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迫力のソウル・クイーン 〜 シエラ・グリーン&ザ・ソウル・マシーン

(4 min read)

Sierra Green & the Soul Machine / Sierra Green & the Soul Machine

ニュー・オーリンズのバンドみたいです、シエラ・グリーン&ザ・ソウル・マシーン(Sierra Green & the Soul Machine)。そのデビュー・アルバムだと思うんですけど『Sierra Green & the Soul Machine』(2019)を聴きました。このバンド、音楽はたぶんリズム&ブルーズ/ソウルのフィールドにあるとしてさしつかえないでしょうね。それもわりとオールド・ファッションドなっていうか1950〜60年代的なブラック・ミュージックに聴こえます。

オールド・ファッションドな、っていう言いかたをすることも実はないんでしょう、こういったものはオーソドックスなソウル・マナーですから不朽のスタイルというべきで、時代を超えて幅広く聴かれ支持される音楽なんだと思います。カヴァー・ジャケットに写っている女性が主役歌手のシエラ・グリーンってことでしょうか、そんな音楽を彼女もまた志向しているんでしょうね。カヴァー・デザインもわざとレトロな古めかしい感じに寄せてきています。

アルバムはたったの31分間で、しかもシエラとバンドがぐいぐい押すアップ・テンポの調子のいい曲ばかり。迫力ありますね。バンドはたぶんギター、鍵盤、ベース、ドラムス、ホーンズかな、演奏はよく練りこまれているし、熟達の味わいがします。たぶん地元ニュー・オーリンズや、あるいは全米各地でも?ライヴを重ねてきているんでしょうね。

だから、録音はたぶんこれ全員合同の一発録りでやったんじゃないですか、オーヴァー・ダブなどのギミックも、コンピューターを使った打ち込みなどもいっさいなしだったんじゃないかと聴けば想像できます。そういったあたりも、オールド・ファッションドというより、ライヴ・バンドならではの実力を発揮したといったところなんでしょう。生演奏じゃないと出せないグルーヴが満載です。

フロントで歌うシエラが曲も書いているのか、バンド・メンバーかだれかが手伝っているのか、そのあたりは不明ですが、オーセンティックなソウル・マナーでのソング・ライティングで、ヴォーカルのスタイルとあわせ、ちょっとアリーサ・フランクリンを思い出したりもします。歌はアーマ・トーマスっぽくもありますね。シエラは発声もかなり鍛えられているに違いないという声質です。

ぐいぐい押すノリノリ迫力のアップ・ビート・ナンバーばかりで、ぜんぶで八曲ですからちょっとだけチェンジ・アップを混ぜたら、そう二曲程度あれば、メリハリがついてよかったんじゃないかと思わないでもないですが、アルバムは31分間しかないので、あっという間に駆け抜けてしまうフィーリングで、飽かずに最後まで聴けますね。シエラのつばが飛んできそうな迫力(はバンドの演奏にもある)にけおされるというか。

アルバムでは、しかしラスト・ナンバー「ピーシズ・オヴ・ユー」だけが実は三連のソウル・バラード。締めくくりにもってきたのには意図があるんでしょう。ファッツ・ドミノっぽいニュー・オーリンズ・テイストも濃厚に漂っているし、切ない歌詞を濃ゆい感じで歌い上げるシエラのヴォーカルにも泣けて、ムーディな幕引きでいい感じです。

(written 2020.4.27)

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