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読んだり読まなかったりして生きて行く「書楼弔堂 破暁」

京極夏彦「書楼弔堂 破暁」読みましたー。

明治二十年代の半ば。雑木林と荒れ地ばかりの東京の外れで日々無為に過ごしていた高遠は、異様な書舗と巡りあう。本は墓のようなものだという主人が営む店の名は、書楼弔堂。古今東西の書物が集められたその店を、最後の浮世絵師月岡芳年や書生時代の泉鏡花など、迷える者たちが己のための一冊を求め〈探書〉に訪れる。変わりゆく時代の相克の中で本と人の繋がりを編み直す新シリーズ、第一弾!

月岡芳年、泉鏡花、井上円了、岡田以蔵(と中濱万次郎)、巌谷小波という実在の人物と、百鬼夜行シリーズのあの人に繋がる人物が書楼弔堂主人と会話を交わした上でそれぞれ自分のための一冊を薦められる。百鬼夜行シリーズや巷説百物語シリーズみたいに人が殺されたり因果な事件が起こったりするわけではなく、語り手である元士族・高遠の内省的な語りの合間に本に関する弔堂主人と人々の会話が続き、薦められた本を手にした人々のその後に短く触れられて終わる。特別派手な展開がない分、割とサクサク読み終えることができた。続巻「炎昼」「待宵」とある(「待宵」は来年一月に出る)らしいです。

実在の人物が登場する展開は、時代設定が明治ということもあり山田風太郎の明治ものを連想するわけですが、あのある意味捻りに捻って意想外を狙った山風作品とはまた違って、これもまた非常に面白いなあと思ったのでした。

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