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Ultra Trail Angkor に参加してきた。前編

元気です。

カンボジアの唯一のウルトラトレイル、「Ultra Trail'd Angkor」に参加してきた。

今年5回目を迎えるこの大会、カンボジアのフランス系旅行会社とフランスの教育系NPOが主催している。

16kmWalk、16km、32km、42km、64km、128kmと距離のバラエティに富んでいる。参加者はフランスから参加するランナーが多く、「ラン+観光+社会貢献」がこの大会のキーワードと感じる。

僕は128kmに参加。昨年は50kmで熱中症でリタイアしたのでリベンジ。

木曜にAngkor Pradice HotelでBIBのピックアップ。
128kmはどうやら80人くらいの参加者の模様。

頑張る。前日は昼にはJungle Burgerで、夜にはタイ・ベトナムから参加したランナーとManmaというイタリアンで決起会。

jungle burgerのバーガー。でかい。

Manmaはイタリアン。マラソン前の御用達。パスタとピザが美味い。もう食えない。レースに向けたカーボローディングは十分だ。manma写真がない。
興味ある方はこちらどうぞ↓↓↓

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レースのスタートは午前4時。3時にAngkor Pradice Hotelに来ればバスが来るとのことで、2時45分にトゥクトゥクで向かう。夜中でもすんなりトゥクトゥクが捕まる。眠らない街だな、シェムリアップ。宿はパブストリート近くだったけれど、ガンガンクラブミュージックが流れていて観光客が乱痴気騒ぎをしていた。

ホテルのロビーはランナーが所狭しと集まっている。お祭りが始まる前の高揚感がある。

もう座る場所がないからタイルでストレッチをする。冷たい。気持ちいい。

時間になったのでシャトルバスに乗って向かう。

ぎゅうぎゅう詰めで乗ると、僕がベトナムマウンテンマラソンのシャツを着ていたので、後ろのベトナムランナーに声をかけられる。一緒に頑張ろうぜと話す。レースに出場するというだけで一体感がある不思議な感じ。知らない人にも声をかけて仲良くなれる。こういう空間がマラソンイベントの楽しいところだ。

アンコールトムの中にある「象のテラス」に着く。ここがStart / FInish の場所になる。この象のテラスは、アンコール王朝時代に王が兵を送り出し、そして帰還の儀式をした場所と言われるこの広場。これから長い旅に出かけ、そしてボロボロになって帰ってくるにはピッタリの場所だ。とはいえ、周りは暗くて象もテラスも見えない、草っぱらなんだけど。

記念撮影をして説明を聞くと、まもなくスタート。結構タイトだ。一斉にランナーが走り出す。ヘッドライトをつけた一段が砂ぼこりをあげながら遺跡の中に消えていく。「あぁ、今年も始まってしまった・・」辛い記憶が蘇る、、、

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2019年のアンコールトレイルは初めて128kにエントリーした。100kmを超えるレースは初めてで、(Penang Eco 100kmのみ)ペースがわからなかった。30kmまで完全にオーバーペース。40kmくらいから足が動かなくなり、頭がクラクラして歩けなくなりリタイアした苦い思い出がある。

そもそもこのレース、そんなに時間の厳しい大会ではない。128kmで28時間。4.77km/hで進めばいい。4.77km/hと言うと、キロ13分ちょっとだ。早歩きくらいで歩き通せばゴールできるという計算で、標高差の少ないこのくらいの大会では全然厳しい基準ではない。

なので今年は極めてゆっくりと控えて控えていこうとスタートしたのだった。

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スタートしてほどなく遺跡エリアに入る。ずんずん走るランナー達を横目に後ろからレースを進めることになった。最初の10kmはアンコール遺跡とジャングルを交互に走るエリア。とても楽しい。ここで飛ばしてしまうのがここ2年だった。ゆっくり行きましょうね、とスタート前に話していた日本人ランナーと「気持ちいいペースですねぇ」と言いながら歩を進める。さくさくさく。

あたりはまだ真っ暗なので、集団で走ると走りやすい。トレイルランは、コースに設置されたテープと反射板を目印に走る。だから、どちらに向かうか判断するには、顔を上げてヘッドライトを当てて向かうべき方向を探さなければならない。一方で走る道はもちろん舗装されてはいない。穴もあれば木の根も岩もあるトレイルだ。
それでも、ヘッドライトが照らせるのは(広い照射範囲があるライトだとしても)一人で一点だけだ。一人で走ると、前を見ると足元が見えず、足元を照らすと、前が見えずどちらに走ればいいかわかりにくい。なので集団で走る方が疲れにくく走りやすい。早くも走れると思う。なので、必然的にランナーは固まって走るようになるのである。まるで群雄魚だ。ゆらゆらとヘッドライトの光を照らしながら前に進む。ザッザッザッ。

パタパタと走りながら会話が弾む。次のレースの話、前回の記録の話、次の目標、レースの完走、今回のレースの作戦、使っている道具について、持ってきた食料や飲料についてなど、話が尽きない。走るよりも会話に夢中になってるうちにひとつめのエイドだ。

今回のエイドはアクエリアスが各エイドに、そして水、バナナ、ロンガン、みかん、バナナチップス、干し柿?のようなフルーツを干したもの、カステラのようなおやつ、というラインナップだ。やや質素だが、こんなもんだろう。アクエリアスとみかんを食べて5分ほどで出発した。みかんがうまい。この後もみかんに救われる。

次の区間はジャングルが続く。砂っぽい道、農道も通る。スタートして1時間半くらいになると徐々にランナーもバラけてくる。やや明るくなってくる空を見上げると、静かなジャングルのなかの間から群青の空と三日月が見える。草木の匂いに包まれながら明け方の大自然の中を走っていることを感じる。非日常を感じ、幸せな気分になる。そして白んでくるそれに朝を感じる。「ながいながい一日がはじまるなぁ」とつぶやく。ワクワクと怖さが入り交じっている。さっきスタートしたランナーもそれぞれの思いでこの朝を迎えているんだろう。おのおのの場所で走りながら、一緒に朝を迎える。目には見えない妙な一体感が心地いい。やっぱり僕はトレイルランが好きだ。足取りは軽快だ。タッタッタッ。

第2エイドも同じように質素なエイドだった。先に行ってもらっていた日本人ランナーに合流する。「みかんがうまいよ」と言われ食べる。やっぱりみかんがうまい。エイドスタッフは「クロイポーサット(ポーサット州のオレンジ)だよ」という。ポーサット州やバッタンバンなどのカンボジア北西部はみかんの産地だ。なるほどうまい、と2個食べた。みかんにはタイ語のシールが貼ってある。真偽のほどはわからない。エイドを出発する。

7時を過ぎるとすっかり明るくなり、第2エイド過ぎでヘッドライトはリュックにしまうことにした。64kmメンバーはそろそろ急ぎます、と先に行ってしまった。彼らは残り約40km、僕らはまだ100km以上ある。一緒にいるけど別のレースだ。いってらっしゃい、またあいましょう!と見送る。すぐに見えなくなる。64kmだったらどんなに楽だろう、、なんて思い始める。

いつもそうだ。エントリーするときばかりは意気揚々としているくせに、せっかくだから長いレースでなくちゃ!と言ってクリックするくせに、いざレースとなったら、「こんな長い距離にエントリーするんじゃなかった」と思う。何度やっても後悔するこの現象に誰か名前をつけてくれ。笑

西に向かうルートに出ると「これでもか!」とでかい太陽が顔を出す。舗装されていない荒々しい大地に太陽が登る。写真を撮る。きれいだ。

左が昨年128km5位の栗原さん、右が先週70kmのVietnam Trail Marathon完走している明さんだ。まぁ、ふたりともジャンキーなランナーだ。そしてとにかくランを楽しんでいる。一緒に走ると楽しくなってくる。

次のエイドはPhnom Bok(ボック山)という山の麓だ。走りながらうっすらと山が見えてくる。「あれに登るんスね~」「今年も来たね~」なんて話していると、もう初詣のような気がしてくる。山はだんだん近づいてくるけれど、なかなかクリアに見えてこない。というのも今年はPM2.5が多い年のようなのだ。肺に良くないんんじゃないか?うーん、気にしないでおこう。トットットッ。

なんとなーく、霞んでいる。。

歩を進めて山の麓に着いたのは朝の8時くらいになっていた。このあと、この山を登ることになる。これまでのエイド2つをほぼ休んでいなかったこともあり、二人を見送り少し休むことにした。時間はある。休むが勝ちだ。20分ほど休んでいると山を登り降りてきた64kmの日本人ランナーの田沢さんが戻ってきた。このエイドは登る前も降りたあとも利用出来るいいエイドだ。「いや~堪能してきましたよ~~」と笑顔だ。かなりきついこの山登りを「堪能」と表現するあたりに、トレイル愛を感じる。もう60歳だという田沢さんに圧倒され、僕も重い腰を上げ、山を登る。

山と言ってもこの山は、コンクリートで出来た階段を直登するという、極めて単純な登山になる。登山をする人にとっては「登る価値がない」と言う人もいるのかもしれないが、このトレイルにおいては重要な登りパートだ。トレイルには山のパートが不可欠なのだ。そして、直登するので、急勾配でなかなかハードだ。

登りながら、塩分補給をした。今回良かったのはインスタント味噌汁だった。一緒にきた丸岡さんにもらったもので、この山を登りながらちゅうちゅう舐めた。これが良かった。うまかった。ちゅうちゅうちゅう。

発汗があったあとに塩分をとると塩辛さを全然感じない。その上旨味がたっぷりあるので、ジェルやアクエリアスやバナナなどの甘みに飽きた口にはとても良いリフレッシュとなった。今後は自分でも数袋常備しようと思った。

このボック山は登頂すると絶景だ。何せ周りに山がほとんどないのである。だから毎年写真を撮るのだけど、今年はPM2.5スモッグで全然見えなかった。PM2.5恐るべし。写真は撮らずに下山することにした。そしてこの山、山頂にはちょっとした遺跡がある。これだけ平坦な場所の単独の山というのは、昔の人にとっても神に近い神聖な感じがしたのだろうなぁと思う。そりゃ作るよね。

山頂の遺跡は回廊の天井が崩れていたり、レリーフが綺麗に残っていたり、ほかに補修などもされていないので、なかなかドラクエ感があるスポットだ。時間があればゆっくり見たいなぁと思いを少しはせながら、山道を下る。ここに来るのはトレイルアンコールの時だけだ。これからもそうだろう。これにて35分の登頂&下山初詣が終了した。
あとは高低差のない長い旅だ。

山麓のエイドでまた20分ほど休んでスタートする。最後尾スタートした丸岡さんが山麓に到着して挨拶。「去年よりもかなりゆっくりなペースできたので、疲れが少ないですね、頑張りましょうね」と声を交わして再スタート。時間は9時前。すでに太陽は高く登り暑くなり始めていた。ジリジリと太陽からの熱を腕に感じる。暑くなってきた。

そう、Ultra Trail Angkorは暑さとの戦いなのだ。

~後編へ続く~

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