本になるが、うまくゆかずに友人の石橋幹一郎を通じて、ブリジストンに入り、石橋正二郎という巨人と遭遇する。そして再度ペン一本で立つ。父の没年と同じ40代半ばの年齢で「父の生きただけは生きた。これからは自分の生きたいように生きるぞ」と決意し、清水の舞台から飛び降りた。

この多作の伝記作家の『福沢山脈』(上下)を読んで、福沢諭吉の偉さと、筆力の高い小島直記に関心をもったことがある。

「人間の幸せとは、金でも地位でもない。天職に就いているという気持ちで、元気に働いている満足感である」「人生は出会い、必要な出会いは遅くもなく早くもなく到来すると説かれ、人物に学べ、加えて伝記を通じて古今東西の人物に学べ」

「諸君が不正を行えば、枕元に化けて出て叱責する」(松下政経塾にて)

著書では、福沢諭吉、 松永安左ヱ門、鈴木三郎助、石橋正二郎、小林一三、奥村綱雄、大久保利通、池田成彬、鮎川義介、森恪、、、などの伝記・評伝を多く書いている。1990年、第2回安岡正篤賞を受賞。

1983年には「小島伝記文学館・伝記図書館」が静岡県の富士裾野に駿河銀行によって設立されている。小島直記氏からの寄贈図書3,700冊と、内外の伝記・評伝1,000冊を収蔵し公開している。三島から山にあがった風光明媚なところだ。小島がかってここにこもって執筆した部屋、使用した資料も残されている。

73歳、ガンに冒された小島は『鈴木大拙全集』全33巻を読み始める。心を込めて理解し血肉にしようとつとめることに、自分の「生」があるとの決意だった。その努力が終わるところが人生時刻表の終わるときだ。小島は89歳でみまかっているが、この「行」を終えたのだろうか。

これほどの伝記作家が、「自伝信ずべからず、他伝信ずべからず」と語っているのが面白い。自伝には弱みを隠す虚飾が必ずあり、伝記には実物以上のイメージがついてまわるからだろう。それはそうだが、私は本人が自分の姿がこうあって欲しいという「自伝」に興味があるから、この「名言との対話」でも、なるべく自伝を手に取るようにしている。ウソや誇張があっても構わない。実像よりも、こちらがその人から何を学ぶかの方が大事だと思うからだ。

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