製薬企業による買収戦略について

米国製薬企業が子会社を買収する際には、様々な戦略やパターンが用いられます。特に製薬業界では、新薬の研究開発コストが非常に高いため、他の企業を買収して技術やパイプラインを獲得することが一般的です。以下、主要な買収戦略とそのパターンについて解説します。


 1. 垂直統合型の買収

これは、製薬企業がサプライチェーンの異なる段階にある企業を買収する戦略です。たとえば、製薬会社が原料供給企業や製造企業を買収することで、自社の製造コストやサプライチェーン全体を効率化し、製品の安定供給を確保することが目的です。


例:  

- 製薬会社がAPI(Active Pharmaceutical Ingredient:有効成分)の製造業者を買収することで、原材料の調達コストを削減し、供給の安定性を高める。


2. 水平統合型の買収

同じ事業領域や同業他社を買収するケースです。この戦略の目的は、競争を削減し、マーケットシェアを拡大することにあります。特に、自社が持っていない製品ラインや技術を持つ企業を買収することで、製品の幅を広げ、市場での競争力を強化することが可能です。


- 大手製薬会社が中堅製薬会社を買収し、特定の治療領域における競争優位を強化する。


3. 技術・パイプラインの獲得を目的とした買収

製薬業界では、新薬開発の成功率が低く、時間がかかるため、すでに開発が進んでいるパイプライン(新薬候補)のある企業を買収することが多いです。この戦略では、特にバイオテクノロジー企業や研究開発に強みを持つスタートアップ企業が対象になることが多いです。目的は、すでに進行中の臨床試験や承認申請を加速し、自社の製品ポートフォリオを迅速に強化することです。


例: 

- ファイザーがバイオ医薬品企業を買収し、開発中のがん治療薬を自社のポートフォリオに追加する。


 4. 地理的拡大のための買収

米国製薬企業が海外市場への参入や、海外での事業拡大を目指して現地の企業を買収するケースです。新しい市場での規制をクリアしやすくし、その国や地域での市場シェアを迅速に確保することが主な目的です。


例: 

- 米国の製薬会社が、アジアやヨーロッパの製薬会社を買収して、現地市場に参入し、地域的なプレゼンスを強化する。


 5. 逆買収(リバース・テイクオーバー)

逆買収は、通常は規模の小さな企業が、規模の大きい企業を買収する形を指しますが、製薬業界では、特に財務や上場の面でメリットを得るために使われることがあります。例えば、上場していないバイオテクノロジー企業が、上場している製薬会社を買収することで、間接的に上場企業となることがあります。


例:  

- 新興バイオテク企業が財務力を強化するために、中規模の上場企業を逆買収し、迅速に資金調達や市場拡大を図る。


 6. 合弁事業やパートナーシップからの買収

最初は合弁事業や共同開発パートナーとして協力し、後にフル買収するケースもあります。この戦略は、リスクを分散しながらパートナー企業の技術や製品の価値を見極めることができ、結果的に両社の利益を最大化できる可能性があります。


例:

- 最初は共同で新薬開発を行い、その技術が成功した後に相手企業を買収し、独占的に権利を取得する。


 7. ディストレストアセット(破産企業)の買収

経営が悪化している企業や、財務上の問題を抱えている企業を買収する戦略です。ディストレストアセットを低価格で取得し、自社のリソースで再建することで、長期的な利益を得ることが目的です。特に、特許や技術が魅力的な企業が対象となります。


例:

- 経営が悪化している企業が開発していた希少疾病薬を持つ企業を買収し、その技術を利用して自社のポートフォリオを強化する。


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製薬企業がどの買収戦略を選ぶかは、その企業の長期的なビジョンや市場環境によって異なりますが、最終的には新薬開発のリスクを最小化し、競争優位性を高めることが共通の目的です。



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