夏バテ中の薄口正気メモログ

たまにメモ帳を整理しようと思って確認すると覚えのないことが書いてある。そういう時は自分が恐ろしくなる。で、そのまま残すか消すかで唸る羽目になるのだ。

「覚えていて欲しいのはたった一つだけ。私が思想家ではないということだけ」

「狂気、狂気、狂気!ケケケケケ」
「大丈夫ですか?」
「はい、至って正気でございまする」
「そうですか」

「なんというか、こう、すごいね。最早廃墟に片足突っ込んでるよ」
「そうでしょうか」
「陰気すぎて悲しくなったりしてこないの」
「多少は」
「多少かあ〜」

「ところでところで」
「はい」
「あれは何?」
「あれは人力時計ですね。時間の経過を盤面なんかじゃなくもっとカジュアルに楽しもうという趣旨で売り出されてます」
「カジュアルに」
「ええカジュアルに」
「うーん、でもでもこれって人権剥奪じゃないの?」
「どうなんでしょう?」
「興味ナシ?」
「ええまあ。かなりどうでもいいといいますか、そもそもこれも貰い物なので」
「ははあンなるりょね」

「デデンデンデデンデン、ドンドン、デデンデンデデンデン、ドンドン、デデンデンデデンデン、ニョ〜〜〜ン」
「野口英世が一枚、野口英世が二枚、野口英世が三枚、っクソがよオン」
「果てしない食欲と共に大海原へ旅立つ睡眠欲と性欲に別れを告げるのであります!トゥナイト!」

「質問質問!」
「なんですか」
「えっとねえ、例えばこう、止むに止まれずサクッと人を殺しちゃたとするじゃん。そういう時はどうする?」
「定期的に生ゴミがどうしても多く出てしまうような食事を作ります」
「なんで?」
「死体を秘密裏に処理したい場合は生ゴミに混ぜて少しずつ捨てるのが現実的らしいですから」
「それも本の知識?」
「はい」
「ふうん、まあなるりょね」
「大丈夫ですよ、そんなことしませんから」
「いやいやどうかな」
「しませんよ。ああでも、食べるのはおすすめしないです」
「なんで?」
「身体に悪いですから」

「逃げるは恥ではない!ここで逃げずに無様に死ぬよりかはずっと賢い選択だ。そうだろうろう!ろうろうろうろろろろろろロロロロろろろろろろ」
「いいえ。ここは逆転の発想をすべきでしょう」
「ギッギギ逆転の発想?何それ?」
「はい。逆にここで死んでみる、というのはいかがでしょうか」
「はあ」
「端的に言いましょうか。あなたは何かしらの病気です」
「はあ」
「もしかしたら死ぬことで治療できるかもしれません。この清水の舞台から飛び降りることでね」

「ここに魔弾があるでおじゃる」
「うん」
「あげよう」
「うん、ありがとう。射手としての才はこれっぽっちもないけど、いやだからこそ、ありがたくいただくよ」
「それは良かった。伝承通りの効力を発揮しなかった時は交換対応してくれる安心サポート付きで実際安心」
「うん、わかったよ」

「お前に愛されるために俺は何をしたらいい」
「化け物は好きです。人間は気持ち悪いので」
「具体的に」
「特に顔の動きが気に入らないんです。あんな、いごいごと動く様を見ていなくちゃいけないなんて、虫唾が走る。まあ、こればっかりはどれだけ言葉を尽くしてもわかってもらえないでしょうけど」
「人間らしい造形は少なければ少ないほどいいということか」
「そうですね、そうなります」
「了解した」

「そんなのおかしいわ!」
「なになにどうしたのいきなり叫んだりして」
「だって、どうしてごくごく普通の幸せを掴んじゃったのよ」
「えっ?」
「この作者のことは信用できると思っていたのにい」
「うーん、じゃあどうなって欲しかったの」
「中盤までの展開からして最低でも半身不随、それか片割れが死亡、いいえできれば食人描写を」
「わあ、なかなかいい趣味」
「しょうがないでしょそういう性癖なんだもん」

「人は見た目によらないということ、何としても覚えていただきたい」
「内面もね」
「そりゃ俺は近接バーサーカーに思えるだろう。けど、実際は遠隔デバッファーが一番得意だ」
「ゴリゴリのヒーラーに見えてガチガチの物理タンクだったりね」
「そう。だからほっといてくれ」
「えへへ、これ常時PKできないからさ。ね」

「規律に従順な奴ほど何考えてんのかわかんなくて怖い、よね?」
「どうかな。反抗的なやつはお上からしてみればむしろ好都合、っていう考えは間違いなさそうだけども」
「うん、どこも一枚岩ではなさそうだよね」
「面倒なことにな」
「面倒なことにね」
「ねえ、これがバレたらどうなっちゃうのかな」
「ロクなことにならないさ」
「そうだよねえ」
「大丈夫、善を為すだけだ。そうだろう」
「うんっ」

「深海魚は永遠にあなたを見つめています」
「愛していると言うこと?」
「全てはきっとあなたの中に」

「優しくされると不安になっちゃうよ」
「そりゃまたどうして」
「嫌われていたいから、かなあ?出来るだけ嫌っていて欲しいの」
「へえ」
「本当に。本当に、そのためならどんな手段だってとってみせる」
「嫌ったほうがいい?」
「できることなら今すぐにでも」

「気がすむまで死んでいたい」
「済んだらどうするの」
「生き返るのさ」
「わあ」
「ひどい願望だろう」
「そうでもないんじゃない?それも思想の自由だよ」

「いつか消えて、滑って、そして消えていく」
「なんでなんだろう。なんでなんだろう。まるで盲目みたいに真実が見えないんだ」
「もし、もしも、私の心が読めるだなんて言うのだったら。お願いです。どうか、そのままにしていてください。一人にしてください」
「それが、望みです」

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