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ストーンズの『ブリッジズ・トゥ・バビロン』を思い出していた

(4 min read)

The Rolling Stones / Bridges to Babylon

ローリング・ストーンズ1997年のアルバム『ブリッジズ・トゥ・バビロン』。ジャケットが当時から嫌いで、なんなんですかこのデザインは。そのせいで音楽までなかなか聴く気にならなかったりしますけど、中身はいいんですよね、かなりいいです。そのことは発売当時聴いてネットに投稿しまくっていましたからわかっていたはずですけど、近年ずっと忘れていました。

思い出したのは、昨日書いたキース・リチャーズが歌うストーンズ・ナンバーのことを聴いたからです。『ブリッジズ・トゥ・バビロン』には三曲もありますからね。それらは出来もいいし、ふとアルバム全体はどんなんだったかな〜?となにげなく聴きなおしてみて、なんだか20年以上ぶりくらいにビックリしちゃいました。いやあ、いい音楽です。

1曲目「フリップ・ザ・スウィッチ」から快調にぶっ飛ばすストーンズ・スタイル全開で、こ〜りゃ気持ちいいですね。ふつうのロックンロール・ナンバーですけど、こういうのをやらせたら実力を発揮するバンドです。チャーリーのドラミングもみごとだし、キースのギターもミックのヴォーカルも絶好調に聴こえます。だいたい曲がいいですよね。

2曲目「エニイバディ・シーン・マイ・ベイビー」以後は、曲によってブラック・ミュージックに寄っている、それも1990年代当時の最新のそれ(ふくむヒップ・ホップ)に、と思えるものがあって、この2曲目もそうだし、5曲目「ガンフェイス」、それからなかでも特に7曲目「アウト・オヴ・コントロール」、8曲目「セイント・オヴ・ミー」、9曲目「マイト・アズ・ウェル・ゲット・ジュースト」なんかはすばらしいです。当時の R&B の香りが強くしますよね。

1997年のリリース当時個人的にいちばん好きだったのは「セイント・オヴ・ミー」で、このノリというかグルーヴ感がとてもいいなと思っていたんです。ネットでずいぶん騒いで、たしなめられたりもしましたが、いま聴いてもこの曲のこの演奏はみごとです。特にドラムスとベース+ギターでつくるこのリズムをいつも聴いてしまいます。これ、本当にストーンズなのか?と思ってクレジットを見たら、なんとベースはミシェル・ンデゲオチェロじゃないですか。へえ〜。

ミックのブルージーなハーモニカを大きくフィーチャーした9「マイト・アズ・ウェル・ゲット・ジュースト」は、従来的なブルーズ楽曲ととらえることもできますが、ダグ・ウィンビッシュがベースを弾いているし、もっとこうコンテンポラリーな意味合いをサウンドのなかにあわせ持ったブラック・ミュージック寄りの曲なんじゃないかと、いまでも思います。そう考えるとミックのハーモニカもちょっと違って響いてきますね。7「アウト・オヴ・コントロール」でもそうです。

2020年に聴きかえしてみて、ストーンズのこの『ブリッジズ・トゥ・バビロン』ではやはりそんな7〜9曲目のあたりがいちばんすばらしく聴こえます。もともとアメリカ黒人音楽への全面的なオマージュで1960年代からずっと進んできたバンドですけど、1990年代半ばにあってもコンテンポラリーなそれをチェックし吸収することを怠っていなかったんだなとよくわかりました。二曲でアップライト・ベースを使っているのだって、そんな意識の反映でしょう。

1997年当時のブラック・ミュージック・シーンを意識したような曲がいくつもあって、古参バンドの作品でありながら時代に訴えかける力を持ったアルバムだなと当時から感じていたんですけど、2020年に聴くと同時代性みたいなことは消えていますから、たんに音楽として聴いて楽しいなと思いますね。やはり R&B とかヒップ・ホップとかジャズだとかに寄ったようなゲスト人選と演奏ですよね、それがいいです。

ジャケットだけがねぇ、もうちょっとマトモだったらなと、いつもそれを思いますけどね。

(written 2020.4.13)

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