[3/29まで]多数の良書がKindle本80%セール対象になっていたので解説付でまとめる

3月29日までのKindle本最大80%割引セールで様々な良書がセール対象になっていたので、いつも通り雑な解説付きで対象の良ビジネス書をまとめました。

良い戦略、悪い戦略

戦略とは、シンプルで容易に理解可能であり、それを見た人が具体的に行動に結びつけられるものでなければならない。他方、現実世界では、多くの人が戦略を「単なる目標」と混同している。名著『ストーリーとしての競争戦略』で、その著者の楠木先生は、良い戦略は「こういう時にこれをする。そうするとこのようになって、それでこうなる」といった納得できるストーリー性があると仰っているが、この本で述べられていることもそれと方向性を同じくする。戦略論については自分がMBAで履修した授業よりもこの本のほうが正直良かった。
なお、戦略論では『エッセンシャル版・マイケルポーターの競争戦略』も分かりやすくまとまっており、併せてお勧め(今回のセール対象ではない)。

イノベーターのジレンマの経済学的解明

HBS故クリステンセン教授の傑作『イノベーションのジレンマ』は繁栄を極める巨大企業がなぜか突然現れた小新興企業に敗れ去る原理を経営学的に明快に解説したもので、ビジネスパーソンであればどなたでもお勧めの必読書。
一方この本は、イノベーションのジレンマの背景について、経営学ではなく経済学的に説明を試みるもの。この本を読み進めるにつれ、経営学にありがちなフワフワした説明が、ハードコアな経済学的裏付けで肉付けされていく様に爽快感を覚える。経済学について全くの素人でも(また、数字に弱くても)理解可能なように概念を咀嚼してくれており、イノベーションのジレンマの背景理解が非常に深まる。重いテーマなのに、エッセイ調で様々な余談を含み、とても気軽に読める。あたかも筆者と雑談をしている過程で学びが深まるような気分になる。
全然期待せずに手に取ったがめちゃくちゃ面白かった。今回のセールで個人的には一番お勧め。
なお、この本を読むにあたり『イノベーションのジレンマ』を事前に読んでおく必要はないが、読んでおいた方が理解は深まる(し、そもそもビジネス上の様々な議論の前提になっている重要な本なので未読の方はぜひ読んでおきたい。)。

プリンシプルズ

投資業界のスティーブジョブズとさえ言われる世界最大のヘッジファンド・ブリッジウォーターのレイ・ダリオ氏がその人生哲学と経営哲学を記した本。前半の人生哲学のパートも偉人の伝記を読むようで面白いが、本書の核は後半の経営哲学。
ブリッジウォーターの高いパフォーマンスを支える卓越したマネジメントはMBAの授業でも盛んに模範的ケースとして取り上げられる。例えば、上司だろうがCEOだろうが平社員は平気で正面からその人をボロクソ批判していいし、そうした率直性がむしろ評価される。ルールだけそうした内容を高らかに宣言する組織は世にごまんとあるが、ブリッジウォーター内では単なるルールではなく本当にこれが日々実践されている。どうしたらそのような企業文化が作れるのか、この本を読んでいるとヒントが多数得られる。

ノールールズ

ネットフリックスはMBA生の中でも非常に人気が高い就職先だし、MBAの授業でも頻繁に取り上げられる。単なるストリーミング動画の会社ではなく、同社は過去に幾度となく訪れた社会変革を乗り越えた強力な会社だ。
ネットフリックスの真の強さはそのユニークな企業文化にある。採用時に本当に優秀なトップオブトップの人材だけを報酬に糸目を付けずに雇い、採用後にその人材が高いパフォーマンスを発揮できなかったら容赦なく切り捨てて優秀な人材のみで組織を固める。そのうえで、出張規程や経費精算規程等を含むあらゆるルールを廃止し、全てを超優秀な社員の思うがままにやらせる。そのベースとして、率直性を重視する企業文化を定着させる。規程でがんじがらめの日本企業にいると、この本の内容は色々考えさせられる。
大企業が全社的にネットフリックスのカルチャーにいきなり転換することは無理でも、その一部門や自身の周囲等に限れば実践可能な知見が豊富に書いてある。また、特に起業直後の会社や成長途上の企業はこの本から応用可能な学びが多いと思う。
なお、『ネットフリックスの最強人事戦略』も併せてお勧め(セール対象外)。

個人情報保護法の知識

近年のプライバシー・個人情報への意識の高まりとともにもはやビジネスパーソン必須の知識になりつつある個人情報保護法について、素人でも十分に読めるような内容に綺麗にまとめてある。それどころか一分一文にしっかりと意味が込められており無駄がなく、分量的には簡潔な内容なのに弁護士等の専門家でも十分に役立つ。しかも安い。これはすごい。

ハイアウトプットマネジメント

古くなっても色あせないマネジメント本の傑作。これもビジネスパーソン必読ではないか。

リーンスタートアップ

起業関係者必読書。リーンスタートアップのコンセプトは、一時期「今ではもはや通用しない」等と批判もされたが、そんなことは全くない。名だたる起業家を現在進行形で排出し続けているスタンフォード大学の起業の授業も、基本的にはリーンスタートアップのコンセプトを基にしており、その理解が前提である。
なお、下記の本も現在セール中で、関連書籍としてお勧め(名前や表紙的に本書の続編のように見えるが特に関係はない。下記の本は、より成長ステージに視点が割かれている)。

ビジョナリーカンパニー全五巻

なんとビジョナリーカンパニー全五巻が全てセールになっていて驚いた。経営の基本書で世のビジネスパーソンの共通言語的なものなので、持っていない方であればこれは買いだろう。ちなみにこれらは分量のわりに本文部分が少ないしリピートも多いので読むのはたやすい。

スタートアップ投資ガイドブック

スタートアップの資金調達について日米それぞれ分かりやすく記述。詳しさと分かりやすさのバランスをうまくとっており、弁護士等の専門家でも読んでいて役立つし、逆に非専門家の一般人でも十分にスラスラ読める。資金調達を予定しているスタートアップ関係者、若手VC、弁護士等のスタートアップに関わる専門家に幅広くお勧めの良書。

起業の科学(※批判されがちだが普通に良い本)

ツイッターを見ていると著者が過去の発言等を基に色々と一部の層に批判されており、併せてこの本も批判の俎上にあげられている。この本の内容自体はリーンスタートアップ、リーンキャンバスといった起業論、カスタマージャーニー、ペルソナ設定といったマーケティング論等を含め、起業の際に重要な種種雑多の知見を一挙に要約して詰め込んでくれており、MBA等でビジネスを体系的に学んだ経験がない者にとっては普通にお勧めの内容である。この本をまず読んでから、各論的にこの本の中のキーワードを他の本でそれぞれ学ぶのも良いし、逆に他の本でぶつ切りに学んだ知見をこの本で横断的に総ざらいするのも良い。

ハードシングス

説明不要の起業関係者必読書。下記もセールなのであわせてどうぞ。

Learn Better

勉強はむやみやたらに時間をかけるべきではなく、まず勉強法を勉強してから勉強に臨むのが最も効率的かつパフォーマンスが高い。特に社会人になると可処分時間がごく限定的になり、学生時代のような「とりあえず徹夜で勉強」「とりあえず一日12時間勉強」等の物量でごり押しする術が全く通じなくなる。この本などでまず学習の際の頭の使い方を改革してから効率的に学習を進めたい。

失敗の科学

この本は頻繁にセール対象になりすぎだが、誰もが読むべき本だと思うので沢山売れたほうがよく、いつもセールなのは良いことだ。
失敗から学んできた航空業界と失敗をうまく学べない医療業界を対比しつつ、なぜ人は同じような失敗を延々と繰り返し、失敗から学べないのか・どうすれば失敗から学ぶことが出来るのかを解き明かす。昨今バズワード化している心理的安全性の議論に通ずる本。今回のセール対象の中でも屈指の良書で皆読んでほしい。

リフレクション

(以前のセール時の自分の解説文コピペ)
内省の効果は下記ツイートのように非常に高いとされているが、この本はその具体的な方法を分かり易く解説。特に近年は「アンラーン」(過去の経験に基づき凝り固まった自分の意見や価値観を効果的に捨て去り、最新のものにアップデートすること)の重要性が説かれるが、それをどう行うか等で学びがあった。

最高の結果を出すKPIマネジメント

「みんなKPI、KPIって言いまくるから私も使っているけど、実際のところKPIって具体的に何?どう使うの?」などという人は実は社会に沢山いるのではないかと疑っている。KPIとその活用法についてはこの本が一番分かりやすいと思う。図表も大変多くすぐ読める。
なお、KPIとは関係ないが、「みんなPDCA、PDCAって...」と実はPDCAについてもよくわからない人は『鬼速PDCA』という本だけ読んでおけばよい。一瞬で読める(セール対象外だがKindle Unlimited対象)。

Measure What Matters

「最近みんなOKR、OKRって言いまくるから私も使っているけど、実際のところOKRって具体的に何?どう使うの?」などという人も、社会に沢山いるのではないか。OKRについてはこちら。
なお、個人的にはOKRについて学ぶ本としては『オーケーアール』(こちらもセール対象)のほうがストーリー仕立てで面白かったが、好みの問題なのでどちらの本でも構わない。

人はなぜ先延ばしをしてしまうのか

『ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか』というタイトルが全てを語る。先延ばしの原因を科学的に徹底分析しその対処法を論ずる。先延ばししがちな人は必見。

レンジ

世の中はどんどんと専門化が進んでおり、一見すると一つの専門性をひたすら突き詰めるのが正解のようにも見えるが、実はこうした世の中だからこそ幅広い知識を付けることが重要。

会計のことが面白いほどわかる本

自分が大学生の頃、会計知識が完全にゼロだった時に親から勧められて読んだ本だが、死ぬほど分かりやすくしかも面白かったので何度も読み返してしまった。前提知識不要。この分かりやすさなのに内容はあまり犠牲にしておらず、2分冊とも読めばそれなりのレベルまで進める。子供でも理解できるのではないか。会計初心者や学びなおしの方にお勧め。
なお、会計入門関係では『財務3表一体理解法』も大変良い(セール対象外だがこれはそもそも安い)。

世界のエリートが学ぶマクロ経済入門

タイトルだけ見るといかにも大衆受けを狙ったダメそうな本だが、内容は素晴らしい。ハーバードビジネススクールのマクロ経済学の入門。私もMBAで経済学を学んだが、経済学部でなくビジネススクールで学ぶ経済学の良いところは、抽象的な経済学の概念を「では現実世界でこれがビジネスとどうかかわるのか?」という実践的な点まで咀嚼して教えてくれるところ。この本もまさにそういった作り。

ゲーム理論関係の本

MBAで学んで良かったことの一つは、ゲーム理論についてしっかり学べたこと。普段のカジュアルな商談、M&A等の大きな交渉から企業戦略立案まで、幅広くビジネス上応用が効く知見だった。ゲーム理論関係を書籍で学ぶなら上記の本などがお勧め。

インデックス投資関係の本

自分の人生の早い段階からインデックス投資に出会えて資産形成ができたことは本当に幸運だった。生活にも気持ちにもゆとりが出るし、金銭感覚も鋭くなる。日々忙しい素人の投資は、愚直にインデックスファンドにほぼ何も考えず積み立て投資を長期的に続けるだけで良い。それで、プロ投資家を平均で上回るパフォーマンスが出せる。このあたりをしっかり学びたいなら、『ウォール街のランダムウォーカー』を、時間がなくてとにかく手取り早くノウハウを得たいなら『お金は寝かせて増やしなさい』を勧める。最低限の金融リテラシーに関わる事柄なので、できれば大学時代、遅くとも若手社会人時代までには皆読んでおきたい。

人を動かす

自己啓発関係の本は世にごまんとあるが、だいたいほとんどがデールカーネギー等の古典的傑作の焼きまわしなので、基本的には上記『人を動かす』や下記『道は開ける』(こちらはセール対象外)を繰り返し読んで内容をマスターしておけば足りる。特に『道は開ける』は、私は司法試験の直前や大きな仕事の前夜等に何回読み返したのかわからないくらい読んで、色々と救われている。


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