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こんなときだからこそ、国際物流の未来について

こんなときだからこそ、自分の専門である国際物流の未来について、考える必要があるんだろうなと感じている。

自分には医学面の専門性はないので、今出来ることは感染を拡大させてないような行動をとり、現場で奮闘されている医療従事者及び政策を必死で考えている政治家の皆さんや各関係省庁等で政策を考えられている方々を、サポートしフォローすることだと思う。

そして何より重要なことは、この事態が回復してきた時に、自分の専門性を活かしてより素晴らしい世界を作れるように、未来に向けて準備することだと思っている。

簡単に言うと、ここ数日、日本語のニュースを観る機会が多い環境にいたため、極めて近視眼的で、とにかく現状への不平、批判ばかりのニュースを観ている内に、頭が狂いそうになってしまったので、今後この状況が落ち着いて、コロナとうまく付き合いながら進む社会の中で自分が何が出来るのか、ポジティブに考えたくなった。加えて自分の昨年度を振り返っていて、全然ダメだったなと、少し落ち込み気味で、視座が下がっていたので、このタイミングでもう一度視座を上げたいと思った。

以下、自分のファーストキャリアである海運業に対する気持ち、中国で感化されたテクノロジー、最後に現状と今後について。述べていきたい。

外航海運

自分が2010年から2019年までお世話になった商船三井という会社は、海運業界という極めてレガシーな業界に属している。
日々の生活で実感することはないけれども、島国である日本において、海運業は非常に重要である。
公益財団法人日本海事センターの調べによれば、島国である日本は、重量ベースで99%以上の輸出入を海運(船による輸送)に頼っている。
私たちの日常は海運の支えなしには成り立たない。

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一般の人が想像する船と、実際の商船で大きく異なる点が3つある。

1つ目は船乗りさん。
”船乗り”というと、イメージするのは、頑固で体格の良い日本人だろうか。

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実際は、そもそも日本人の船乗り自体がとても少ない。
国土交通省の調べでは、日本の船会社所有の船員の内、2017年時点で約96%が外国人船員である。日本人船員は4%以下しかいないのである。

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2つ目は、船の大きさ。
アホっぽいが、商船はめちゃくちゃデカい

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世界のコンテナ船はどんどん大型化していて、現在では、2万TEU(20フィートのコンテナが2万個乗る)のコンテナ船がバンバン出来ているが、
これらは全長400メートルを超えてくる。
よく言われる比喩だが、東京タワーを横に倒しても、それよりも大分大きいということになる。端から端まで全力で走ったら倒れる自信がある。

コンテナ船の大型化のスピードは早く、その背景にあるのは、大きな船にすれば、一回に大量のコンテナを輸送でき、一つのコンテナ当たりにコストが下がるという極めて単純なロジックである。


(国交省資料:コンテナ船の大型化と我が国港湾の最大水深岸壁の推移)

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現場のタフさ

そして3つ目は、船上の船乗りさんの現場のタフさである
当時、入社2-3年目程度のころ、自分はコンテナ船の集荷営業(=お客様にコンテナ船のサービスを使ってもらえるように営業)をやっていて、ようやく仕事が少しずつ出来るようになってきたタイミングで、実際に数週間コンテナ船に乗る研修があった。

物流に関わる仕事をしている人の中でも、商船に乗ったことある人は少ないと思う。船会社で働いていた特権だろう。

船はどんどん大型化されていくが、それに乗る船員さんの数もそれに合わせて増えていくかというとそういうわけでもない。
詳しい数字は分からないし、船社によってポリシーも違うと思うが、一つのコンテナ船に乗る船乗りさんの数は、多くても30人とかそういうスケールだと思う。
船は24時間動いているし、3交代制で船をオペレーションするわけだが、彼らの仕事は想像以上にとてもタフである。
・これだけ大きな船を少人数でまわすプレッシャー(また港への帰港作業は全員作業だが、アジア航路等、寄港地が多い航路の場合、毎日のようにその作業が発生する)
・混雑している港の周辺は、沖で無数の船が岸壁につけるのに順番待ちしており、また小さな漁船等がたくさんいる港の周辺での繊細な操縦が要求されるプレッシャー。
・海賊に襲われるリスク:内閣官房のレポートでは2018年に200件以上の海賊事案が発生している。これは実際に船員さん(自分の場合はインド人とフィリピン人)と船の上で数週間過ごして知ったのだが、中にはいつ海賊に襲われて命を落とすかわからないからと、船に乗るたびに遺書を書いているという船員さんもいた。
(内閣官房:2018年 海賊対処レポートより)

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自分が売っているサービスの背景には、命懸けのプロフェッショナル達がいることを改めて理解した、本当に貴重な機会だった。

シンガポール沖で夜中にみた無数の星空を忘れることはないし、
フィリピン人船員たちと船上で歌ったJason DeruloのThe Sky's The Limitも忘れることはないと思う。


中国での衝撃

日本人の日々の生活を支えているという自負はありつつも、一方で、いわゆる規模の経済のロジックでしか評価、発想出来ない状況にもどかしさを感じていた。

デジタルテクノロジーで物流業界を変革したい、そのためにその最先端をいく会社にいたい。

この想いがあって、中国で働く決断をしたのだが、
その決断の裏には、2016年~2018年にいた上海のCEIBSに留学していた影響が大きい。

ビジネススクールにおけるコア科目(会計やマーケティング等)は世界中どこもカリキュラムは同じようなものだと思うし、学ぶ基本的なフレームワークも今までそこまで大きな変化はなかったんだと思う。

そのような既存のフレームワークを超えたところで、最新のテクノロジーによって、毎日新しいサービスが生まれては死ぬ中国上海において、最新のビジネスケースのネタが無数にあり、それを学べるという意味ではCEIBSは非常に恵まれた場所だった。

一方で選択科目で、デジタルマーケティングやビックデータ等、それらしき科目も次々と現れ、自分も受講したが、残念ながら上辺だけの理解で、核となるような部分の理解には至らなかったというのが率直な実感だ。
それは自分自身にも当然責任があって、あくまで授業はさわりの部分だけで、本質的にそれを理解したいのであれば自分自身で掘り下げてトライ&エラーを繰り返すしかないが、授業のネーミングにつられて、自分の肌感も興味もないケーススタディから、核心部の理解が出来るわけがなかった。

とにかく自分の関わってきた海運業、大きく見ればロジスティクスは、非常に重要な産業である。
但し、この業界の多くの企業は、基本的には依然として規模の経済の論理で動いている(もちろん倉庫のオートメーション等一部変わり始めている)。従って、そのような業界には、MBAのケーススタディで習ったことを応用し易い。
但し、中国で急成長していたテクノロジー系の物流会社からは、規模の経済では説明できないような、自分の理解を超えた勢いを、中国滞在中に感じていた。

成長痛

MBAスクールでも、実際のところ何が起こっているか理解することは出来ない。きっと実際に働いてみないとわからないと結論付けて、実際に飛び込んでみて今に至る。当然ながら大変なことも多い。

言語や文化以外で苦労しているのは、当然といえば当然だが、この先端テクノロジーへの理解度である。
1年たっても、とにかく苦労しているのは、例えば内部に対するコミュニケーションで自分がAI等に対する技術理解度が低いため、エンジニア等とのコミュニケーションはとても大変である。
自分は無能すぎて、ダメなのか。。と凹むこともあるが、
ヤフーのCSOで慶應義塾SFC教授の安宅さん著のシン・二ホンを読んで、少しだけ気が晴れた。

以下の表は、経団連の”AI‐ready化”ガイドラインの表である。

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シン・二ホンにはより詳しい説明が書かれているが、その中で、自分が今所属している会社はレベル5の例として挙げられていた。

一方で、この表の中から前の会社のレベルを選ぶとするならば、
私が在籍していた時は、前職は申し訳ないが間違いなくレベル1だったと思う。
レベル1の環境からレベル5の環境にジャンプアップしたら、そりゃ大変に決まってる。
自分は大学受験も浪人しているし、頭の出来的には極めて普通なので、キャッチアップにはそれなりの時間がかかる。そんなに甘くはないということだ、むしろ今の恵まれた環境を喜ぶべきで、これは成長痛だと受け入れるべきだろう。

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ECが鍛える物流業界

国交省の調査によれば、日本国内の宅配便の数は、Eコマースの普及の影響もあり、右肩上がりに増えており、足元年間で40憶個を超えている。

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隣の中国では、独身の日”1日”のオーダー数が約13憶個というとてつもない数字になっていて、規模の経済のロジックで、大量な倉庫や人を用意するだけでは対応できない次元に既に突入している。

Eコマースの普及は間違いなく、その周辺の物流を鍛え、デジタルトラスフォーメーションを加速させる。
なぜなら増える物流ニーズに対して、国交省の調査では、日本のトラックドライバーの平均年齢は上昇し続けており、平均年齢は45歳を超えている。
その中でサステイナブルな物流を実現しなければならない。それは明らかに、最先端のテクノロジーを使わずして実現することは出来ない。

そしてECに接していた物流業界からどんどん変革していって、物流業界全体に広まると思っている。

自分が前に所属していた海運業界だって、単純な港間の輸送だけだと思われがちだが、そうではない。
例えばコンテナ船で言えば、コンテナ船の上に乗っているコンテナ(ものを運ぶためのボックス)。
これは基本的に船会社の持ち物である(コンテナリース会社から調達していることも多々あるが)。

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(↑たくさんのコンテナを積んだコンテナ船の写真、ONEのHPより引用)

このコンテナが、港に到着後に、世界各国のあらゆる場所に散らばる。
インドの港についてそのまま内陸のデリーまで鉄道で輸送されるかもしれない。一体そのコンテナが再度使えるようになるには何日かかるのか。
輸出の需要ばかりで、輸入の需要が全くない港があれば、空のコンテナを輸送しなければいけない。どうやって手配するのか。予め予測しておく手はずはないのか。
コンテナは船の一部とも言うことが出来、このハンドリング次第で、船会社の収益は大きく変わってくる。

唯一不変的是変

自分の職場環境はレベル5だとしても、自分がレベル5の人間に行きなりなれるわけではない。
レベル1からレベル5へのレベルアップはとてつもなく険しい。
だけど、今習得中のものは、必ず未来の日本の物流業界に活かせると信じ切れば、何とかこの修行も耐えられるような気がしてきた。
コロナを経て、更に成長した自分でいられますように。The Sky's the Limit!

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Digital Logistics Director|アリババ本社のリーダーシッププログラムに日本人で初めて合格|商船三井、CEIBS&IESE MBAを経てAlibaba/CaiNiao(杭州)|個人的な考えを記載したもので、所属する組織団体の意見を反映したものではありません
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