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医療が人を不幸にする時


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こんにちは医師/医療経済ジャーナリストの森田です。

「医療が人を不幸にする時」なんて物騒なタイトルをつけちゃいましたが、まあ、現場ではそういうこともありますね。

もちろん、医療事故とか医療ミスとかの話もそうなんですが、今回はそういう話ではなく、そしておそらく数的にはそれらより圧倒的に多いであろう、



「医療者から見た正解を悪気なく患者さんに強いしてしまう不幸」


というお話をしようと思います。


先日、『血圧が高くても一過性の高血圧は生理現象なので気にしないでいいよ。』と言う動画をYoutubeにアップししました。
すると予想通り?医療関係の方々から

「そんなことはない、血圧は高いと危険。高齢者が脳出血になったらどうするんだ!」

というお叱りのようなお言葉をいくつかいただきました。


まあ、たしかに医学的な正しさから言えば、血圧が高いと脳出血のリスクが上昇するのは間違いないところで、その意味では「高血圧は許容しない!しっかり管理する!」が正解なのですが…。

でも、血圧って常に変動しているもので、特に運動時とか精神的な興奮などで一時的に上昇するのは健常人でも当たり前に起こっている生理現象なんですよね。

動画でも言っています通り、重量上げの選手は血圧が一時的に300超えることもあるとか。


100%の安全を目指すなら自動車にも乗れませんし、お餅も食べられません。100%の安全はあり得ないのです。逆に人間の命は100%終りを迎える運命であることはわかっています。特に高齢者医療とか、終末期医療においては『安全』を重視しすぎることが、本来大事にすべきである『本人が望む生活や生き生きとした人生』を大きく崩してしまうことがよくあるのです。


足腰に不安のある人や血圧が上がっちゃう人の『安全』を考えれば、「歩いちゃダメ!」と車椅子移動を勧めることにになります。で、歩かなければ更に足腰は弱る。自由にトイレも行けなくなる(オムツになっちゃうかも)。移動能力の低下は人の生きる意欲を奪っていく。高齢者施設に行けば、そういう方々が非常に多いのが分かります。



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(写真はイメージです。)



生活を奪われ、生きがいをなくした高齢者は体力を落としやすいもの。
いずれ食欲が落ちてきたり、食べ物が気管や肺に落ちてしまう『誤嚥性肺炎』を繰り返すようになります。

それを『老衰の過程』と穏やかに見てくれればまだマシなのですが、血圧やら食事やらの『安全』をきちんと管理しよう!という医療人の清らかな思いが抜けなければ、あくまでも善意から「胃ろう」や「点滴」ということになるでしょう。『気管切開』という話になることもあります。



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(写真はイメージです。)



いろいろな管が入ると、多くの人は管を抜きたがります。それを阻止するために手には手袋がはめられてしまいます。



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(写真はイメージです。)


誰も悪気はないのに、医療者はただただ「医学的な正解」を遂行しているだけなのに、結果として『多くの国民が望んでいない医療』を提供せざるを得ない状況になってしまうのです。


医学的正解と本人の充実した人生のバランス。

そこにどうやって向き合うか、がこれからの超高齢化社会の医師に求められる資質なのでしょう。


医学的正解を知りながら、もちろんそれも提示するけれど、決して強要するわけではなく、生活に寄り添って、人生を楽しく生ききる、そのお手伝いをする。


その意識をもたず、世間一般の「安全」、 医療側にとっても『安全』な選択肢を選択し続けていたら、どんどん生活が奪われ、患者さんの人生の豊かな色彩も奪われてしまうのですから。


こうしてみると、

「医療者から見た正解を悪気なく患者さんに強いしてしまう」


このことが如何に社会全体にとってリスクの高いものなのか、がよくわかると思います。

欧米では、そうした『患者中心の医療』を掲げる、家庭医療・プライマリ・ケアが非常に発達していまして、そうした医師教育が盛んです。一方、日本では国も大学も『臓器別専門医』の養成に大きく傾いていて、真のプライマリ・ケア医を養成してこなかったんですね。


そのツケがどんどん溜まってきてしまって、今まさにこの分野で噴出していると言っても過言ではないと思います。


実は「夕張で病院がなくなっても死亡率は変わらなかった。逆に医療費が減ったり救急出動が減ったり老衰死が増えた」というデータの裏には、医療崩壊後の診療所院長・村上智彦先生を中心に展開された『プライマリ・ケア』の存在があったのですね。


そのへんのことは、僕の本でお読みください(^_^;)



・・・まあ、こんな僕の考え方、今の世の中ではちょっと突飛かもしれませんが・・(^_^;)


皆さんはどう思われるでしょうか。



注:この記事は投げ銭形式です。

医療は誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」、
と思っていますので医療情報は基本的に無償で提供いたします。
でも投げ銭は大歓迎!\(^o^)/
いつも一人で寂しく原稿を書いているので、
皆様の投げ銭から大いなる勇気を頂いております!
ありがとうございますm(_ _)m


僕の本

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財政破綻・病院閉鎖・高齢化率日本一...様々な苦難に遭遇した夕張市民の軌跡の物語、夕張市立診療所の院長時代のエピソード、様々な奇跡的データ、などを一冊の本にしております。まさにこれが地域医療・地域包括ケアシステムのあるべき姿だと思います。
日本の明るい未来を考える上で多くの皆さんに知っておいてほしいことを凝縮しておりますので、是非お読みいただけますと幸いです。

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著者:森田洋之のプロフィール↓↓

森田洋之のプロフィール写真

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夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)