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猿谷要「物語 アメリカの歴史」1991

 中公新書である。著者は猿谷要(1923-2011)さん。夥しい回数、渡米され、そのたびに自ら車を運転してアメリカ各地を探査された。その経験が詰まっている。猿谷さんが、アメリカをよく知る日本人の一人であることは間違いない。この本は、その猿谷さんのアメリカ論でもある。ベースの話はレーシズム(人種差別)だ。冒頭、猿谷さんは自身が経験した南部のホテルでの差別のお話から始めている。さらにインデイアンから土地を奪う話。黒人差別の話。公民権運動の話。さらに貧困の話。この本は1991年の本ではあるので以来30年の月日がたっているが、歴史としてとらえれば30年前の記録としての本書の意味は現在もある。この本が出版された時点で、もちろんアメリカでは人種差別は間違った過去になっている。しかし建国以来の歴史のスパンで考えると、そのように人種差別を否定することがアメリカで主流の考えになったのは、比較的ごく最近のことに過ぎない。そのことが本書をよむことで実感される。マイノリティに対する長い差別の歴史と平等を求める長い闘争の末に現在のアメリカがある。

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