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中国経済学史

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#株式制

姓社姓資論争 中国経済用語

 株式会社制度を導入する際に中国で行われた論争。1990年代初頭。導入支持派は株式会社そして株券市場の姓は社会主義であって、資本主義ではないと論じた(以下は《中國的股份公司與股票市場:姓“社”不姓“資”》在郝繼倫著《中國股票市場發展分析》中國經濟出版社2000年, 9-10の翻訳)(写真は成城大学。左が8号館。右が5号館。)  中国社会主義制度のもとにある株式会社そして株式会社(股份公司)と互いに補完的制度として設立された株券(股票)市場の姓は、社会主義かあるいは資本主義か

張卓元《新中国60多年経済学研究的六大進展》2012

張卓元等著《新中国経済学史綱(1949-2011)》中国社会科学出版社, 2012年。同書の第1章、張卓元《新中国60多年経済学研究的六大進展》pp.1-50の抄訳である。 p.1 1949年の新中国成立から2011年まですでに63年が経った。中国共産党の指導のもと、三座大山(新民主主義革命期には帝国主義、封建主義、官僚資本主義という三つの敵がいたとされる)の暗黒統治をひっくり返して、人民が主人公となる中華人民共和国を建設し、併せて社会主義の広く平坦な道(康庄大道

企業制度改革 1980-1988

 鄧小平―趙紫陽が経済政策の責任者であったときに、行われた経済政策をここでは3つの側面に分けてみる。一つは私有経済の容認・拡大である。もう一つは国有企業の経営改革であり、最後に価格改革である。以下は李羅力《沉重的輝煌 告訴你一個真實的改革開放》中國財政經濟出版社2009年第4章pp.83-88、私有経済の再生のところをまとめたものである。なお価格改革については別稿で述べる。  私有経済再生は、農業から始まった。改革開放後、農業における自留地、自由市場、請負責任制(包产到户

厲以寧 所有制改革論 1986/04/25

厲以寧改革論集 中國發展出版社 2008 pp.7-17 這是作者在北京大學“五四”科學討論會上的報告 p.7 わが国の経済体制改革は始まってからすでに数年たった。これからの経済体制改革はいかに進められるべきか。私は個人的な見方を少し話したい。全体で7つの問題について計28のポイントがある。その中で一部の見方は議論(争論)を引き起こす可能性がある。でもそれはよいことである。議論(争鳴)がなければ経済学は繁栄できないものだ。 1. 所有制改革が改革のカギである。 (1) 経済

厲以寧 社会主義所有制体系 1987/01

厲以寧改革論集 中國發展出版社2008, pp.18-33, esp.18-22 本文原載 河北學刊 1987年第1期 (写真は占春園にて。2020年4月29日) p.18 一 所有制改革は、商品経済の発展要求が引き起こすところの、企業が商品生産者として変更できない地位が引きおこすところのものが、その根底にある。改革後の所有制が一体具体的にどのような形になるかは、生産発展の推進(推動)に有利かどうかから出発するべきである。単一の所有制は、商品経済の発展に不利

馬洪「市場経済への転換は経済社会の一大変革である」1987年10月末

向市場經濟轉變是一場深刻的經濟社會大變革 党の十三大(1987年10月25日から11月1日開催)小組会上の発言 《大衆日報》1992年2月1日に掲載 《馬洪改革論集》中國發展出版社·2008年pp.191-196, esp.191-193(写真は成城大学3号館)  社会主義市場経済体制に計画経済体制を変えることは、単に提起の仕方上の変化ではなく、社会主義経済性質の認識の重大な変化、さらには社会経済の組織方式、経済改革の目標と改革戦略の対応した変化に及ぶものである。社会経済

朱鎔基 株券工作座談会講話 1992/08

在部分省市股票市場試點工作座談會上的講話(1992年8月13日)。載《朱鎔基講話實錄 第一卷》人民出版社2011年,pp.204-213 朱鎔基が証券や金融について、勉強したことが伺われる。注目されるのは、日本の間接金融依存型発展プロセスを学んだことをうかがえる一節である。経済発展における、金融の在り方について、国家の指導者にこのように知識として伝わったことが明らかであるのは、大変めずらしいことではないか(写真は六義園にてヤマアジサイの群生。)。 p.204 鄧小平同志が南

初級段階=原蓄過程説 関志雄『中国経済のジレンマ』2005

正式のタイトルは『中国経済のジレンマー資本主義の道』筑摩書房2005年。(写真はニコライ堂あるいは東京復活大聖堂 2019年11月3日) 手元のこの本を今回読み直して、このようにこの本の内容はこのように言えると思ったのは、社会主義初級段階=資本の原始的蓄積段階という考え方を明確に打ち出したp.31本という位置付けである。なおこの考え方はpp.203-206でより詳しく説明されている(なおこの点で何清漣との関係も気になるところだ。)。また民営化の進行についてもかなり詳しく述べら

股改(グウガイ) 中国経済用語

2005年から2006年にかけて行われた中国の株式市場改革。股權分置改革を略して股改という(股權は「株主の権利」、分置は「配置」という意味)。法人株、国有株(国家株)など非流通株を流通株に切り替えたとされる。条件として投票中、3分の2以上の流通株主の同意を得る、とされた。そのため、流通株主の同意をえるために、流通株主に対して無償で株式を分けたり、現金を贈る、買い戻しをするなどの措置が取られた。このように流通株主に利益を与える改革であったので、この改革は意外にも円滑に進

厲以寧 中国の株式制改革の回顧と展望 2008

 中國股份制改革的回顧與前瞻 原載魏禮群:《改革開放三十年,見證與回顧》中國言實出版社, 2008 厲以寧經濟文選 中國時代經濟出版社 2010 pp.80-93(改革開放後の中国の株式制度発展についての記述であるが、実はここで初めて見る指摘も多い。記述は生き生きしており、厲以寧がこの問題の議論で重要な役割を果たしたことが伺える。この記事は中国の株式制度形成を記録した記事として重要なものの一つだといえる。とくに価格自由化(放開)、請負責任制(承包制)、価格自由化、株