おすすめられること と みつけること

『言葉はこうして生き残った』(ミシマ社)。


買いましたよ。


読みましたよ。


本をおすすめください、って云ってるひとに、本をおすすめられてるぞ。なにやってんだ、って思いながら、わりと持ち重みのある本の、いろんな作家、いろんな本について、丹念に書かれた一つ一つの文章を、たっぷりと楽しみました。


おすすめられて本を読む。ってとき、そのおすすめるひとをみてる気もします。


そのひとのいうことだからまちがいない、とか、あるいはたとえまちがってても、かまわない。もし自分にとっていまは面白くなくても、時が経って読み返すと面白かったり、そのひとが面白いと思うポイントを知ることが面白かったりするから。


そういう、寄りかかる信頼、みたいなのって実はそんなにないから、とてもありがたいです。

たとえばシャープのTwitterの中の人がたまに本を紹介します。僕はその本をたいてい買って読む。そのなかで、いままでいちばんすばらしい出会いを与えてくれたなあと思うのが、オカヤイヅミさんというかたの『ものするひと』(KADOKAWA)という漫画です。ポメラ使いの寡黙な作家さんが主人公の、「言葉」にあふれた静かな日常の漫画です。


この漫画に影響されて僕はポメラを買いました。(同時期にヤンデルさんにnoteに誘われ、同時期に田中さんの『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社)を読んだりします。書く、という行為、というか、言葉そのものに流されたい願望、みたいなのを発動させられてるような感じがしてます)


そのオカヤイヅミさんがイベントで大阪に来られた際、お会いすることもできました。(買いたてのポメラにサインしてもらいながら、「ああ、シャープさんのおかげだ」とかも思ってるわけです)


で、そのオカヤさんがイベントされたところが、toi booksさんという小さな(5坪と書いてました)、秘密基地みたいな本屋さんなのです。


かの書房さんの話、うかがって、すぐそのtoi booksさんとリンクしてしまいました。真ん中に、平積みテーブルがあって、その周りにコンセプトごとの棚。一冊一冊並んでる、その本たちを僕は一冊たりとも見逃したくなくて、背表紙の文字をずっと目で追っていました。とても居心地がよかった。


それは一冊一冊の本がとても愛されてる場所でもありました。


たぶん、かの書房さんもきっとそうなのでしょう。


正直に云います。
僕はとても羨ましい。


もっと正直に云います。
僕はそんな本屋がしたい。


……ふ。っとここでもう今回は終わろうかな、って思いましたが、またヤンデルさんの問いかけに答えてないや、って思ったので、(それでもなお、答えになってないかもしれないのですけれど)最近の新刊で気になった本のことを書きます。


「社長・経営者」って棚に入った『経営者の孤独。』(ポプラ社)っていう本です。ぱっと見、経営者のインタビュー集なんですけれど、「まえがき」を読んで、これ、なんか違うぞ。って。



「彼らが彼らの「孤独」について語るとき、
わたしはわたしの「孤独」について考える。
それは共感よりは共鳴に近く、だからこそ
そこで鳴る音は、ひとつひとつがすべて違う。
その音を聞くと、わたしは思う。
「孤独なのは、わたしだけじゃないんだ」」(まえがきより)


この棚でいいのか…。この本を持って少しのあいだ立ち尽くします。ビジネス書というにはあまりに深く心に届くものがあったので、戸惑ったのです。この著者さんはどんなひとなんだろう。とりあえず新刊話題書コーナーで面陳を増やして、追加注文をしました。どの棚が正解か、はひとまず、とにかく目にとめてほしい本でした。


著者は土門蘭さんという作家さんです。


このひとの本をもっと読みたい、と思いました。


著者紹介のところに共著で、『100年後あなたもわたしもいない日に』(京都文鳥社)とあったのですけれど、検索してもヒットしません。またそのタイトルだけで、読みたくてしかたなくなりました。


『100年後あなたもわたしもいない日に』(京都文鳥社)。その、ISBNコードのない、文庫本サイズの小さなケースに入った、すてきなすてきな美しい本を、僕はのちにtoi booksさんのテーブルの上で見つけることになります。



(…もう一回云っとこうかな…。僕はこういう本屋さんになりたいのです。)



(2019.7.26 前田 → 市原さん)

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