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馬洪「市場経済への転換は経済社会の一大変革である」1987年10月末

向市場經濟轉變是一場深刻的經濟社會大變革  党の十三大(1987年10月25日から11月1日開催)小組会上の発言 《大衆日報》1992年2月1日に掲載 《馬洪改革論集》中國發展出版社·2008年pp.191-196, esp.191-193(写真は成城大学3号館)

 社会主義市場経済体制に計画経済体制を変えることは、単に提起の仕方上の変化ではなく、社会主義経済性質の認識の重大な変化、さらには社会経済の組織方式、経済改革の目標と改革戦略の対応した変化に及ぶものである。社会経済生活の各領域の変化は、政府、企業、個人のすべてに新たな要求をもたらし、重大な影響をもたらすだろう。我々はこのことに十分な思想の準備をするべきである。計画経済から市場経済に進むことを実現するには、以下の十個の面の変化(転変)を上手く行う必要がある。
 第一に所有制の面では、単一の国家所有あるいは集団(集体)所有の公有制から、公有経済を基礎とする混合型所有制(股份制:株式制)への変化。改革以来、我々は全民所有制企業方面に大量の工作を行ったが、しかし効果は期待したとおりではなかった(不盡如人意)。このような一種の所有制の管理形式における重要な要素は、当時の商品経済に適応したもので、あるいは計画経済の要求により形成されている。この種の企業形式(公有制?)のもとでは、(今や?)政治と企業の関係は円滑でなく(この点が具体的に説明されていない。なぜ公有制が時代に合わなくなったのか?)、企業が資金を集める道はすでに塞がれ、企業の成長に不利で、市場経済の要求に適合しない。社会主義市場経済を発展させるには、株式制企業制度を必ず行うべきである。当然この種の株式制は公有株を基礎とするもので、各種の所有制企業間それから各種の法人間は相互に株式を保有し、個人持ち株も含む混合所有制である。それゆえに、現在の全民所有制、集団所有制を主とする形式は次第に改変され、公有株を主とする混合所有制形態に向けて変化(転変)する。
 わが国の所有権制度改革の目的は、わが国の社会主義公有制の所有権(制度)を作り変えて(安排成爲)、市場経済の規律に適合し、かつ社会資源の有効配置をできる財産制度とすることである。このような一種の所有権制度の要点は以下を含むべきである。①公有資産の所有権主体は多元的、独立的で相互に競争的であること。②公有資産の所有権は行政権から分離されておらねばならず、財産利益だけに依拠し行政意思に拠らず独立して権利を行使実行する。③公有資産の所有者主体と経営者主体の間で公有資産の使用に関する条件は明確で曖昧であってはならず、かつ公有資産使用中のリスクは収益と見合うこと。④公有資産の所有権は流動的であるべきで、各権利主体が自身の財産の安全と増殖を図るなかでは、法に従い各自の財産権を譲渡できる。現在は、株式制の実行は、社会主義所有権制度の基本方向である。
 第二に経済経営運営方式は、政府主体から企業主体、そして個人主体に主体の機能(格局)へ変化。現在の二重体制の下では、上から下まで各類の行政組織(特にその企業の主管部門)は依然として経済運営の主体であり、各種の権力を持っており、企業は決して本当には経済主体ではない。(しかし)社会主義市場経済を実行する(のであれば)、政府はもはや経済主体の役割を継続はできず、企業と個人が決定、執行、利益の主体となるべきである。経済活動にある個人に、責任、権利、利益を統一しなければならない。
企業経営の決定、執行、利益はまた企業家と職工個人に落ち着かねばならない。企業家と職工個人の責任と利益が明確であれば、職工個人の主体作用が発揮でき、企業の主体作用も実現できる(才能落到實處)。
 まず企業の独立した市場主体地位を法律上、今一歩明確にするべきである。我が国の法律はすでに企業が独立した自主経営、自ら利益損失を受ける経済主体だと規定している。しかし細かな運営細則が欠けているために、いくつかの実際の過程では明確な規定がない。最近頒布された「有限責任公司条例」「股份企業試點条例」そして「全民所有制企業転換経営機制条例」は、運営面での改善であり、政治と企業を分離する問題での一歩前進である。しかし現在のところ、この問題はまだ完全には解決していない。たとえば企業に主管部門は必要かどうか、法律上主管部門の権限は如何に限定されるか、政府の労働人事上の企業統制と、企業の独立性との間に矛盾があること。これらの問題は今に至るも完全には解決されていない。法律上すぐに明確にすることも不可能であり、検討過程が必要である。それゆえに、企業の独立性は単にスローガンではないし、また法律の細則原則条文の不足というだけでなく、法律形式に反映している組織規則の運行の順(すでに載せられている問題)である。
 (以下の8つの変化。記述は要約した。項目の内容は相互に重なる点があるようにも思える。
 第三は企業経営リスクを政府・社会負担から個人・企業負担に移すこと。なおこの部分で、(経営リスクを意識しない)全民所有制企業が経済効益がなく、長期にわたり損失を抱えていることは、国家にとって負担であるというロジックが出てくる。それよりは経営者にリスクを自覚させて経営を改善させるべきだと。おそらく経営効率が改善されないことを、第二のと運営方式のところで公有制の問題点として議論することが可能だと、この記述から思う。
 第四は企業経営戦略を上級部門への依頼から、企業自身の経営判断に移すこと。
 第五は政治と企業の関係で上級政府機関への隷属から離れること。法律などに従い株主や取締役会(董事會)の監督を受ける。
   第六は実物的、直接的管理(様々な計画の下達)から価値的、間接的管理へ。政府の役割は規則の制定、監督などへ。
 第七は国有資産管理は実物的(実物性)から価値化、貨幣化、証券化に変化する(ただ、これで何を言っているかは今一つ理解できない。国有企業が株式会社化して市場の評価を受けるというのは分かるが、不動産市場に入るといっているところは、それはどのようなことを想定しているのか。内容がよくわからない。福光)。
 第八は労働力市場の自由化と、企業経営者の任免を取締役会に移すこと。(これは2つ別の問題を並べているようにも見える。労働者が自ら職業を選ぶようにすること。ただ二つをならべているのは、国家が労働者と経営者それぞれ、任命するというシステムを考えているからだろう。経営者がどのように選抜されるかという問題が、そもそも曖昧というか、語られていない。)
 第九。現在は所有制に違いで違う種類の企業には、異なる競争のルールになっているが、これを同じ法律の下の平等な競争、平等な課税に変えてゆく。同時に独占禁止法や不正競争防止法など、市場競争を保証する各種の法規を制定してゆく。
 第十。価格制度を行政が価格を決める方式から、市場が価格を決める方式に段階を踏んで、変化させる。最後に次のように述べる。)
 社会主義市場経済の建設は、一つの巨大で複雑な社会システムのプロジェクトであり、(実現には)長期的な発展過程が必要で、持続的努力と緊張感も必要である。このような新体制形成が早いほど、わが国の経済発展速度もまた早くなり、経済便益もまた多くなる。それゆえわれわれは奮闘努力すべきである。

#馬洪 #社会主義市場経済 #株式制 #公有制 #成城大学キャンパス


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