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教会とジューク・ジョイントが立ち並ぶ光景で 〜 ミコ・マークス

(3 min read)

Miko Marks & The Resurrectors / Feel Like Going Home

萩原健太さんのブログで教えてもらいました。

現役でいえばメイヴィス・ステイプルズとか、いやいやなによりも1970年前後ごろのザ・バンドやディレイニー&ボニーあたりがそのまま甦ったようなオールド・ファッションドな音楽であるミコ・マークスの最新作『Feel Like Going Home』(2022)は、ですからあのへんが大好きなファンにはこたえられないもののはず。

ミコは黒人ながらオールド・カントリーの世界でデビューしたらしく、これがアメリカーナとかだったらそうでもなかったんでしょうが、ナッシュヴィルあたりで保守的な発想をいまだ硬固に持つみなさんには受け入れがたいものがあったようで、苦労したみたいですよ。

考えてみればザ・バンドとか同じころのいはゆるLAスワンプ系などふりかえってもわかるように、白人音楽と黒人音楽はずっと同じパレットに並んでまぜこぜで歩んで時代時代の新しい音楽を産み出し続けてきたというのがアメリカ大衆音楽の真実。

2005年のデビュー以来ミコの努力はそうした認識にしっかり立脚し、レトロな原点回帰をしつつ、自分の信じる道をつらぬいてきた結果だったと思うんですね。ようやく結実しはじめたのが2021年にレッドトーン・レコーズに移籍し、ハウス・バンドのザ・リザレクターズと組むようになってから。

本アルバムがそうなっての二作目というわけ。バンドとレーベルの全面協力を得て、ごきげんにディープなカントリー・ソウルを届けてくれています。1曲目を聴くだけで本作やミコがどんな音楽性の持ち主なのかくっきりわかろうというもの。時代遅れと笑われるかもですけど、エヴァーグリーンなんだとぼくは考えていますね。

ザ・バンドそのまんまというミコらしさが爆発しているのは特に2曲目以後。2「ワン・モア・ナイト」なんてそっくりすぎると思うくらい。その歌詞に「ジューク・ジョイントと教会」というのが出てきますが、まさに聖と俗、それらが併存するアメリカ南部社会のリアルな光景を思い浮かべるようなサウンド。

以後もメイヴィス・ステイプルズ、シスター・ロゼッタ・サープ、アリーサ・フランクリン、エタ・ジェイムズなど、偉大な先達からの影響を色濃くたたえた極上のカントリー・ソウルを聴かせてくれるミコのその歌声そのものに教会とジューク・ジョイントとが共存しているフィーリングが聴こえますよね。

黒人だけでなく、もちろんザ・バンドとかジョー・フォガティとかジョー・コッカーとか、あの当時のそのへんの白人男性ロック歌手をも意識しているようなヴォーカル・トーンですし、バックをつとめているザ・リザレクターズがそんな傾向のバンドなんでしょう。

(written 2022.10.26)

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