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「名言との対話」12月30日。星新一「人生最大の楽しさと言ったら、人に模倣されることでしょうね」

星 新一(ほし しんいち、本名:星 親一、1926年〈大正15年〉9月6日 - 1997年〈平成9年〉12月30日)は、日本の小説家、SF作家。

父は星薬科大学の創立者で星製薬の創業者・星一。1948年、東京大学農学部農芸化学科を卒業。大学院に進学し、坂口謹一郎のもとで農芸化学を研究する。1951年、父がの急逝で中退し経営悪化中の会社を継ぐが破綻し、会社を譲るまで処理に追われた。1963年、小松左京、手塚治虫らと日本SF作家クラブの創設に参加。1976年から1977年まで日本SF作家クラブ初代会長を務めた。 1983年秋に「ショート・ショート1001編」を達成した。小松左京、筒井康隆と共に「御三家」と呼ばれる。

『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』『きまぐれロボット』などのショートショート集がある。またインターネット社会を予見した『声の網』や少年の夢をめぐるファンタジー『ブランコのむこうで』などの長編もある。父・星一の壮年期を描いた『人民は弱し 官吏は強し』、青春記を描いた『明治・父・アメリカ』、『祖父・小金井良精の記』などの伝記も発表している。

以下、星新一語録。

「(アイデアを出すとは)多くの人の意見を集め、広く資料を調べ、とらわれない自己の判断で整理し、そこから新しい可能性をひきだすことである。具体的な世界から抽象の世界に飛び、ふたたび具体的な世界に戻りながら、せきとめられている水路を発見することなのだ」「突飛な質問、恥、笑い、というのはアイデアへの感覚なのである」「忙しく動き回りながら、深く考えることは、人間にはできない」「学問のもとは、好奇心。好奇心を育てるようにしておけば、優れた人物も、自然に育ってくる」

「できるだけ多くのものを内に秘め、一方、口数は少なく、軽々しい判断はしない。その修行が気品というものを作り上げる」「われわれが過去から受け継ぐものはペーソスで、未来に目指すべきはユーモア」「個性のある人と話すのは楽しい。しかし、それには、こちらも一つの個性を持たなければ、会話が成立しない。人生を豊かにするためには、そういった努力がいる」「わたしは失敗に終わってしまった。しかし、完成を心にえがきながら、ずっと楽しく生きてきたよ。楽しく生きてきたような気がするだけかもしれないがね。これでいいのだろう」「自分のことを気にかけてくれている人がいる。それだけで十分だ」「人が夢の世界を持っていなかったら、現実に対して何の批判もしなくなり、ただただ現実に押し流され、ずるずるとだめになってゆくだろうね。現実の世界はそれぞれの人の夢で支えられているともいえるんだよ」

「文体とは、あくまで人柄だ。ユーモアのないひとにユーモラスな文など書けるはずもなく、大まかな性格の人に神経質な文は書けない。文章技術より、自己発見のほうが先である。それだけでいい。あとは、辞書をそばに誤字を減らすよう努力し、文字を丁寧に書くように気を付ければ、文章は自然と、あなたの人柄のいい面が現れてくる」

それでは「ショートショート」とは何か。短く不思議な小説でアイデアが勝負の作品だ。サマセット・モームが「コスモポリタン」誌で試みた短い小説が話題になり、それを都筑道夫が日本に持ち込み、星新一によってショートショート形式が広まった。「世の中には短く要約できないものはない」という星新一は、「ショートショートの神様」となった。雑誌『小説現代』では400字詰め原稿用紙7枚まで、雑誌『SFマガジン』ではでは5枚程度としているが、星新一には10枚程度の作品が多い。当用漢字しか用いない平易な文章、時事風俗や固有名詞、性や殺人を描かない透明感のある作風は、年齢性別国籍を問わず広い読者層、とくに小中学生の子供たちに支持されている。刊行部数は、新潮文庫だけでも3000万部に及び、今も増刷・復刊が行われている。翻訳は「ボッコちゃん」の英訳(1963)を皮切りに、旧ソ連から東欧諸国の言語、中国語、韓国語、スペイン語、ベンガル語、エスペラント語まで20言語以上延べ650件以上となっている世界的作家となった。

2013年から日経「星新一賞」が始まった。理系的な発想に基づいたショートショート、および短篇小説を対象とした公募文学賞で、作家たちを励ましている。私は作品はきちんと読んではいないが、世田谷文学館で開催された小松左京や、筒井康隆の企画展では、星新一の名前をみかけているので親しみを感じている。

「星新一公式サイト」をみつけてのぞいてみたが、今でも週1ペースでニュースが掲載されていた。2020年12月30日付(本日)で「星新一公式サイト英語版のニュースを更新しました」とのニュースをみかけた。星新一の作品は長い生命を持っている。そして父、祖父の物語も書いているように、自分一代で人生を考えていなかったように思う。星新一は今も生きているのだ。

形式の発明は創造である。それを模倣する人々が多くなるとひとつの分野を形成する。生きがいというのは自分が生きた短い時間だけにあるものではないらしい。死後も含めた長い時間を生き続けるのは人生最大の楽しみだろう。どうやら星新一の「ショートショート」は永遠の命を持ったようである。

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