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気軽に聴けるリラックス・ムードなアラブ古典器楽奏 〜 ジアード・ラハバーニ

(3 min read)

Ziad Rahbani / Bil Afrah

bunboniさんのブログで知りました。

レバノン人歌手フェイルーズの子にしてピアノ奏者、コンポーザー、プロデューサーのジアード・ラハバーニが、まだ若かったころにリリースしたインスト・アルバム『Bil Afrah』(1977)。くつろげてとてもいいですよね。

アラブ古典器楽奏なんですけど、こういうとなんだか崇高で敷居が高くてちょっとね…、と敬遠しがちな向きもおありじゃないかと思います。しかしジアードの本作にそんな懸念は無用。庶民的なカフェ・ミュージックといった趣きで、とっつきやすいんです。約37分とサイズも手頃。

このアルバムの背景となっている社会的な問題については上でリンクしたbunboniさんの記事にすべて書かれてあるので、ぜひご一読くださいね。ちょっと聴いてみるだけのぶんにはその手のことは気にならず、まったく聴きやすく親しみやすいジャム・セッションで、ぼくもそういったところが気に入っています。

ジアード自身の曲や有名他作などとりまぜて、それをテーマにバンドが自由闊達に即興演奏をくりひろげる様子が、アルバムにはしっかり収められています。さらに親しみやすさと臨場感を演出しているのが、スタジオ現場での演奏中にやりとりされる人声です。

笑い声をあげたりはやしたてたりしゃべりかけたりハミングしたりなど、ナマナマしいともいえますが、ここでは演奏時のリラックス・ムードをうまく伝えることに成功していて、楽器演奏の格好のスパイスになっています。ジアード以下レコーディング・メンバーは緊張せずノビノビと楽しんでいて、まさしく自宅サロンでやっているような普段着姿のアラブ古典器楽奏といった趣き。

端正でかしこまった典雅なものが多いアラブ古典音楽世界においても、実は演奏者たちもこういったくつろげる日常を送っていたんだろう、スタジオでのレコーディング時は厳正なムードになるにしても、ふだんの自宅の部屋のなかではこんなリラクシング・ミュージックを奏でて家族や友人と談笑し楽しんでいたはずだ、といった想像をたくましくするのに十分なジアードの本作なのでした。

(written 2022.4.17)

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