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第12回: CMMIでアジャイルを強くする(その3 どんなチームにも合うアジャイルなCMMI適用アプローチ)

「CMMIでアジャイルを強くする」の第三弾は、どんなチームにも合うアジャイルなCMMIの適用アプローチを紹介します。
“どんなチーム”というのは文字通り、アジャイル開発を適用しているチームはもちろん、ウォーターフォール開発を適用しているチーム、更には開発を実施している以外のあらゆるチームという意味です。
“アジャイルな”というのは、最も効果の高いプラクティスから優先順位をつけて、少しずつ適用していくという意味です。
各チームにはそれぞれ固有の課題があるので、解決策の詳細な優先順位は各チームで定義する必要があります。しかしながらCMMIのプラクティスを実装していく上で、大まかな優先度を推奨することは可能と考えます。
今回のブログでは、優先度の一つの考え方を提示します。


1.アジャイルなCMMI適用アプローチにおける優先度の考え方

優先度を定義するために2つ観点を考えました。
・プラクティスの進化レベル
・特に重要なプラクティス = 成熟度レベル2(ML2)の組織で求められるプラクティス領域(PA)(CMMI V2.0までの定義)

それぞれ解説します。

プラクティスの進化レベル

第4回: CMMIのプラクティスで、各プラクティスの進化レベルを紹介しました。以下に再掲します。

プラクティスの進化レベル(小林の説明)

上記のCMMIの進化レベルをそのままプラクティス実装の優先度として使用します。つまり、レベル1が最も初歩的なプラクティスであるので、優先度を最高とし、レベルの数字が上がるにつれて優先度を下げるという考え方を採用します。

特に重要なプラクティス = ML2の組織で求められるPA(CMMI V2.0の定義)

もう一つの観点は、ML2の組織で求められるPAは、ML3以上で必要なPAより優先度が高いとする考えです。
実はこの考え方はCMMI V2.0までの話であり、V3.0では当てはまりません。なぜならV3.0から、ML2の組織も全てのPAを実装することが必要となったからです。
私は個人的にはV2.0以前の定義のほうが優れていると考えています。V3.0以降の定義では、ML2達成を目指す組織に負荷を与えすぎであり、またPAレベルでの優先度付けをするという考え方が消失しているからです。私と同様な意見の人は世界中にいると思うのですが、CMMIの開発元のISACAは見直す気配がありません。しかしながら、組織の成熟度を公式に評価するのでなければ、V2.0以前の考え方を使用するのは自由ですので、私は引き続き使用します。

2. CMMIのプラクティス適用優先度の案

・プラクティスの進化レベル
・特に重要なプラクティス = ML2の組織で求められるPA
の2つの観点を組み合わせた、以下の優先度を提案します。なおここではCMMI-DEV(開発のためのCMMI)のPAについて説明しますが、CMMI-SVC(サービスのためのCMMI)でも考え方は同じです。

CMMIのプラクティス適用の優先度の案

(解説)
以下の表に、各優先度の観点とゴールをまとめました。

優先度の観点とゴール


(補足1)ML2の対象PAについて
対象PAがML2の優先度のゴールの中に、主にプロジェクト管理と品質管理の能力を向上させるとありますが、具体的な対象PAは以下の通りです。
「見積もり」「計画」「監視と制御」「構成管理」「実績と測定の管理」「要件と開発の管理」「プロセス品質保証」「統治」「実装のインフラ」

(補足2)優先度2番目のケース1、ケース2について(B1, B2)
ケース1とケース2は、どちらが先でも結構です。以下が判断の目安です。
【B1:ケース1を先に行う】
開発プロジェクト全般の活動をカバーするために、全PAで最低限必要なことをクイックに実装したい場合
【B2:ケース2を先に行う】
プロジェクト管理や品質管理に絞って、じっくりと必要十分なレベルまで改善したい場合

(補足3)組織系のPAについて(D)
優先度4番目(D)には「ML2+組織系」と書いてあります。組織系のPAとは、ここでは「組織標準の開発・展開、組織改善に関するPA」と定義しています。具体的な対象PAは以下の通りです。
「実績と測定の管理」「プロセス品質保証」「プロセス品質保証」「プロセス管理」「プロセス資産開発」「組織トレーニング」「統治」「実装のインフラ」
なお、これらのPAのうちの一部は、ML2のPAおよびML3以上のPAと重複しています。

このように、適用するプラクティスに対して大枠の優先度を付けた上で、チームの課題の重要度と照らし合わせて優先順位を付けて改善を行うことで、効率的かつ効果的な改善活動を促進できると考えます。

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