「四つの村と封印の洞窟」制作裏エピソード(WWA Advent Calendar 2024)
本記事は、ひろちょびが今年Plicyに投稿し、WWA Contest 2024にも出展したWWA作品『四つの村と封印の洞窟』を制作するにあたり考えたことを、色々と記したものです。
全てを書くと長くなりすぎるので、能力設計等ほぼ確実に考えることは省略し、特に独自性があると思われる事項に絞って語っていきます。
それでも十分長くなってしまったので、目次から興味のある項目だけでもお読みいただけると幸いです。
※WWA作品『四つの村と封印の洞窟」のストーリー・攻略・一部ルートに関するネタバレを含みます。(ラスボス・クリア付近の画面や、難易度の高いルートに関する記述はほぼありません。)
※WWA Advent Calendar 2024の6日目の投稿です。
『四つの村と封印の洞窟』とは、こんなゲーム
まず『四つの村と封印の洞窟』とはどんなWWAゲームか。
投稿したWWA Contest 2024及びPlicy上の説明文には、以下のように書きました。
簡単にいえば、以下のような特徴を持っています。
RPG (※観点によっては「ダンジョン系」と評される場合もあり)
ルート分岐があり、行動次第でエンディングが変わる
ゲームは「コスラ村」からスタートしますが、この時点で「ワカオー村」「ネコポン村」「エガサ村」のどこから訪れるべきか、明確には決まっていません。プレイヤーが決める必要があります。
選択理由の最たる例としては、「各村長宅で貰える装備が異なる」ので欲しい装備がある村に向かう、というものでしょう。
例えば「ひとまず攻撃力をあげよう!」と思ったら、南東にあるエガサ村を最初に訪れて「黄金のオノ」をもらう、という流れになります。
コンテスト投稿作品としての設計
ところで、自分は何故『四つの村と封印の洞窟』をコンテスト作品として制作したのでしょうか。そのことに一応触れておこうと思います。
WWA制作に2020年に復帰して以来、WWAコンテストには毎年参加してきました。今回、WWA Contest 2024への参加にあたり最も重視したのは「WWA Contest 2023のリベンジ」という側面です。昨年の『深夜帰宅』ももちろん頑張って作った作品ではありますが、制限時間(制限歩数)でミニゲーム感が強く、得票(昨年までは投票者にとっての上位3位以内)に繋がりにくかったと考えられます。
そこで今年は、少なくとも作者的には本気を込めやすい、正統派寄りの「RPG」または「ダンジョン」作品を作りたいと思いました。
※ただし実際には、今年はコンテスト序盤時点で超大作が複数参戦することが判明したのを受け、結局昨年同様「1回のクリア時間は短く、何周かプレイしたくなる」という立ち位置の作品を目指しました。実際のコンテスト結果も、順位・得点こそ上がりましたが、本質的には昨年と同傾向だったのかなとも思います。
色々考えた上で、2024年上半期時点で、目標は以下のようになりました。
(自分の過去作品比では)本格度の高い、王道寄りの作品にする
ジャンルは「RPG」または「ダンジョン」
攻略順の自由度が高い(復帰後の自分の作品の傾向を引き継ぐ)
RPGなら、2022年作品『10日以内にセントラルゾンビを倒せ』にストーリーを乗せたようなイメージ。
ダンジョンなら、2020年作品『東京ダンジョンランド』のダンジョン内容を変えた、続編的な立ち位置。
5〜8月頃は複数素案を並行的に制作し、ダンジョンの方も色々な作品形態・ダンジョンギミックを考えていたのですが、最終的に「RPG」として『四つの村と封印の洞窟』が完成したわけです。
四つの「村」の位置関係
「いくつかの対等な村を作る」というところから、程なくして「東西南北に合計4つの村を作る」という発想に至りました。そして、以下のように発送を進めました。
4つの村のうち、1つの村をスタート地点とし、他の3つの村を全て訪問する必要がある
全村を訪問した後、最終課題を解決するための「ラスボスの居場所」を別途用意する(→後の「封印の洞窟」)
4つの村のうち2つの村を直に繋ぐ、合計6個の「道」があり、それぞれ個性的なダンジョンのようになっている
当初は「道ごとにボスがいる」という案もあった
各村の設定は、東西南北の位置関係及び「色」を元に考える
「村の配置が東西南北」かつ「各村を直接繋ぐ道が全てある」という場合に、東西と南北を結ぶ道が交差してしまうという問題点があります。これを当初は南北を結ぶ道を「洞窟」という名のダンジョンで結ぶことで解決しようと考えていました。これが「封印の洞窟」要素の具体的な元ネタになったと言えます。
最終的には色々考えた上で東西南北配置を断念し、スタートの村を「中央」に置き、残りの村を「北・南西・南東」に置くことにしました。立体交差は解消されましたが、中央の村と北の村だけ直線距離が短くなるため、その道を「封印の洞窟」の一部とすることにしました。コスラ村からネコポン村へ向かう際には上り階段を2回経る形式にすることで、実質的な移動時間が他の村への道と同様になり、また山登り感を演出しています。
なお、各村の設定については後ほど「〜元ネタ」の項目で語ります。
この作品だからこそ産まれ得た要素
こうして「進行順が一通りでない、しかし数パターン程度の決められた道は存在する」という特殊な状況が出来上がったわけです。
そして実際に制作を進めていくことで、色々と特殊な状況が発生したので、それを共有してみようと思います。
「村」や「道」に、どちらの方向から訪れるか分からない
例えば、ネコポン村の下の方にいる、オレンジ色の猫のキャラクターは何と喋らせるのが自然でしょうか?
街の入り口にいるから、「ここはネコポン村だニャ!」と言うでしょうか?
それとも、封印の洞窟側に居るから「この先は封印の洞窟だニャ!」と言うでしょうか?
答えは、その両方です。そうしました。
基本的には「この先の道を行くと○○村があるよ」というセリフを設定していたのですが、テストプレイをしている時に「○○村の方から来たのにそんなこと言われてもな」と気付きました。そこで急遽、特定の条件の時のみ「ここは○○村」と喋るように設定しました。
特殊なマップだからこそ、自然なセリフが変わって来たりもするんですね。
「封印のかけら」を全部の道に点在させた理由
実は、スタート地点以外の「3つの村を必ず訪れる」だけであれば、「6つの道」をすべては通る必要がなかったりします。極端な話、コスラ村と各村を繋ぐ道を往復するだけで済むわけです。
しかし、訪れる必要がないマップがたくさんあるというのも、広いマップを作り込んだ甲斐がないというものです。「全マップを巡った方が、モンスターもたくさん倒せて、アイテムも集まって、強くなれる」のは元からそうなのですが、より自然な形でプレイヤーがそのような行動を取れるようにしたいと考えました。
自分が導き出した結論は「全ての道を訪れる理由を強制的に作る」でした。
全ての「道」(封印の洞窟内を含む)に取得必須アイテムを設定することで、マップの広い範囲を必ず訪れる必要がある、という状態になりました。
それまでのテストプレイの感触も含め、「そこそこ強い敵(→魔女)」を倒すことで入手できるようにしました。装備をある程度揃えた段階で一気にダメージが減るバランスに設定し、自然と「3つの村を訪れた後の、中盤のタスク」となるようにしました。その時期であれば、道中の雑魚敵からのダメージも減っており、それぞれの道へも訪れやすくなっています。
アイテムに「?」(今こなすべきタスクを表示)「地図」(封印のかけらの所在地も表示)というナビゲーションアイテムを設定したのは、「封印のかけら」を追加したから、という側面もあったりします。
番外編:左右で能力の違うカニ
ワカオー村とエガサ村を結ぶ海岸には、何匹か「カニ」というモンスターがいます。このカニは、公式作品の『Fantasy Island2』でお馴染みの、横に2マス使うキャラクターです。このカニが使われる作品は、大抵は一方からのみ倒せたり、左右で同じ能力を設定する(どちらかを倒したらもう1マスのキャラも消える)というものになっていると思います。
しかし、せっかく2マスあるのだから、それぞれに違う能力が設定されていても良いんじゃないかと常々思っていました。そして、デフォルト素材のカニも実は時代の変遷で違う2種類存在していたため、これらを組み合わせる(+最新のケバケバしいカニの方は色を濃くして分かりやすくしておく)ことで、「左右の能力が違うカニ」を生み出しました。
このカニは、特段本作品のために思いついたものではなく、左右(や上下)で能力の違うモンスターばかりいるダンジョンを、単発作品なり東京ダンジョン2(仮)なりで披露する予定でした。しかし今回、「左右どちらから行くことになるか分からない」道を設定することになり、また道のバリエーションの問題から海岸も作ることになるであろうことから、そこにカニを置いたら面白いかな、と思いました。
村の名前や村長キャラと元ネタ
最後に、各村の名前の元ネタや、村長のキャラクターの理由などについて語ります。
なお村長に限らずですが、基本的に登場人物はデフォルト素材やその色違いにすることを前提としています。
コスラ村(中央)
名前の由来は「小倉(こくら)」+「スライム」。
マップの"Center"にあるので、Cっぽい読み仮名の地名を探しました。
スライムは雑魚モンスターとしてお馴染みですが、メインキャラクター級で味方にいるWWA作品も意外と少ないなと思い、採用しました。
青いのは、消去法的に「南」相当の色にしたため。あと、メイン中のメインキャラクターにはなるので、デフォルト素材そのままの色ではない方が良いかなとも思いました。
ネコポン村(北)
名前の由来は「熊本」「くまモン」を「ネコ」っぽく置き換えたもの。
マップの"North"にあるので、ナ行から始まる名前にしました。
大きいネコは味方キャラクターになる場合も多く安心感があり、また良い感じでファンタジー感も出るので、村長の役に据えました。
ちなみに、もし南(South)にネコが村長の村を置くことになった場合には「スコポン」という名前にしていたと思います。
ワカオー村(南西)
名前の由来は「大分」をひっくり返した「分大」から。
マップの"West"にあるので、「ワ」から始まる読みを無理やり作り出しました。
名前先行で、「分大」→「わ(か)・おう」→「若王」と発想し、若さに思いを寄せる存在として、デフォルト素材の老人(の色違い)を村長としました。
エガサ村(南東)
名前の由来は「佐賀」「長崎」あたりの並べ替え。
マップの"East"にあるので、強制的に「エ」から始まる名前にしました。
自分の作品の傾向として「釣り人」を重要人物にする傾向があります。デフォルト素材の釣り人自体は黄色い体をしているので、例のパネルから東西南北でいえば「東」、そして釣りといえば水辺(?)ということで「有明海」→佐賀長崎あたり、という連想です。
ツクツク地方
ここまでの元ネタで分かる通り、地名の発想元は「九州北部」の都市です。
村の名前は昨年ぐらいからうっすら考えていた一方、「ツクツク地方」という名前は投稿日の前日ぐらいまで決まっていなかったのですが、そういえば九州北部のことを「筑紫(つくし)」とも呼ぶなぁと思い、それを文字った名前を地方名として設定しました。
名前では「筑」の部分のみ生かしましたが、もう一文字の「紫」という色は、「封印の洞窟に影響されたモンスター・キャラクター等」を全体的に紫色で設定していたので、色々とちょうど良い発想ができて良かったです。
来年以降の展望
『四つの村と封印の洞窟』について、ストーリー分岐の詳細などまだまだ語り足りない部分もありますが、本記事内では以上とさせていただきます。
代わりと言ってはなんですが、最後に次回作以降の展望を簡単に。
RPG作品の場合
今回は「対等な4村」みたいな構成でしたが、次にコンテストレベルの作品を作るとしたら、以下の要素を入れたいなと漠然には考えています。
より王道RPG寄りの「大まかに魔王城方面を目指しながら進む」流れが明確に存在
一方で「複数ルートを選べる」など自由度を確保
例えば「A→B→(C・Dどちらが先でも)→E→魔王城」 のような構成
旅情重視の長編作品、それを意識した要素設計
宿屋で全回復しながら進む
(今回はあえて入れなかった、最大HPやその成長を導入)経過日数でイベントが発生
HPが0になったら、日数加算の上で前泊地などに戻されるがゲーム続行可能
あとは、今年はとにかくAokashiさんの『謎めいた機械を追い求めて 闇組織の争奪』に感銘を受けた影響もあり、移動に交通要素を入れたり、システム面を(安定版で作れそうな範囲ででも)強化したり、といったことは考えています。
ダンジョン作品の場合
ハッキリ言うと『東京ダンジョンランド』の続編的な作品を作りたいとは常々思っています。5〜7種類程度の個性的なギミックの短いダンジョンを順番にクリアする、というものですね。
実際、色々なギミックを思いついた上で今年のコンテストに向けて作りかけてはいましたが、1つ1つのダンジョンの難易度をもっと上げてから世に出したい、等の理由で今年は見送りました。
最終的にどのような完成系になるかは分かりませんが、今のところ来年のコンテスト作品は「ダンジョン詰め合わせ」系と予告しておきます。
もっとも、複数ダンジョン詰め合わせ系は、正統派の「ダンジョン作品」というよりはRPG・シミュレーションに近い部分があり、いわゆる「ダンジョン系WWA難易度表」に掲載されるような作品とは別物と考えられます。
実質復帰作の『4色カギダンジョン』のような、いや本家の『ケーブダンジョン』のような、シンプルな正統派ダンジョンもここらで1回作ってみたいなとは思っています。コンテスト外でもしっかりした作品を投稿していけると理想なんですけどね。。
WWA Advent Calendar 2024
本記事で書ききれなかったことも色々あるので、続きの記事をいつか書くかもしれません。投稿時点で今年のWWA Advent Calendarの残り枠も少なくなってきたので直近では無いかもしれませんが、機会を見て何かしら記せたらと思います。
明日のAdvent Calendarは、ザラキさんの「ダンジョンWWAを作るときに意識していること」です。
自分も来年は何かしらダンジョン系WWAを作りそうなので、かなり内容が気になっています…!