見出し画像

がんと『コーヒー』

前回「お茶」に関してお話しさせていただきましたところ、じゃあ「コーヒー」ではダメなのか?というご質問を頂戴いたしましたので、今回は「コーヒー」とがんの関係についてお話しして行ければと思っています。

―――――――――――――――――――――――――
▼「コーヒー」と健康
―――――――――――――――――――――――――
コーヒーには、いくつかの健康上の利点があることが知られています。
「がん予防」もその一つではありますが、それに関しては後ろの項として、「がん予防」以外にどのような健康面でのメリットがあるのか?からはじめたいと思います。
第1に、脳や認知症に対する効果が期待されています。
コーヒーに含まれるカフェオイルキナ酸が、アルツハイマー病の発症を抑制するのではと言われています。また、コーヒーに含まれるポリフェノールが脳卒中のリスクを軽減する可能性があります。さらにもし脳卒中を起こしてしまった場合でも、コーヒーを習慣的に飲む人は、その後に起こる認知症の重症度が比較的軽度であったとの報告があるようです。
さらにパーキンソン病の発症を抑制する可能性が期待されています。
「コーヒー」は、脳にはとても良い働きがありそうですね。
次に糖尿病の発症予防にも有効だと考えられています。
コレステロール値を下げる効果と善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増加させる効果、脂肪を分解する効果があり、コーヒーを飲むだけで生活習慣病が改善できれば楽チンですね。
―――――――――――――――――――――――――
▼「コーヒー」の有効成分
―――――――――――――――――――――――――
上記の効果は、コーヒーに含まれるポリフェノールの効果によるところが大きいようです。
コーヒーには、クロロゲン酸とよばれるポリフェノールが多く含まれており、コーヒーの黒っぽい色や苦味、香りのもとになっています。そのクロロゲン酸がもつ抗酸化作用が色々な健康面でのメリットを発揮しているようです。
ちなみにコーヒー1杯(約140ml)には、約280mgのポリフェノールが含まれており、この量は緑茶の約2倍に相当しますし、赤ワイン1杯と同程度らしいです。
また「コーヒー」には、ご存知カフェインが含まれています。
カフェインには、利尿作用といって、トイレが近くなったりするようなデメリットもよく知られていますが、眠気覚ましとしてカフェインの覚醒作用を利用している方も多いのではないでしょうか。
カフェインは摂取後約30分で脳に到達するので、そのタイムラグを利用して昼寝をする「コーヒーナップ」というものを聴いたり、実際にやっているよという方も多いかもしれません。
カフェインには、集中力を高めることで作業効率の向上効果があるとされていますし、運動能力を向上させる効果や脂肪燃焼効率を良くする効果があることから運動前に摂取している方もいるようです。
カフェインも、緑茶の約2倍ほどコーヒーに含まれているようです。
―――――――――――――――――――――――――
▼「コーヒー」とがん予防
―――――――――――――――――――――――――
巷では、「コーヒー」を飲むと「がん」になるというウワサがあるようですが、これまでの研究報告からは、通常の範囲内の摂取では、いかなる部位のがん発生とも関連はないとのことです。通常の範囲内を超えて多飲する場合にはその限りではないようなので、摂取は常識の範囲内がよさそうです。
とはいえ、過剰に摂取したからといって、「がん」になるというデータがあるわけでもなく、なるかもしれないし、ならないかもしれないということでしょうし、「コーヒー」を日々大量に摂取しなければならないような環境で仕事をされている方をイメージすると、とてもストレスフルなのではと考えますので、そのようなストレス環境の方が「がん」への影響が大きそうですね。
一方、コーヒーの「がん予防」に関しては、国立がん研究センターの調査(多目的コホート研究JPHC study)によると、肝臓がんの発生率が低下する事はほぼ間違いないようです。
ほとんどコーヒーを飲まない人に比べて、コーヒーを飲む頻度や量が増えるほど、肝臓がんになるリスクが低下し、毎日5杯以上飲む人は約4分の1まで肝臓がんの発生率が低下していたとのことです。4分の1とはすごい抑制率ですよね!
とはいえ、なぜコーヒーを飲めば飲むほど肝臓がんの発生率が低下するのかは、実のところよくわかっていません。肝臓がんになる方の多くはB型もしくはC型肝炎ウイルスが原因ですので、肝炎ウイルスの活動を抑える効果があるのかもしれませんし、ウイルスによる炎症(肝炎)を抑えるのではないかという仮説もあるようです。
また、先に述べたクロロゲン酸などのコーヒーに含まれるポリフェノールによる抗酸化作用が「がん」の発生を抑制する可能性がありますが、肝臓がん以外の「がん」の予防にはあまりハッキリとした効果がみられていないようですので、肝臓がんにおいてはコーヒーの様々な効果が丁度良い感じでがんになることを防いでくれるのかもしれません。
(注意:肝炎ウイルスに関しては、良い治療がありますので、コーヒーさえ飲んでいれば大丈夫とは決して考えず、それら良い治療をきちんと受けてくださいませ)
―――――――――――――――――――――――――
▼「コーヒー」と進行がん治療
―――――――――――――――――――――――――
進行がんに対して、「コーヒー」を飲むことで、治療効果がアップするとか、副作用が軽減するなどの何らかの良い変化があるといいのですが、残念ながら今のところそのようなデータはないようです。
一時期、先進医療として、化学療法に伴うカフェイン併用療法が、悪性骨・軟部腫瘍に対して実施されていたことがあるようですが、諸事情で頓挫してしまったようです(ご興味がございましたらインターネット検索してみてください)。
一方、コーヒーに含まれるカフェインの影響により、使用している薬剤が影響をうける懸念があります。
特に内服薬の場合、カフェインにより胃酸の分泌が促進されることで、内服薬の溶解や吸収に影響が生じることがわかっておりますので、コーヒーで薬を飲むことは避けた方がよいですし、できれば薬の服用の前後30分はコーヒーを飲まないようにした方が良いようです。
同じ理由で、緑茶やコーラなどで薬を飲むのも避けた方が無難です。

―――――――――――――――――――――――――
▼まとめ(というか個人的感想)
―――――――――――――――――――――――――
「肝臓がん」が心配な方は、コーヒーをそれなりに沢山飲むと良いようですが、残念ながら「肝臓がん」以外の多くのがんにはあまり積極的な効果は認められていない様です(残念)。
とはいえ、「コーヒー」に「がん予防」を強く期待して飲んでいる人は少ないでしょうし、少なくとも「がん」を増加させることはないようですので、安心して飲んでいただければ良いのかなって思いました。
「コーヒー」で強制的に目を覚まして働かないとならないような環境の方が「がん」の発生に影響しそうなので、長期間そのような環境に従事している方は、しっかりと健康診断を受けましょう!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。

いいなと思ったら応援しよう!