見出し画像

コメ食い女まゆみ(仮名)

※ 写真はこないだの自作リゾットで、以下の本文とは関係ありません。

(5 min read)

主食がお米じゃないとダメっていうところがぼくにはなくてですね、パンやうどんやパスタなど小麦粉系とか、そばや、あるいはじゃがいもなど、そういったものでじゅうぶん満足できる人間です。いつもいつもお米ばかりじゃなくていい。

だから過去にをちょっとだけ外国旅行したときも、現地の料理店で(偏食者だけど)メニューにあるものを食べればそれでおっけ〜だったんですけど、パートナーはときたま無性にお米が食べた〜い!と言い出すひとでした。

外国旅行はすべてパートナーといっしょでした。そんな調子ですから、特に夕食ですね、お米!お米!と強く主張されることもあって、バラバラでというのもあれですから、いっしょに行けるところでお米メニューのあるレストランなりビストロなりをさがすんですけど、お米文化が根付いていない土地もありますから。

アメリカのニュー・オーリンズ(や近隣南部)にはジャンバラヤ、ガンボといったお米料理があるし、イタリアにもリゾットがある。香港や台湾も行きましたけど東アジアは米食文化圏だからパートナーも困りません。そうじゃない土地でも夕飯はお米を食べたがるので弱って、結局いつも中華料理店でチャーハンを注文することに。

みなさんもご存知でしょう、中華料理店ってほんとうに世界中どこにでもにあるんですよね。だからお米渇望がもたげてきたときの中華料理店だのみにパートナーのなかではなっていて、ヴェネツィアとかでもチャーハン食べたい!からぼくにもいっしょに行ってくれと言うんです。

そもそもぼくなんか大のパスタ好きですから、せっかく料理のおいしい国イタリアに来たんだから、本場の各種パスタを食べまくりたいぞと思っていたのに、ヴェネツィアだけでなく、なぜかローマでもフィレンツェでもミラノでも毎夕がチャーハンになってしまい、なんだったんだあれは、まゆみさん(仮名)。

パリでだって、朝も昼も小麦粉系だから夕食くらいはお米を食べたいんだと主張され、結局宿の近くにあった手狭で安い庶民派中華へ通うハメになり、見た目中国系の店員みたいでしたから「Deux 炒飯 s'il vous plait!」などというムチャな仏中ちゃんぽんでオーダーしたりはぼくでしたが、通じました。

そんなお米大好き人間だったパートナーなのに、せっかくお米類が食べまくれるニュー・オーリンズでの夕食は、ぼくがジャンバラヤをオーダーするかたわらでいきなり口が裂けそうなほど大きなハンバーガーをぱくついたりなど、なんだかワケわかりませんよねえ。

それはそうとニュー・オーリンズではフレンチ・クォーター内の専門店で毎昼のように食べたガンボがおいしかったです。ガンボは見た目が泥なんですが、超美味。なんとかあれを再現したいと思い帰国してからあれこれ試しましたが、どうも日本に住む素人一般家庭料理人にはムリみたい。

フィレが入手できないし、ケイジャン・スパイスだってねえ。東京あたりだと本格ガンボを出すお店があってよさそうなのに、ないと思います。食べた料理は再現できることもあるぼくですが、ガンボは思い出のなかにしか存在しません。だからなのか、世界のお米系料理のなかでいちばん好きだったかも。過去の記憶が美化されているだけかなぁ。

働かなくなったので経済的な余裕がなくなって、外国旅行はもうできなくなりました。国内だってどこへ行くにしてもぼくはわりと foodie な人間なんですよね。その土地その土地のおいしい料理を食べて、それでいい気分で、それこそがあちこち行く醍醐味のひとつでもあるんですから。どこへ行ってもチェーン店牛丼かハンバーガーか回転寿司なんてイヤ。

いまはもう自宅近所のスーパーで入手できる材料でちゃちゃっと、それでも多少手をかけて、つくって食べるのがほんとうに楽しみで充実していますが、そんな生活のなかでも週七日の夕食のうち二日か三日くらいはお米料理じゃないものをつくって食べていますね。

(written 2022.4.29)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?