進撃の巨人|暴力の連鎖を断ち切るには?
最初に断っておくと、ネタバレを含みますので、初回の鑑賞を新鮮な気持ちで迎えたい方は、読まずにブックマークなどに追加して、鑑賞後にお読みください。
暴力の連鎖を断ち切るには?
「進撃の巨人」とは何だったか?それは読み手の数だけ答えがあることだと思います。
僕にとってこの作品を通して考えたことのひとつである「暴力の連鎖」、これをいかにすれば断ち切れるのかを考えさせられました。
物語の前半では、壁の内にいる人類と巨人の戦いでした。
そして、壁の外の世界を知り、後半は人類同士の戦いになります。
進撃の巨人では作中においてのストーリーは、現代に生きる我々にとっても、考えるべき興味深い内容となっています。興味があれば、ぜひ本編をお楽しみいただければと思います。
今回は、物語後半の台詞を参考に、暴力の連鎖を断ち切るには?について考えてみたいと思います。
事実では解決に至らない
これは、主人公の仲間のジャン・キルシュタインと敵国マーレの軍人テオ・マガトの会話で、元々敵同士で殺しあっていた両者が、主人公エレン・イエーガーの人類大虐殺を止めるために手を組もうと焚き火を囲んでの会話です。
背景について簡単に説明すると、二千年前に主人公たちの民族エルディア人はマーレを含めた多くの民族を巨人の力を使って蹂躙していた。その後、エルディア人はパラディ島に逃れた者と大陸側に残された者に分かれました。
現在、パラディ島の外の世界では、エルディア人は過去のことで迫害を受けて、マーレ国では収容区に囚われて自由がない奴隷のような状態です。
また、マーレがパラディ島への攻撃を仕掛けた際に、主人公は母を目の前で巨人に食われたのです。ジャンはそれが事の発端だと主張しているのです。
両者とも主張している内容は事実だと思います。マガトは史実に基づく、世界が信じる事実を。ジャンはパラディ島で戦ってきて主人公の近くで起こった事実を。
お互いの立場で間違ったことは言っていませんが、このスタンスで話続けても歩み寄ることがないことは明白です。
壁内人類のカヤと壁外から来た(ミアと呼ばれている)ガビ・ブラウンとの会話です。
カヤの母は巨人に食われ、何のために殺されたのかを問うています。
ガビはマーレの戦士候補生(巨人の力を継承するための訓練を受けた者)で、マーレの教育で自らの民族エルディア人が過去にしてきた残虐な行いを教えられ、過去の罪を償わないといけないと信じています。
そして、パラディ島のエルディア人は悪魔で自分たち大陸のエルディア人は善良であるとマーレに示すには、戦争で活躍してマーレにそれを示す必要があったのです。
ジャンとマガトとの会話もそうでしたが、歴史や民族のことで争っていても、きっと互いが求める答えを提示することは困難だと思います。
解決に至らないどころかむしろ、それがまた別の争いや暴力を生むことになり得ます。
暴力の連鎖
先ほどのガビ・ブラウンは、主人公たちの仲間サシャ・ブラウスを殺しました。
そして、ニコロは元マーレ軍の兵士でしたが、今はパラディ島で料理人となっており、彼にとってサシャはかけがえのない大切な人でした。その彼女を殺したガビを殺そうと、サシャの父ブラウスさんの前へ連れてきた場面です。
後半の語りはブラウスさんです。
ちなみにこの後、カヤが命の恩人で姉のように慕っていたサシャを殺したのがガビだと知り、殺そうとします。
ガビもニコロも、被害者であり加害者でもある。
殺されたサシャも、加害者であり、被害者でもある。
この会話の人物はそれぞれ大切な人を亡くしています。
暴力の連鎖によって、本人たちには関係のない理由で…。
連鎖を断ち切るには
ガビの語りです。
パラディ島のエルディア人を悪魔だと教えられ、それを信じていたガビが、島で過ごし変化したのがわかる語りです。
私たちは民族や集団などの集団を指して語ることがあります。
その集団はひとりひとりの個人です。当たり前のそのことを忘れてはいけません。
カヤが巨人に襲われているのを、ガビが助け、助けたことで窮地に立たされたガビをカヤが助けたときの会話です。
ニコロも会話に加わっています。
憎み合い、殺し合った3人が互いに自らの中に悪魔がいることを確認しています。
最後に、最初に紹介した台詞でジャンと何千年前の話で言い争っていたマガトの台詞です。調査兵団やマーレ軍の仲間に語りかけています。
きっと暴力の連鎖を断ち切るということは、何かが変わった瞬間に訪れるものではありません。ひとりひとりの人間が積み重なりで少しずつ切り離されていくものです。
愚かな行いから目を逸らし続けてはいけないのです。
そして、森から出ようとし続けなければならない。
どうでしたか?
進撃の巨人の台詞を、暴力の連鎖を断ち切るには?というテーマの内容で選び、紹介させていただきました。
今回、主人公のエレンは登場させませんでしたが、どのキャラクターも魅力的でいろんな視点で物語を観ることができます。
ご興味ありましたら、ぜひ一度ご覧ください。
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