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書くことで理解する

(5 min read)

この文章が書き上がったら、ブログ用の文章ストックが42個になります。そんなにためこまなくていいんですけど、なんだか最近書けちゃうんですね。ストックは20個強もあればじゅうぶん心おだやかでいられるんでその程度でいいと思うものの、一月末ごろから一日二つ三つと書けるようになり、そういうことが断続的にあって、結果ストックが42個ということになりました。

ブログなんで、そもそもその日の感想とか気持ちとかを書いてそのままその日のうちにアップするというのが本来の姿かもしれません。はじめたころからずっと音楽を聴いての感想を上げていましたから、CD やファイル、最近では配信で、聴いて、そこから頭のなかに浮かんだ思いというか、感想、論考というか、そんなものを書いてはためこむようになったんですね。

感想とか論考とかいっても、あらかじめ書く前から頭のなかに鮮明にそれがある、こうこうこういうことを書こうとはっきりしている、なんていうことはぼくのばあいあまりありません。書く前から構成なんかがくっきりしているということが皆無ではないんですけどまずなくて、ゼロに近い状態からノー・プランでいきなり闇雲に書きはじめる、あとは成り行きまかせの即興っていうケースばっかりですね。

書き上がったものを時間をおいて(アップしてからでも)読みなおすと、全体がよく構成されているだとか起承転結があるだとかって感じるばあいもあって、しかし執筆前にプランを練ったりしませんしメモもあまりしていないですから、考えなしの場当たり即興だけど頭のなかで無意識裡に組み立てつつ書き進んでいるということなんでしょうね。マイルズ・デイヴィスのことばを借りれば「インスタント・コンポジション」っていうか。

書く前からあらかじめわかっていることを書くというのではなく、書きながらちょっとづつわかってくる、書くことによって対象をだんだん理解するようになるというのが本当のところで、ぼくのブログも多くのばあいなんらかのディスク・レヴューだったりしますけどそのアルバムのことを本当にちゃんと聴けるようになるのは書いたあとのことです。特にはじめて聴く新作や、旧作でもあまり知らなかったもののときはそうです。

とりあげようと思って、書いて、(時間をおいて)アップして、それではじめてその音楽アルバムのことを理解したような気分になれるということですね。文章を書くひとのばあい、対象物をよく理解してから書く、ということもあるでしょうがたいていはそうじゃなく、書きながら、そのプロセスで、理解していくということが多いというのをご納得いただけるんじゃないかという気がします。みなさん大なり小なりそうなんじゃないかと思うからです。

音楽アルバムをとりあげる際は、執筆前にくりかえしなんども聴き、もちろん書いている最中の BGM もそのアルバムですけれど、書き終えて時間をおいて推敲しているときにもう一回聴いたり、ブログに上げてからそれを読みつつ再度聴いたりしたときのほうが、その音楽がもっとよりよく聴こえてくる、耳にしっかり入ってくるというのがたしかなことなんですね。書いてから聴く、すると前よりもっといい音楽に思えるから不思議です。愛着が増すという面がありますね。

また、聴いて、とてもいい音楽だと感じ、しかしどこがどういいと思うのか感想の輪郭が不鮮明だったり曖昧だったりするばあいには、書くという行為にとっても意味があります。書くことによってはっきりした感想を持てる、ぼやけていた輪郭がくっきり姿を現したりするというのはよくあることですから。長年聴き続けていて知っている音楽だとこのプロセスはないんですけど、はじめての音楽作品だと、自分の感想をはっきり自覚し対象を鮮明にとらえる行為に、書くということがなるんです。書くことで整理されますよね。

だからぼくにとって、音楽を理解する上で「書く」ということはとても大切なことになっています。ブログをはじめるまで特に書いたりしていなかったんじゃないの?と思われるかもしれませんが、なんらかのかたちで若い時分から、それこそ熱心に音楽を聴きはじめた当初から、ずっと書いてきたというのが真実だったのかもしれません。はじめは日記や個人的なエッセイで(それを紙のノートに)。雑誌なんかに寄稿するようになるとその原稿を書き、ネットの出現とその後の SNS の普及で今度はそれに書くようにずっとなっていました。

それがぼくのばあいたまたま2015年からブログというかたちに変わっただけなんですね。書いてみる、文章にしてみるというのは、たぶんどなたにとっても有効なプロセスで、愛する対象をよりよく深くしっかりと知る、理解する、愛が増す、そんな大切な行為であるような気がします。書き記すことによって、書き進みながら、音楽のことでも(なんでも)いっそう理解が進むというのがこの世の常じゃないでしょうか。

(written 2020.4.24)

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