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書店の未来とは?

『ユリイカ2019年6月臨時増刊号 総特集=書店の未来-本を愛するすべての人に-』(青土社)

「出版不況」「活字離れ」というワードが当たり前に語られ、出版界を取り巻くニュースには、もはや枕詞のように用いられる。

だが、それは本当なのだろうか?
本当に、人々は本を読まなくなっているのだろうか?

確かに書店の撤退や倒産は後を絶たないし、大手取次会社の業績も悪化するばかり。出版社は高い返品率に苦しみ、自転車操業的に新刊を刊行するという悪循環に陥っている。

「並べさえすれば本が売れていた時代」は過去のものとなり、改革を放置し続けた長年のツケを、今まさに払っている。

大量の雑誌販売に依存してきた流通システムや、再販制・委託制といった、これまでの出版界を支えてきた枠組みにも、制度疲労が生じている事は間違いないだろう。


それでも、と思う。

それでも本を読む人は今日も読み続けているし、書き手は日々生まれ、明日も明後日も魅力的な本が刊行される。いくら「売れなくなった」と言われても、数千、数万という単位で印刷され、全国に配送されてゆく。

個人で作るリトルプレスやZINEは隆盛で、活版印刷ブームのように、数は少なくても印刷や製本にこだわった本も次々登場している。

そして何より、個人の単位で本を売る人が増えてきている。それはここ数年で増えてきた、いわゆる「独立系書店」だけでなく、本職を持ちながら、いわば「課外活動」としてイベントに出店したり、貸し棚に本を置いて販売している人たちも含まれる。

とりわけ「独立系書店」と言われる小規模な書店は、確実にそのファンを増やし、発信力を高めている。出版社にとっても、新刊プロモーションの一貫として従来の大型店でのサイン会などだけでなく、そういった「小さいけれども影響力のある」書店と積極的に組むことによって、SNSなどで話題を提供している。

これらの動きは、ネガティブに語られがちなこの業界に置いて、間違いなく希望の光だろうと思う。


本書では、小さな書店、個人の本屋を始め、現役の書店員、チェーン書店の社長、Amazonの事業部長など、様々な段階・サイズで本を売る人々が登場し、それぞれが現状を、そして未来を語っている。


簡単ではないけれど、決して暗くはない将来。
むしろ見方によっては、そして取り組みによっては
十分に明るさの見える未来。

まだまだできることは、山のようにある。

そして自分ならば、ここにどんな「未来」を書き、描くのか、
そのことを真剣に考えたい。

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