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The Finest Dixieland Band of All Time 〜 エディ・コンドン

(5 min read)

Eddie Condon / Jam Session Coast To Coast

これについて書くのは二回目?三回目?とにかく大好きなんですよね。いつも聴いているし、聴くたびにこんなに楽しい音楽はないなぁってため息が出るほどなんですね。エディ・コンドンの『ジャム・セッション・コースト・トゥ・コースト』(1954)。エディ・コンドンはもちろんシカゴ出身でニュー・ヨークで活躍したディキシーランド・ジャズのバンド・リーダー&ギターリストです。やっている音楽もこんな感じの(いまからしたら)古くさ〜いオールド・スタイルのジャズなんで、2020年にもなってこういう音楽が大好きだっていう人間もあまりいないかもなんですけど。

でもでも、以前数年前に YouTube にこのアルバムの冒頭の三曲をアップロードしたのはいまでも評判がいいんですよね。イイネもいっぱいつきますが、好意的なコメントが多くて、名前のつづりと内容からしてたぶんアメリカ人のかたがたかなと思うんですけど、いまだにディキシーランド・ジャズが好きだっていうような同好の志が(ごく少数でしょうが)いるにはいるんですね。もの好きというか、でも仲間がいると実感するとちょっとほっこりした気分になったりしています。

ぼくのばあい大学生のときにこのエディ・コンドンの『ジャム・セッション・コースト・トゥ・コースト』レコードに出会い、こんなにすばらしい音楽はない!と一目惚れ、その後現在までずっと愛聴してきています。最初に聴いたのはだからたぶん1980年前後あたりのこと。もちろんその当時ディキシーランド・ジャズなんか聴いているヤツは周囲にほぼいません。頭ではぼくもとっくに廃れた古くさい音楽で時代遅れもいいところと理解してはいても、身体感覚、皮膚感覚でこれは楽しい、膝が動く、ワクワクしてノレるというフィーリングを否定することはできませんでした。

こんな音楽、全盛期は1920年代で、30年代のスウィング黄金時代にビッグ・バンドが主流になったらもう(流行としては)終わっていたもので、その後40年代のビ・バップ勃興、50年代のモダン・ジャズときたジャズのメインストリームの波からはとうのむかしにおいてけぼりをくらっているようなものですけれどもね。コンドンの『ジャム・セッション・コースト・トゥ・コースト』が録音されたのは1950年代ですから、当時としても時代遅れでした。

でもちょっと聴いてみてください。1曲目「ビール・ストリート・ブルーズ」のスウィング感。この愉快なリズム感、スウィンギーさ、ワクワクするノリこそ、ぼくがいちばんジャズに求めるものなんですね。ソロまわしも楽しくて、最初ピアノが出ますけど、二番手のトロンボーン、三番手のコルネット、四番手のクラリネットと、それぞれのソロ後半で残りのホーン陣がバッキング・リフを演奏しはじめるあたりからの痛快なドライヴがもうなんともいえずたまらない快感なんです。

その後ベース・ソロが出て、それが終わったらふたたびのアンサンブルでテーマを合奏しますけど、それが、も〜う、本当になんて気持ちいいのでしょうか。その後半のテーマ演奏後半でトゥッティになだれこむあたりなんか、爽快のひとことですよ。短いドラムス・ソロがあって最終盤のアンサンブルで終わり。あぁなんという至福の時間でしょうか。

こんなようなスウィング感は3曲目「リヴァーボート・シャッフル」でも聴くことができます。この曲のこの演奏でのスウィング感もなかなかみごとですよね。YouTube コメンテイターのなかには "the finest Dixieland band of all time" とおっしゃるかたもいるくらいで、ぼくも同感です。戦後録音でサウンドがクリアに聴こえるせいでもありますけどね。ここでも演奏後半のノリのよさ、スウィング感が痛快です。

アルバム2曲目のバラード・メドレーも絶品ですし、本当に美しいんですよね。1、3曲目のスウィンガーふくめミュージシャンたちは軽い気分でリラックスしてやっているだけだと思いますが、こんなにも秀逸でこんなにもきれいな音楽が、ただスタイルが古いというだけで聴かれず忘れ去られていくのは、なんとも残念でくやしい思いです。細々とでも聴き継がれ生き残っていってほしいですね。

ぼくはこういったジャズ・ミュージックが心の底から大好きなんですよ。

なお、アルバムの5曲目以後(B 面)はエディ・コンドンらの演奏ではありません。くわしいことは以下の過去記事に書きました。

(written 2020.6.8)


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