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消されるためのマッチングアプリ"Hinge" 〜スワイプ文化へNOを突きつけた徹底したブランディング戦略と施策を振り返る〜

■ はじめに
こんにちは!Repro Growth Marketerの稲田宙人(@HirotoInada)です!

突然ですが皆さんは、"Hinge"というマッチングアプリをご存知でしょうか?

日本でマッチングアプリというと、外資ならTinder・国産ならPairs・With・Omiaiなどが筆頭にあがり、"Hinge"を知らない人も多いかと思います。
しかし、本国アメリカではDL数ではTinderなどには及ばないものの、真剣に出会いを求めるユーザーが多く使用しており有名なアプリです。
歴史も実はマッチングアプリの代名詞である”Tinder”よりも早く、アメリカのウェブサイトが選ぶベストマッチングアプリでも毎年掲載されるなど、実力も本物のプロダクトです。

そんな”Hinge”ですが、2015年から2016年にかけてプロダクトの大幅な方向転換と、ブランディングの刷新を行いました。
それ以降今に到るまで、"Hinge"はブランディングと、提供するサービス・マーケティングキャンペーンのメッセージングに徹底した一貫性を持たせ世界中で展開しています。

今回は、そんなマッチングアプリ"Hinge"のブランディング戦略の変遷を2015〜2016年から順番に辿っていきます。

2016年9月:スワイプ文化への警鐘とサービスの刷新

■ スワイプ文化への警鐘
前述の通り、Hingeは2015年から2016年にかけて、プロダクトの刷新を行いました。

その契機となったのが、Tinderを始めとするスワイプ機能をもつマッチングアプリに警鐘を鳴らす調査レポートの発表です。

2015年夏に公開されたこのレポートでは、スワイプ機能による恋愛のロマンスの破壊が訴えられました。つまり、スワイプ機能はゲーム感覚でマッチすることが目的になってしまっており、真剣な出会いを奪い去ったとしたのです。

実際、当時(個人的には今もあると思うが)、Tinderを始めとするスワイプ型マッチングアプリは、男性だけでなく女性による濫用も大きな問題とされていました。男性は体目的・女性はご飯を奢ってもらうことが目的の利用ユーザーが後を断たなかったからです。
特に男性においては、女性の選択肢が大量に目の前にあると、短期的な関係を築きやすいとされ、また、その選択権は男性側に強く働くことから性差別でもあるとされました。それを助長したのがマッチングアプリのスワイプ機能として警鐘が鳴らされました。

“Apps like Tinder and OkCupid give people the impression that there are thousands or millions of potential mates out there,” Buss says. “One dimension of this is the impact it has on men’s psychology. When there is a surplus of women, or a perceived surplus of women, the whole mating system tends to shift towards short-term dating. Marriages become unstable. Divorces increase. Men don’t have to commit, so they pursue a short-term mating strategy. Men are making that shift, and women are forced to go along with it in order to mate at all.”

Source:Tinder and the Dawn of the “Dating Apocalypse”

■ Hingeの変革
実は、Hingeも当時から大流行していたスワイプ機能を搭載したマッチングアプリとしてサービスを提供していました。

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Source:Meet the new Hinge

しかし、Hingeのミッションは人々のリレーションシップ構築を助けることであることから、スワイプ機能を廃止する声明を発表し、プロダクトを大改革することにしました。

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Source:Meet the new Hinge

Hingeからのアプリ刷新に関する公式声明が上の画像です。特徴的なのが"We've swiped letf on swiping"というタイトルです。「スワイプ文化を左にスワイプした」、つまりスワイプ機能にNOを突きつけており、何ともエッジの効いたメッセージではないでしょうか?

この決定に至るまでに、Hingeは自社でプロダクトに関する調査を行い、それに基づいてマーケットでの立ち位置の再定義を行いました。

調査によると、マッチしたユーザーのうち僅か15%しか実際に会話が成り立っていないことが判明したそうです。Hingeとして、これはスワイピング文化の普及により、マッチすることが目的になってしまっていることが原因であるとして、スワイプ機能の廃止に踏み切りました。

さらに、競合他社含めて、アプリ利用の真剣度合いで各アプリがどこに位置するかを調査。結果としてHingeは最も真剣な関係向きのアプリであると認められた一方で、その回答者の70%もが、現状のHingeよりも更に真剣な関係をつくることを求めていることが判明しました。

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Source:Meet the new Hinge

この調査結果に基づきHingeは、自身のマーケットでの立ち位置の再定義を図りました。具体的には、真剣で新しい出会いの体験を提供するサービスとして再出発することにしたのです。

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Source:Meet the new Hinge

このプロダクト刷新に際し、旧来は全て無料で提供していた機能を、有料サブスクリプションの機能に変更しました。これは。男女全員が課金をしなければいけない仕様に変更することで、真剣なユーザーのみが残るようにすることを狙ったものです。このサブスクリプション機能の価格は、他のマッチングサービスと比較すると安価ではありましたが、お金を全員が払うという体験により真剣さを担保したのです。

■ 刷新の結果と効果
肝心のプロダクト刷新の効果ですが、機能変更前後と比較して、マッチ率は2倍・双方向コミュニケーション量は5倍・電話番号交換まで達成した数は7倍と、素晴らしい成果をあげています。

機能刷新・リブランディング後のアプリストアのクリエイティブ一例は以下です。

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Source:Meet the new Hinge

どちらのクリエイティブでも、旧来のスワイプ文化を力強く否定するメッセージングになっているのが、以下の変更前と比較するとよく分かるかと思います。さらに、Hingeはこの段階で自身を"The Relationship App"と定義しました。

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■ アイコンの変更
クリエイティブだけでなくアイコンも刷新がされました。旧来は以下のような青色をベースとした人々の繋がりを連想させるようなアイコンでした。

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Source:Meet the new Hinge

変更後のアイコンが以下です。
アプリ名の頭文字である「H」をモチーフにしたアイコンに変わっているのが分かるかと思います。Hの間にある線は人々を共通点で繋ぐ”橋”とされており、このモチーフは後述の刷新後のコンセプトビデオでも使用されており、アプリが"The Relationship App"として密なコミュニケーションを取らせることにフォーカスしていることがよく分かります。

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Source:Apple App Store Hinge

■ Hinge Labsの創設
さらに、Hingeはよりユーザーニーズを把握してプロダクトを改善していく為に、ユーザーコミュニティにおいてよりよい恋愛に関して調査などを行う部署として"Hinge Labs"を創設しました。

特徴的なのが、旧来のHingeアプリ自らのスワイプ文化に関する悪い点を調査結果として公開した点です。プロダクト刷新に伴い、今までの悪い点を認め新しい思想を広める姿勢は、過去を否定することになるので簡単にできるものではありません。

引用しているのは調査結果のほんの一部ですが、これだけでも旧来の自身のアプリをボロクソ言っているのが分かるかと思います。(是非リンク先から全て見て欲しいです!)

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Source:DatingApocalypse

■ コンセプト動画の公開
プロダクト刷新パートの最後はコンセプト動画で締めますが、これが非常に強烈です笑。痛烈な批判・皮肉が過ぎて、T○nder及びその愛用ユーザーから大炎上もしたらしいですが、それくらい素晴らしい動画なので是非見てください。

一部、特に象徴的なシーンを抜粋します。是非みなさんの感じ方も教えてください。

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↑工場のように止めどなく流れてくる相手。スワイプ文化の無機質性への痛烈な皮肉。

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↑良さげな人とマッチしたのに交流はできず、「遊び続けろ」というメッセージ。スワイプ文化のゲーム性を批判。

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↑Hingeに移行してもなお思わず右にスワイプする主人公。新しいマッチングアプリHingeではスワイプなんて必要ないことをアピール。

2019年4月:よりお相手に集中できるUIへの変更

時は経ち2019年4月。大衆が好むスワイプ機能を廃したが、エンゲージメントが向上しサービスも大きくグロースしたHingeはアプリの大規模なUI改修を行います。

2019年4月のアプリUI変更においても主眼に置かれたのは、よりよい出会いの体験・より真剣で密接なコミュニケーションと出会いの創出です。順番に見ていきましょう。

■ オンボーディングプロセス
通常のマッチングアプリは年齢・性別・年収などのメタデータ入力をオンボーディングプロセスでユーザーに行わさせることがほとんどです。Hingeでは、旧来のメタデータを元にした見かけの出会いではなく、その人自身のストーリーを元にした真剣な恋愛を創出させようとしました
その一環で、Hingeでは最初にその人のストーリーを知るための質問に答えさせるオンボーディングになっています。

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Source:How Hinge plays with your psychology to get you a match

■ メッセージの送信方法
前述の通り旧来のマッチングアプリでは、Hinge含めマッチしたものの、コミュニケーションが発生しない・又は片方向のコミュニケーションに終わってしまうケースが多い状況でした。

Hingeではスワイプ機能を廃した後、プロフィールに対していいねを押す仕様になりましたが、いいねを押すにはいいねを押した項目に関してその場でコメントをさせる仕様になっています。これにより、そもそもマッチするにはプロフィールをしっかり読んでコメントをしなければいけないので、必然的にゲーム感覚のユーザーを除外し、真剣なユーザーのみがサービスに残るようになります。

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Source:How Hinge plays with your psychology to get you a match

■ 色使いと通知機能の変更
新しいUIでは、色使いはシックに落ち着いた雰囲気になり、アプリ内のアニメーションも控えめになりました。
また、通知機能は、旧来は相手からいいねが来た際には、アプリ内でポップアップが出現しましたが、新UIでは控えめな通知がくるのみに変更されています。
これは、ゲームのようなUI・体験を廃し、よりユーザーがお相手に集中できるようにと意図した変更になります。

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Source:Hinge redesigns to get people off dating apps

■ "We Met"機能の登場
さらに、Hingeはよりよりデート体験を提供するために"We Met"機能を導入しました。
この機能は、マッチした相手と実際にデートが成立したかどうかをアンケートする機能、成立した場合はどうだったか・成立しなかった場合は何が原因なのかを、匿名・お相手には非通知でフィードバックできる機能です。
Hingeが公開したレポートによると、実に初回デートをしたユーザーの3/4が同じ相手との2回目のデートが成立しているとされており、前述のHingeLabsや本"We Met"機能により着実によりよいデート体験を提供し続けていると言えるでしょう。

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Source:Hinge redesigns to get people off dating apps

2019年6月:同性愛者・ノンバイナリージェンダー向けのイベントを開催

旧来、同性愛者・ノンバイナリージェンダー向けの出会いの場は、各社会の既存観念などもあり、あまり広いものではありませんでした。日本においては、同性愛者やノンバイナリージェンダー向けのマッチングアプリは別アプリとして展開されている場合が多く、そもそもの出会いの場がないということもあります。

この状況に対して、Hingeは同性愛者・ノンバイナリージェンダー向けのプロムイベントを主催しました。

実はHingeが同性愛者・ノンバイナリージェンダー向けの姿勢を表明したのはこの2019年6月が最初ではありません。
前述の2016年のサービスの刷新のコンセプトビデオをよく見ると、以下のような描写が登場するんですね。

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このようにHingeは、中核にあるサービスコンセプトである、「人々を共通点で結びつけ、より良い出会いを提供する」を全領域で公言し、そこに性別は関係ないとサービス初期からブレずに訴え続けているのです。

ちなみに、以下の3枚の画像は各マッチングアプリのオンボーディングプロセスでの性別と恋愛対象の選択画面です。
TinderとPairsに関しては、どちらも男女の性別しかなく、恋愛対象の選択は自動的に異性になるようになっています。(グローバルに展開するTinderが多様性がないのは結構ショックですよね…)
先日リリースされたHOPでは、性別・恋愛対象が自由に選べるようになっているのが分かります。

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2019年8月:”消されるためのアプリ”への変貌

さて、いよいよ昨年の大規模なリブランディングキャンペーンです。かなり有名なキャンペーンなのでご存知の方も多いかとは思いますが、まずは以下の2つの動画を見てください。(僕はこの動画が好き過ぎて何十回も見てます)

■ アプリコンセプトの策定
このリブランディングキャンペーンで掲げられたアプリのコンセプトが以下です。

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Source:RedAntler

The dating app designed to be deleted.

一般的にアプリ事業というのはアクティブユーザー数・リテンションレートなどの顧客維持により成長を続けていくものです。マッチングアプリの場合は、その構造上アプリを卒業することがユーザーにとってのゴールではありますが、Tinderを始めとしてゲーム性を取り入れて如何に長い期間ユーザーにアプリを使用してもらえるかを重要視する企業がほとんででした。
そんな状況の中、Hingeは自らのアプリを「削除されるためのアプリ」と定義したことで大きな話題を呼びました。

リブランディングキャンペーンを請け負ったクリエイティブエージェンシー"Red Antler"のHingeの事例では以下のようにコメントがあり、「マッチングアプリは本来の役割である人を繋げた後は消されるべき」であるという思想が如実に反映されたのがこのコンセプトでした。

Hinge believes the entire point of using a dating app should be to find someone—and dump the app. So, we created an integrated campaign rooted in the promise that Hinge is The Dating App Designed to Be Deleted.

Source:RedAntler

■ Hingeマスコットの役割と演出
本章冒頭で動画をご覧頂くと分かるように、今回のキャンペーンでは、Hingeのマスコットが様々なシチュエーションで痛めつけられ最終的には死んで消えてしまう演出になっています。

着目するべきなのが、Hingeはカップルのすぐ横で痛めつけられていますが、カップル自身が手を下していない点です。
これは、重要なコンセプトとしてカップル自身がお互いに夢中でHingeが死んでしまっていることにも気づかないように、間接的にHingeが死んでしまう演出にしたそうです。
それを意識して動画を再度ご覧頂くと、どのシチュエーションでもカップルはHingeの死どころか、Hinge自身にも目もくれず認識もしていないのが分かるかと思います。

また、Hingeの死は歓迎するべきではあるものの、その死がネガティブに捉われないように、Hingeが死んでしまうシーンでは、エッジと陰惨さのバランスを特に意識した演出になっています。
象徴的なのがHingeが車に惹かれるシーンです。このシーンでは、グロすぎないようにピンクのハートを散りばめて印象を和らげる工夫がされています。

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そんなアプリコンセプトを伝える為に重要なマスコットですが、その素材から目の位置に至るまで非常に細かい調整がされたそうです。特に目の位置は、Hingeのマスコットに対してユーザーが愛着を持ちすぎないように、純粋さと無機質性のバランスを調整する為に、12パターンもが作成され討議がされたそうです。

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Source:RedAntler

■ リブランディングキャンペーンの効果
このキャンペーンは、既存のマッチングアプリではタブーとされ避けられていたメッセージングと、その演出方法により、マッチングアプリだけでなく、ソーシャルネットワーク上でも大きな話題となりました。(僕もこのキャンペーンがきっかけでHingeに興味を持つようになりました)

結果として、アプリの月間DL数は47%・月間アンインストール数は18%増加しました。

面白いのが月間アンインストール数も公開しているところです。これは、Hingeとしてはユーザーが相手に出会えてアプリをアンインストールしたことを意味する為、ポジティブな結果として公表しているのです。キャンペーンの結果公表にまでブランディングが浸透しているのが分かります。

2020年1月:オンラインショップの開設

2019年夏のリブランディングキャンペーンの大成功を受けて、Hingeは2020年1月にブランドコンセプトを体現するオンラインショップ"Hingie Shop"を開設しました。

このショップでは、HingeロゴのようなTシャツやスニーカーの一般的な商品の他に、Hingeならではの商品を販売しているのが特徴です。

まずは、破壊されてしまうもの・消えてしまう商品です。取り扱っている商品は、ピニャータ・スモアセット・バスボムの3つです。前述の通り、Hingeは ”The dating app designed to be deleted.” をコンセプトとして、消されるためのアプリと自身を定義しており、オンラインショップの商品にもその思想を根付かせた遊び心が効いた素晴らしい商品だと思います。

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Source:The Hingie Shop

そして、Hingeならではの目玉商品がこちらの、アプリ削除記念日のネックレスです。

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Source:The Hingie Shop

Hingeによると、実に85%ものユーザーがアプリを削除した日をリレーションシップの記念日としているとされ、ユーザーニーズと自身のコンセプトを見事にマッチングさせた商品になっています。

ちなみに、Hingeは、SNSでは"Deletion Moment"と呼ぶ体験レポートを投稿しており、Hingeを介して出会いアプリを削除するまでの体験をカップルが語るコンテンツになっています。公式が投稿するレポートとは別に、一般ユーザーもアプリ削除を宣言する投稿を多く投稿しており、一般のマッチングアプリにはないUGC創出が非常に上手くいっている事例と言えるでしょう。

ブランディングに紐づいたKPI設定

さて、ここまでHingeのブランディング戦略とそれに基づく実施施策の変遷を振り返ってきました。どの施策に共通するのが、常により良いユーザー体験を提供することに主軸においた、真のユーザー目線の改革であったことが分かります。最後の本章では、そんなHingeのKPI設定に関してまとめます。

■ 成功指標の定義
一般的なマッチングアプリでは、メッセージ送信数・マッチ率などのユーザーファネルの量的指標と、アクティブユーザー数・リテンショレートなどの維持指標をKPIとして設定していることが多いです。故に、ユーザーには良い人と出会ってアプリを辞めて欲しい一方で、長くアプリを使ってもらい収益を上げる為に期間限定イベントやゲーム性を取り入れた施策を実施している状況です。

一方のHingeは、そのアプリコンセプトに基づき、本当に真剣な人だけにアプリに残ってほしいし、早くカップルが成立してアプリをやめてほしいと考えている為、KPIはアプリ滞在時間やリテンションレートではなく、週次のデート成約数をおいているのが特徴です。
この質を意識したKPI設定と施策により、Hingeではなんと4秒に1回デートが成立し、その内3/4が2回目以降のデートに繋がるなど、結果として量的・質的指標両方で素晴らしい成果を残しています

■ ビジネスモデルへの拘り
ビジネスモデルの選択にもアプリコンセプトが深く根付いているのがHingeの特徴です。

真剣なユーザーのみをアプリに残す為に、2016年のリニューアルで全ユーザーに対してサブスクリプション機能を導入したのは前述の通りですが実はここにも工夫があります。一般的なマッチングアプリ(特に日本)では、女性ユーザーの集客とアクティベーションが困難であることから、女性ユーザーは全機能が無料で使用できます。これは、女性ユーザーの利用ハードルを下げる一方で、金銭的負担がないことによる相対的な真剣度合いの低下をもたらし得ます。
Hingeでは全ユーザーが金銭負担をすることにより、真剣度合いを担保するだけでなく、他マッチングアプリと比較すると安い客単価でも収益を担保することができているのです。特にHingeは他のマッチングアプリと比較すると、女性ユーザーの割合が大きいこともあり、収益担保にも全ユーザーへの課金機能が有効であるのが分かります。

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Source:Which Dating Apps are reigning in the USA?

また、HingeCEOが創業当時から公言しているのが、広告モデルは採用しないということです。これは、広告モデルを採用するとインプレッショ数を稼ぐ為に必然的にユーザーを刈り取り、アプリを長く使ってもらう為の設計が必要になるので、Hingeの思想とは真逆であるからです。

"We don't use advertising...because that would be pretty antithetical to the way that we work," said McLeod. "If you run ads, then you need people to spend a lot of time on your platform so that you get a lot of ad impressions, and we're trying to get you to spend less time in the app."

Source:Hinge CEO: advertising would be 'antithetical' to our message

このように、Hingeでは収益性を担保しながら理想のコンセプトを体現する為に、ブランディングに基づいた緻密な設計を行い、成長を続けてきたのです。

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■ 最後に
以上がHingeのブランディング戦略とそれに紐付く施策の変遷でした。

旧来のマッチングアプリのスワイプ文化にメスを入れるところから始まった徹底的なブランディングと、本質的なユーザー体験の向上の為の一貫した施策の実施がお分かり頂けたでしょうか?

短期的目線ではなく、ユーザーがアプリに求める本質的な価値に真摯に向き合い続けたことで、現在では老舗のOKCupidなどを押さえてマッチングアプリカテゴリでDL数・アクティブユーザー数で1位を獲得しています。Tinderと比較するとアクティブユーザー数は到底及びませんが、着実にトップアプリへの道を登り続けています。

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Source:Which Dating Apps are reigning in the USA?

Tinderが世界最大の"LifestyleApp"としてブランディングしている中で、Hingeを比べるのはナンセンスに近いですが、今後もHingeが"Relationship App" としてどこまで伸びていくのかは注目に値するでしょう。

最後までご覧頂きありがとうございました!
以下全体を通しての参考資料になりますのでご覧ください!

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