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【雑記】中身が空っぽのミイラ企業には、ほとほと呆れるという話

なんでもかんでもスタートアップと呼ぶ違和感

ここ5年くらいで地方都市においても「スタートアップ」という言葉が頻繁に使われてきているように感じています。スタートアップの文化やエコシステムにまでは理解がまだまだ届いていないと思われますが、起業が身近なものになってきてはいます。

しかしながら、猫も杓子もスタートアップという言葉を使っていることには違和感を覚えます。特にスタートアップと地場の企業をつなげるマッチングプラットフォームでは、プラットフォーム側が敢えてスタートアップという言葉を使わせているためか、コンフリクトを起こしているように思えます。

おそらく、プラットフォーム側が「スタートアップ」と敢えて言うことで何か革新的で急成長を遂げているイメージを相手側に魅せたく、期待を抱かせたいという思惑が働いているのだと考えます。しかし実際のところ、スタートアップとして登録している企業の多くは、一般的なベンチャー企業だと思われます。

私の経験談ですが、プラットフォームの目的は共創であるはずなのに、企業側がお金だけ出せば儲けさせてくれるものだと勘違いされ、やり取りにとても困ったことがあります。何度も「共創ですよね」と話しても、「どうやって儲かるのか説明してくれ」の一点張りだったのです。

企業の消費者化

なぜそのようなことが起こるかと言うと、二つ理由があると考えています。まず一つに、単純にスタートアップとベンチャーがごっちゃになっているからです。たしかに、スタートアップも登録されているとは思いますが、その多くはベンチャー企業であり、両者の体質は異なります。

もう一つは、企業の「消費者化」です。古い慣習の残る企業の多くの保守的な人たちは、安定性を求め過ぎるあまりリスクを取れず、消費者化しているように思えます。一緒に何かを創出しようとする生産者ではなく、ただ単に「お金は出すので何か私たちが儲かることをやってください」と如何にもお買い物的なのです。

健全な利用者もいる一方で、リソースを提供するという立場を勘違いして、彼らは“お客様”に成り下がっています。事実、自分たちでイノベーションを起こせない(リスクを取れない)から、プラットフォームを使って手軽に儲けようとしているのではないのでしょうか。

私たちは下請けでもなければ代理店でもありません。儲かる事業をパッケージとして販売しているのではないのです。私たちは早期に辞退したので大きな事にはなりませんでしたが、それでも何度も余計なやり取りを強いられたことでかなり疲弊したことを覚えています。

このようなことは多かれ少なかれ、至るところで起きているのではないでしょうか。

スタートアップとベンチャー、スモールビジネスの違い

これらの言葉は自治体においてもよく混同して使用しているように感じられます。スタートアップ支援と言いつつ、従来の小規模事業者支援であることが多々あります。また、似たような言葉で「スモールビジネス」という言葉もありますので、それぞれの言葉が何を意味しているのかを簡単に整理したいと思います。

スタートアップ

スタートアップとは、新たなビジネスモデルで市場を開拓し、短期で急成長をする組織とされています。ほんの数年間などの短い期間で数千億円の価値評価が付く企業や、数十年で世界を変革するようなビジネスを目指す企業などを指します。評価額が10億ドル以上、設立10年以内の非上場の企業はユニコーンと呼ばれています。

ベンチャー

ベンチャーとは、独自のアイデアや技術をもとにして、新しいサービスやビジネスを展開する企業を意味します。成長過程の企業を指す言葉として幅広い意味で使われており、その多くは小規模から中規模の企業です。ベンチャー(venture)はそもそもアドベンチャー(adventure)からきており、冒険を意味します。

スモールビジネス

スモールビジネスとは小規模かつ少ない資金で行うビジネスのことを言います。フリーランスやノマドワーカーなど一人で始めるビジネスも該当し、具体例として、美容室や飲食店、ブロガー、ユーチューバーなどが挙げられます。転んで(失敗して)起き上がれないようなリスクは取らずに、初期段階から徐々に成長していく着実な経営を目指します。

ローカルの企業が大切にすること

前述の通り、スタートアップとベンチャーの明らかに異なる点として、「短期的な急成長」があります。スタートアップは事業の急成長を図るために、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などから資金を調達するのです。事業を成長させた先には、M&A(バイアウト)やIPO(株式公開)によるEXIT(イグジット)を図ります。

そして、最終的には創業者をはじめとする出資者などが株式を売却して​​​利益を獲得し投資資金を回収するのです。当然、そこに至るまでのリスクは非常に高く「千三つ(せんみつ)」と言われています。つまり、1000社あったら3社しか成功しないということです。

これからわかる通り、私たちはローカルのベンチャー企業であってスタートアップではありません。短期的な急成長も望んでいませんし、会社の売却も考えておりません。ましてや、アイデアやビジネスプランを出して儲けさせてあげるなんて、そんなアホな話なんかないのです。

地域の社会課題の解決を目的としているベンチャーの計画に、M&A(バイアウト)やIPO(株式公開)は含まれてはいないと思いますし、少なくとも私の計画には一切ありません。ローカルの企業が大切にすることの一つは、地域の雇用です。その手綱を手放したら、地域にどのような影響が出るかは想像に難くないことです。

企業には次の時代に相応しい社会そのものをつくっていく役割がある

消費者化しまっているのは、前述のような企業ばかりではありません。たまに個人の方から起業について質問されることもありますが、その質問のほとんどが「How to(やり方)」であり、「Why(なぜ)」を訊ねられることはありません。

無料で手軽に儲けられると思ったら大間違いで、どんな事業もやり方を真似するだけで上手くいくことはありません。課題は地域によって異なります。Whyの部分が本質であり、その答えなくして起業はありえません。ググっても出てこないし、自分の足を使って自分の頭で考えなければならないのです。

同様に企業においても、もしWhyが抜けてしまっているのであれば、それは事業をやめる“潮時”なのだと考えます。“なぜ”を考えずに儲け方ばかり探っている企業に存在価値はありません。「企業は社会の公器」という松下幸之助の言葉もあります。

経営が破綻しているにもかかわらず、金融機関や政府機関の支援によって存続しているゾンビ企業も問題ですが、自ら考えることなく中身が空っぽで、からからに乾き原型を留めているだけのミイラ企業も非常に大きな問題です。

企業には次の時代に相応しい社会そのものをつくっていく役割があることをしっかりと思い出してほしいと願うばかりです。

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