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歩くように 〜『ブルー・ノート・スワガー』

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ブルー・ノート・レーベル公式配信プレイリスト "Cool Struttin': Blue Note Swagger"。ときどき聴いているんですけれども、これってスワガー、つまりトントンと早足で歩くような調子のモダン・ジャズ・ナンバーばかり集めたっていうことなんでしょうか?プレイリスト題になって収録もされカヴァーにもなっているソニー・クラークの曲「クール・ストラティン」ってそういう歩く意味ですもんね。なかなかテンポのいい曲が並んでいて調子いい感じです。

しかしこれ、歩くようなということで合わせて歩こうとすると面食らいますよね。「クール・ストラティン」にしてからが、その4ビートで一歩づつ足を出そうとするとテンポが早くてむずかしいです。ちょっと早足すぎるというか、走っているとまでじゃないけどついていくのがちょっとたいへんです。アメリカ人、っていうかニュー・ヨーカーたちはこれくらいのテンポで歩いているんでしょうか?

そういえば都会はだいたい歩くテンポが速くなりがちな気がしますね。ぼくは愛媛生まれで22歳まで愛媛育ち。その後長年東京に住んでいましたが、最初出てきたときみんな歩くの速いなあ〜ってビックリしましたもんね。それでも自然にその速いリズムに慣れちゃって、自分ではなにも変わっていないつもりでも、たまに愛媛に帰ると周囲に驚かれるのでそれではじめて自分の歩く速度が上がったということに気がついたりしていました。

音楽にしたって地域差というか、ビート感覚、リズムの速さみたいなことに都会か地方かが影響していそうな気がしますよね。ジャズはだいたいが都会の音楽で、発祥地のニュー・オーリンズもかなりの都会、その後シカゴ、カンザス・シティ、ニュー・ヨークとメッカが移動してもそれらすべて大都会です。都会の生活のテンポ、リズム感みたいなものがジャズのビートにもなにかを与えているような気がします。

だからプレイリスト『ブルー・ノート・スワガー』は、これで歩くような感じといわれても速すぎると感じるのは、いまのぼくが地方暮らしですっかりのんびりペースに慣れちゃったという証拠かもしれません。ただ部屋のなかで聴いているだけで合わせて歩かないならば、かなりいいフィーリングで、テンションとリラクゼイションのちょうど中間くらいのいい感じに聴こえますね。

こういった長時間のプレイリストは集中してというか対峙するように聴き込むものじゃなくって、部屋のなかとかでただバ〜ッと流して雰囲気を味わっていれば上々といったものですけど、『ブルー・ノート・スワガー』もテンポのちょうどいいハード・バップばかり並んでいることで、都会の夜のくつろぎを与えてくれて、気分いいですね。特にサックスですね、モダン・ジャズのある意味象徴的楽器で、いいテンポに乗ったそのサウンドを聴いているだけで快感です。

だからスワガーだけど必ずしも歩くっていうことじゃなく(これらで歩こうとしたら早足だから疲れちゃう)、ちょうどいい気持ちいい中庸の快速テンポでスウィングしている調子のジャズが並んでいるっていう、そんな認識なんです。

(written 2020.2.27)

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